遺伝子で栄養アドバイスをする「ニュートリゲノミクス」はダイエットに役立つのか?問題
ニュートリゲノミクスって本当に役に立つの?を調べたデータ(R)がおもしろかったです。あまり耳なれない言葉かもですが、ニュートリゲノミクスってのは「自分の遺伝子に適した食事とか運動をしようぜ!」みたいな考え方のことです。
実際、遺伝によって私たちの栄養の使われ方はわりと違っていて、たとえば、
- カフェインが体内でどう使われるかの95%以上はCYP1A2って遺伝子に左右される
- 脳の視床下部で特に発現するFTOって遺伝子が肥満のレベルをかなり左右している
みたいなのがありまして、私たちの健康レベルが生まれつきの遺伝によってるのは間違いないところです。
といっても、これはかなり最近の研究分野なんで、まだニュートリゲノミクスがどこまで役に立つかは謎が多かったりします。そこで研究チームはBMIが25以上の男女75人を集めて、全体を半分に分割。
- ニュートリゲノミクスにもとづいた食事アドバイスをする
- 一般的な食事アドバイスをしてもらう
ここで使われたニュートリゲノミクスでは12種類の遺伝子変異を参照してるんですが、細かく説明してるとマニアックになるので割愛。くわしく知りたい方はこちらにサンプルが出てますんでチェックしてください。
参考までに、ニュートリゲノミクスを使ったグループがどんな指導を受けたかと言いますと、
- タンパク質を総摂取カロリーの25〜35%にすれば、減量効果を高めることができますよ!
- 飽和脂肪を総摂取カロリーの10%以下にすれば、減量効果を高めることができますよ!
みたいな感じになってます。それぞれの遺伝子に合わせて、タンパク質や脂肪について具体的なアドバイスを送ったわけですね。
一方で、「一般的な食事アドバイス」をしたグループは個別のアドバイスを受け取ったわけではなく、「1日の脂肪量はこれぐらいにしてくださいねー」みたいな感じだったらしい。実験期間は1年で、最終的にみんなの体重や体脂肪の量をチェックしたんだそうな。
その結果をまとめると、こんな感じです。
- 3ヵ月後と6ヵ月後の時点では、一般的なアドバイスよりもニュートリゲノミクスのほうが体脂肪の変化率が大きかった(-5%±5.5% vs -7.7%±6.3%)。体脂肪の絶対的な減少もニュートリゲノミクスの勝ちだった(-2.1%±2.0% vs. 1.0%±1.9%)
- ただし、12ヵ月後にはグループのあいだで目立った差はなかった
ということで、テストの前半こそ割と良い成績が出たものの、1年もすぎちゃうと小さな違いしか見られなかったらしい。うーん、これはちょっと切ない結果で、普通にカロリーをコントロールしてれば、そこまで遺伝子までこだらなくてもいいのかなーって印象っすね。
ただ、今回のテストで注意すべきポイントとしては、
- 自由参加型の試験につき、参加者がどれぐらいアドバイスを守ったかは謎。なので、そのせいでニュートリゲノミクスの効果が出にくかった可能性も否定できない
- というか、1年もダイエットをしててだいたい3kgぐらいしか体重が減ってないので、そもそもダイエット研究としてゆるいなーとは思う
ってとこはありますね。そもそもニュートリゲノミクスが新しい分野なんで、もうちょい様子を見ないと結論は出ないでしょう。おそらく今後はニュートリゲノミクスなサービスを提供する会社がどんどん増えると思いますが、個人的にはまだ様子見ってことで。