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今週末の小ネタ:脳の衰えをやわらげる脂肪、職場の無礼は感染する、スマホのゲームが有害になる人の条件

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

脳機能の衰えをやわらげる脂肪と、そうでない脂肪

食事が脳の働きに大きく影響するのは有名な話。ヤバいものばかり食べてると、認知症になりやすいってデータには事欠かないもんですから。

 

 

で、新しいデータ(R)も食事と認知機能に関する調査で、食事で摂取する脂肪の種類によって、脳機能がどのような影響を受けるのかをチェックしてくれてます。

 


これは前向きコホート研究のメタ分析で、いろんな種類の脂肪の摂取と、認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害との関係を調べたもの。54,177人を対象とした14件の研究を分析し、追跡期間は2.1年から21年。分析された脂肪の種類は、飽和脂肪、一価不飽和脂肪、多価不飽和脂肪、オメガ6、オメガ3、EPA、DHAなどで、コレステロールの摂取量も評価しされてます

 

 

その結果は割とハッキリしてまして、

 

  • オメガ3の摂取量が多い人ほど、軽度認知障害のリスクが14%低い

  • 他の脂肪と軽度認知障害との間には関連はなかった

  • 認知症やアルツハイマー病についても、脂肪の種類との関連はなかった

 

だったそうです。とりあえずオメガ3だけは脳へのメリットがある感じですが、他の種類の脂肪については関係性が認められなかったらしい。あくまで観察研究のまとめなんで精度が高いわけではないものの、やっぱ魚の脂肪は脳に良さげではありますな。

 

 

が、このブログでも何度か書いているとおり、オメガ3サプリは危険性がありますんで、あくまで魚をちゃんと食べる方向でお願いいたします。

 

 

 

職場の無礼はどんどん感染していくから危ないぞ!みたいなメタ分析

「職場の無礼は本当にダメージがデカいぞ!」みたいなメタ分析(R)が、ポートランド州立大学から出ておりました。これは76のデータから得られた35,344人の従業員を分析したもので、

 

  • 仕事場での無礼はどれぐらい組織にダメージを与えるか?
  • 仕事場での無礼は組織にどんな変化をもたらすのか?

 

みたいなポイントを調べてくれてます。「仕事場での無礼」ってのは、みんなの前で誰かを批判したり、不愉快な振る舞いをしたり、重要な情報を隠したり、会議に遅刻したり、会議中にメールをチェックしたり、同僚を無視したりといった行動のことで、大きなものから小さなものまでいろんなパターンを含めたらしい。

 

 

その結果わかったのは以下のような内容です。

 

  • 自分の仕事をコントロールできている社員は、同僚に無礼な態度をとる可能性が低い。仕事をコントロールできる社員は、仕事を好きに終わらせられるため、無礼な同僚に立ち向かう時間とエネルギーもあると思われる

 

  • 直属のチームやワークグループがより礼儀正しい行動をしている場合、そこに所属する社員が無礼な行動をする可能性は低い

 

  • 年齢が高いほど、無礼な行動をとる可能性は低くなる

 

  • 無礼な行動を経験、または目撃した従業員は、他の人にも礼儀知らずになる可能性が高い 

 

ということで、無礼な行動はどんどん他人に感染していくので、どこかで悪循環を止めなきゃいけないんだ、と。確かに、たったひとり嫌な人間がいるだけでも、社内の空気ってめちゃくちゃ悪くなりますもんね。

 

 

研究チームいわく、

 

 

組織は、無礼な行動を受けた従業員をサポートすることが重要だ。無礼に扱われた従業員もまた無礼な行動を取る可能性が高く、悪循環に陥ってしまう危険性が高い。サポートを提供することは、倫理的に正しいだけでなく、その行動が組織の中で連鎖していくのを止めることにもなる。

 

ここ数年、人々は対人コミュニケーションを取らない日常に慣れてしまっているため、「難しい会話」をうまく処理するような習慣がなくなりつつある。もしかしたら、パンデミック後の世界では、無礼な社員が起こす負のスパイラルは、より強くなるかもしれない。

 

とのこと。リモートワークが普通になった現在では、以前のように対面で口論を処理するようなケースも減り、そのせいで私たちは無礼への免疫も落ちてるのではないか?って仮説ですね。あくまで予想でしかないものの、使わない会話スキルが劣化するのは当たり前なので、ひょっとしたらあり得るのかもですな。

 

 

スマホのゲームが有害になる人の条件

ウォータールー大学の研究(R)で、「スマホのゲームがデメリットをもたらすこともあるよ!」みたいな話が出ておりました。

 

 

そもそも現代ではスマホのゲームが悪者あつかいされがちですけど、「スーパーベターになろう!」でも指摘されてたとおり、どんなゲームでも短時間であれば脳のリフレッシュになるし、その後の仕事へのモチベーションも上がったりするんですよね。

 

 

では、どんな場面だとスマホのゲームは良くないのか?ってことで、この研究では、「キャンディークラッシュ」というスマホゲームを定期的にプレイしている60人の男女を招集。みんなのゲームプレイ時間と、どんな場面や状況でゲームをしているのかを調べたら、こんな感じだったらしい。

 

  • 「逃避系プレイヤー」ほど他の人よりもゲームに没頭し、より頻繁に、より長時間ゲームに没頭してしまう傾向があった

 

逃避系プレイヤーってのは、

 

  • 退屈やネガティブな気分から逃れるためにゲームをする人
  • 現実世界では情熱や没頭感を得られないため、その感覚をゲームから得ようとする人

 

のことだそうで、とにかく現実の退屈さや不安な気持ちなどから一時的に逃れようとする人ほどゲームのプレイ時間が増え過ぎちゃうわけですな。

 

 

研究チームいわく、

 

強烈な退屈さは、一部のゲーマーにとって強いモチベーションになる。このモチベーションが問題なのは、退屈が発生したらすぐにゲームをしてしまうせいで、過剰なゲームプレイに結びついてしまうことだ。

 

ゲームの長時間プレイに没頭すると、やがて中毒になる可能性が高まり、他の健康的な行動に使える時間が減る。

 

とのこと。あくまでゲームは短時間ならばOKなんだけど、逃げの姿勢でゲームに依存しちゃうと、やがてメンタルの悪化を招くかもしれないんだ、と。逃げの姿勢がよくないってのは「瞑想トレーニング」でもよく言われる話でして、いろんなことに当てはまることなのかもですな、


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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