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今週末の小ネタ:アントシアニンで認知能力が向上? ADHDにマインドフルネスが効く? ビタミンB群で認知機能の低下は防げる?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

アントシアニンで認知能力が向上する……かも?

アントシアニンといえば、植物(特にベリー類)にふくまれるナイス成分で、コレステロール改善やら心疾患の予防効果が期待されてたりします(一部では「目に良い」とも言われるものの、そこらへんのメリットは全く証明されてないのでご注意いただきたいですが)。

 

 

で、新しいデータ(R)では、「高齢者の脳にアントシアニンが効くのでは?」って話になってまして、近ごろ記憶力の衰えを感じる私としても気になっちゃうわけです。これは49件のRCTを分析した系統的レビューで、アントシアニンのサプリを使うことによって、以下のポイントにメリットが出るかをまとめてくれてます。

 

  • 認知機能(18件)
  • 血管機能(22件)
  • 心血管代謝の危険要因(32件)

 

全体的にアントシアニンサプリの種類と用量がそこそこ異なっているんで、「この文献の結論が絶対!」とは言えないものの、割と信頼がおける結論を出しくれてるんじゃんないでしょうか。

 

 

でもって、分析の結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 短期および長期の研究において、アントシアニンは記憶などの特定の分野で認知機能を改善する可能性がある

  • 場合によっては、脳の注意力や実行機能も改善するかもしれない

  • アントシアニンは血管機能と血圧を改善しそうだが、どうも心疾患のリスク要因は改善しないっぽい

 

みたいになってます。あくまで高齢者の方に限った話ですが、アントシアニンはそれなりに有望なのかもしれんですね。ちなみに、対象となった研究では、1回あたり10~500mgのアントシアニンを使用してまして、かなりバラつきがあるのが悩ましいとこではありますが。

 

 

 

ADHDにマインドフルネスが効く?

ADHDの問題はなかなか難しいんですけど、近ごろよく聞くのが「マインドフルネスのトレーニングで症状がやわらぐのでは?」みたいな考え方です。マインドフルネスは、衝動性やストレスを軽減しつつ、注意力や意識を向上させる働きがあるんで、ADHDに悩む人に有益かもしんないんですよね。

 

 

そこで最近出たメタ分析(R)では、ADHDおよびそれに関連する症状にマインドフルネスが効くかどうかを評価してくれてて勉強になりました。これはADHDに悩む人1,336人を対象とした31件の研究を分析していて、大きな結論は以下のとおりです。

 

  • 成人のADHDにおいて、マインドフルネスは以下の結果を改善する。

    • 不注意(中程度の効果)

    • 多動性・衝動性(小〜中程度の効果)

    • ADHDの全症状(中程度の効果)

    • 遂行機能(中程度の効果、出版バイアスを補正しても小さい

    • 抑うつ(小程度の効果)

    • 不安症(中程度の効果)

    • マインドフルネス関連のアウトカム(中程度の効果:出版バイアスを補正した場合は小程度の効果)

    • 生活の質(大程度の効果:ただし、出版バイアスを補正したら有意ではなくなる)

 

  • 以上の結果は、薬物療法などを行っているグループよりも、これといった治療をしていないグループでより有意だった

 

ということで、個人的には「ADHDが劇的に変わるわけではないものの、目立った副作用もないんだから試す価値は十分にあるよなー」って感じですね。もし現時点でお悩みならば、ちゃんとマインドフルネスベースの介入ができる機関を訪ねてみるのはアリでしょう。

 

 

ちなみに、この分析では小児および青年への効果も定性的に記述されてまして、マインドフルネス系のトレーニングによって、

 

  • 14件の研究のうち12件がADHD症状の改善を報告

  • 4件の研究のうち3件で実行機能の改善を報告

  • 3件の研究のうち1件で行動問題の改善を報告

  • 3件の研究のうち1件で不安、抑うつ、情動調節障害の改善を報告

 

といった感じになってます。こちらはまだまだデータ不足ってとこですけど、子供や若者の症状にも希望が持てる結果ではありますねー。

 

 

 

ビタミンB群で認知機能の低下は防げるのか?

その昔、「ホモシステインは脳の神経に良くないよなー」みたいな話を書いたことがありました。ホモシステインってのはタンパク質が使われた後に出る「残りカス」みたいなもので、体内の量が増えると酸化ダメージが大きくなっちゃうんですよね。

 

 

そこで、ホモシステイン対策に効く栄養素として、昔から有名なのがビタミンB群であります。過去のデータを見ると、ビタミンB群が足りている人ほどホモシステイン値が低いことがわかってまして、有効な対策になる可能性が高いんですよ。

 

 

といったところで最新のメタ分析(R)は、ホモシステインによる脳ダメージにビタミンBが効くかどうかをチェックしてくれててありがたかったです。

 

 

これは21のRCTから合計7,571人のデータをまとめた内容で、

 

  • 参加者の平均年齢は60歳から83歳

  • 治療期間は1カ月から3.4年で、12カ月未満と12カ月以上のものがほぼ半分ずつ

  • 参加者はベースラインのホモシステインレベルが高い人を選んでいる

  • 試験では、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12、または両者を組み合わせた治療が行い、認知機能に良い影響が出るかどうかを見ている

 

みたいになってます。もともとホモシステイン値が高い高齢者の脳機能が、ビタミンBで改善するかをチェックしたわけですね。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • ビタミンB群のサプリは全体的な認知スコアを上昇させた

  • ただし、情報処理速度、エピソード記憶、実行機能などの認知の下位領域には影響を与えなかった

  • 質の低い研究を除外しても、結果は一貫していた

 

だったそうです。この結果をベースに著者チームは「ビタミンB群は認知機能の低下を予防または遅らせるための方法として真剣に検討すべきでは?」と言ってまして、「まぁそうかもなー」とは思うわけです。

 

 

ただし、ここでご注意いただきたいのは、

 

 

ってとこですな。当たり前ながら、普段の食事で栄養が足りてたらサプリを使う意味はないし、さらにビタミンB系サプリはリスクも大きいので、個人的には推奨してないんですよね。

 

 

そんなわけで、毎度のことではありますが、このブログでは「ビタミンB12と9はなるたけ食事でお願いします!そうすればホモシステインの害の予防になるよ!」といったあたりをお勧めしておきたい所存です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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