声がデカくて攻撃的な人は権力を握りやすいが実際はリーダーに向いてないぞ!という動物実験のお話
「攻撃的なやつは権力者に向いてない!(魚の話だけどね)」ってなちょっとおもしろい研究(R)が出てました。どの世界でも、声がデカくて偉そうなジャイアン系の人が権力を握るもんですが、これは実は社会の運営には非効率なんじゃない?って説であります。
これはマックスプランク研究所などのチームによる調査で、実験の対象になったのはアフリカカワスズメっていうお魚です。なんでこの魚を使ったかと言いますと、
アフリカカワスズメは、厳密な社会的なヒエラルキーを形成する。支配的なオスが、資源、領土、空間を支配するのだ。
ってことらしい。他の種にくらべて、支配的なオスが頂点に立つ構造がハッキリしてるらしいんですな。
で、チームはカワスズメでこんな実験をしてます。
- 「日常的な状況」で魚たちがどう行動するかを見る(いつものエサをいつのものように食べる、みたいな)
- 「複雑な状況で魚たちがどう行動するかを見る」(「水槽の端で特定の色の光が光ったらエサの合図」ってのを学習しなきゃならない)
- 両者の状況で支配的なオスがどう振る舞ったかを見る
「いつもやってるタスク」と「新たな学習が必要なタスク」では、権力を持った魚の影響力が変わってくるんじゃないのか?とチームは考えたわけですね。
で、結果はこんな感じでした。
- 日常的な場面では、支配的なオスが最大の影響力を発揮していた
- が、より複雑な課題では、最も大きな影響力を発揮したのは下位のオスだった
ということで、日常的な場面では攻撃的なオスが集団を追いかけ回したりして最大の影響力を発揮するんだけど、明確な答えがわからない場面では下位のオスがすぐにグループ内でコンセンサスを得て、すばやく行動できたんだそうな。
人間の世界に置き換えてみると、
- 攻撃的なリーダー=昔の工業社会みたいに「やるべきこと」がハッキリしてるときに強い
- 謙虚なリーダー=現代社会みたいに「やるべきこと」がハッキリしてないときに強い
みたいになりましょうか。なんか示唆的っすね。
研究チームいわく、
支配的な個体は、自分の意志を強引にみなへ押し付けることができる。しかし、このような行為は社会的には嫌がられやすい。より洗練されたタスクで仲間の合意を得ることになると、最も大きな影響力を発揮するのは攻撃性の低い個人だ。
今回の結果は、支配的な個人は確かに権力の地位にのぼりつめるが、同時にもっとも非効率な影響力の構造を作り上げてしまうことを示した。
とのこと。もちろん魚類のダイナミクスがそのまま人間社会にも適用できるとは思わんですが、リーダーシップのスタイルについて考える際のヒントにはなりそうな気がしますね。
社会的なヒエラルキーのトップに立つための能力は、多くの脊椎動物における社会システムで共通している。これらの特性は影響力と関連しているかもしれないが、社会的には嫌がられるケースが多く、それによって支配的な個体の社会的影響力を低下させる。
確かに、声の大きな人がいったんはトップの座につくんだけど、強権的な姿勢が嫌われて転落していくような場面は人間世界でも「あるある」だとは言えますね。
動物だろうと人間だろうと、社会で権力を持つ人は、攻撃性、脅迫性、強要性などの似たような特徴を持っている。しかし、コミュニケーションを効果的に行うには、大きな声を出すだけでなく、多様な声の存在が必要となる。
今回の結果は、権力者の地位につながる別の道筋を生み出すことが、より強力な政府機関や教育機関を作るのに役立つ可能性があることを示す。
実際、近年は「謙虚なリーダーシップの方が効率的なんじゃない?」って知見も増えてきましたし、人間社会でもありえる話だよなーとか思った次第です。