オッサンは「次世代育成能力」を鍛えないと自己中で不幸な人間になるかもしんないぞ!みたいな話
親切は心身に良い!といった考え方が常識になってきた昨今でございます。人間はめちゃくちゃ社会的な動物なので、小さな親切をしただけでも幸福度が上がり、さらには寿命まで伸びるんじゃないか?って話まであるんですよね。まぁ具体的にどこまでの影響力があるかはまだ謎なんですけど、人様に親切にしてると気分がいいんで、とりあえず心がけておくとよろしいのではないかと思うわけです。
でもって、新しいデータ(R)も似たようなポイントを調べてまして、ざっくり言えば、
- 次世代育成能力はヒトの幸福度に影響するか?
みたいな感じです。次世代育成能力ってのは「ライフサイクル論」で有名な心理学者のエリク・エリクソンが提唱した考え方で、
- 大人のメンタルが発達するには他人を大切にすることが重要なんだよー
といった発想です。子供のころは自分の快楽を求める気持ちも大事なんだけど、大人になったら他人の役に立つことを重要視しないとダメっしょ!という発想でして、「確かにそうかもなー」って感じじゃないでしょうか。
もっとも、エリクソンのライフサイクル論がどこまで正しいか?ってとこについては、まだこれといった検証例が少なかったんですが、今回の研究では、271人の成人グループを対象に「次世代育成能力が幸福にあたえる影響とは?」ってポイントを12年間にわたって追跡調査してまして、まことに貴重な内容になっております。
参加者の年齢は最年長者が60歳代、最年少者は40歳代で、長期間にわたって全員を追跡しつつ定期的に以下のような文章に同意するかを調べたんだそうな。
- 私は自分の経験を通して得た知識を他人に伝えようとしている。
- 自分の考え方が年々変化し、成熟していくのを楽しんでいる。
これらの項目は、いずれも「自分の経験を共有する」とか「他の人をサポートする」といった行動の有無を調べてまして、それによって幸福度が変化するかを見たわけですね。
で、調査の結果は研究チームの予想どおりでして、
- 人生のなかで次世代育成能力が高まった人は、それにともなって幸福度の尺度が数ポイント上がる傾向があった(逆に次世代育成能力が低いと幸福度も低くなりやすい)
- 若いころから次世代育成能力が高い人は、歳をとっても高いスコアを維持するケースが多い。ただし、中には年齢とともに次世代育成能力が上がる人もおり、その理由をはっきりさせるにはデータ量が足りない(おそらく、子供ができたり、職場でリーダーになったりといった環境の変化が大きいものと考えられる)
だったそうです。やはり次世代育成能力と幸福度には関係性があるみたいなんで、意識して鍛えとくといいかもしんないですね。
もっとも、今回の調査はサンプル数が少ないので「人間の次世代育成能力が高まる原因」までは謎だったのが残念ではありますが、エリクソンのライフサイクル論などから普通に考えてみれば、
- 小さい親切でもいいから、とにかく他人を大切にする行動を示す
ぐらいでいいんじゃないかと思われます。エリクソンのモデルでは、「次世代育成能力」の逆に位置する概念を「停滞」と定義してまして、要するに共同体に関わらずに常に自分のことだけ考えて生きている人のことっすな。次の世代に何も残せず「停滞」したままだと、ますます自己中心的な人間になっていき、高価な旅行に出かけたり、とにかく高級品を買ったりといったお金の使い方が増え、いよいよ不幸になるんじゃないか?と考えたんですよ。こりゃあ、私のようなオッサン世代には身につまされる話かもしれません。
ちなみに、ここでいう「小さな親切」の内容については、「「小さな親切」で人間はどれだけ幸福になれるのか?」に細かな事例を書いてますんで、あわせてご参照ください。