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軍隊レベルのハードトレーニングに効くサプリを探してみたぞ!みたいな実験の話



 

軍人のパフォーマンスを上げるサプリを探したぞ!」ってデータ(R)がおもしろかったんでメモ。

 

 

これはイスファハーン大学などの研究で、54人の新兵士官候補生(平均23歳前後)を対象にしたもの。当然ながら、軍人さんは日ごろから体もメンタルも酷使してるわけで、近ごろは「サプリでどうにかならないの?」って風潮があるんだそうな。ある推定では、世界の軍人の55%以上がなんらかのサプリを使ってパフォーマンス改善を狙ってるそうで、「軍隊が使ってる!」とか言われると思わず気になっちゃいますな。

 

 

で、今回の実験で軍人さんに試されたのは、

 

  1. ベータアラニン
  2. L-アルギニン
  3. ブラッククミン

 

の3つです。いずれもこのブログで過去に取り上げた成分ばかりでして、だいたい以下のような働きになってます。

 

  • ベータアラニン:筋肉のカルノシン量を高めて疲労をとってくれる可能性がある

  • L-アルギニン:一酸化窒素を生み出してパフォーマンスを上げてくれるかもしれない

  • ブラッククミン:抗酸化パワーがすごいので疲労感の改善に役立つっぽい

 

くわしくはリンク先のエントリをお読みいただければと思いますけど、それぞれに一定の研究例がありますし、なかでもベータアラニンについては特に注目が集まってる印象ですね。

 

 

さて、今回の実験は2週間にわたって2回のセッションを行ってまして、ざっくりこんな介入をしてます。

 

  1. みんなに1日300分の軍事訓練プログラムに参加してもらう

  2. その際、全体の半分に340mgのアルギニン,340mgのβ-アラニン,340mgのブラッククミンを配合したエナジーバーを配給。これを1回2本を1日3回ずつ食べてもらう

  3. 残りの半分には、特に何も入ってないエナジーバーを同じ量だけ食べてもらう

  4. 運動のパフォーマンスや体内の炎症レベルを測定する

 

ってことで、ここで使われたエナジーバーは1本あたりのカロリーは525Kcalで,タンパク質が13%,脂質が42%,炭水化物が45%だったとのこと。1日300分の軍事訓練プログラムって、想像するだけで死ねそうですな。

 

 

でもって、スプリントテスト(35mの距離を10秒の休憩を挟んで6回走る)や血液検査で体内の炎症レベル(CRPやTNF-α)を計測したところ、結果はこんな感じになりました。

 

 

  • サプリ配合のエナジーバーを食べたグループは……

    • プラゼボよりも猛ダッシュ時の最大パワーが上がっていた(+44.06±3.98W vs -13.73±3.82W)

    • プラゼボよりも猛ダッシュ時の平均パワーも上がっていた(+12.93±1.53W vs -19.99±1.48W)

    • プラゼボよりも疲れの指数が低下していた(-1.63±0.113W/秒 vs 0.34±0.108W/秒)

    • 最大酸素摂取量については両グループで差はなかった

    • TNF-α(炎症レベルを示す)も改善度が高かった(+0.557±0.106pg/mL vs +2.432±0.102pg/mL)

    • 高感度CRP(これも炎症レベルの指標)も改善度が高かった(+0.12±0.043mg/mL vs +0.62±0.041mg/mL)

 

 

といった感じで、アルギニン+ベータアラニン+ブラッククミンの組み合わせで運動のパワーが上がり、さらに疲労度は改善し、ついでに体内の炎症も抑制されたらしい。うーん、素晴らしい。

 

 

研究者いわく、

 

今回の研究結果は、健康でアクティブな人に対して、β-アラニン、L-アルギニン、ブラッククミンを組み合わせたサプリメントが、無酸素運動のパフォーマンスと運動によって引き起こされる炎症に有益な効果をもたらす可能性を示している。

 

とのことで、ちょっと試してみたくなる組み合わせですね。もちろん2週間の実験なんで「もうちょい長くなったら効果が薄れるかも?」って気はしますし、ハードなトレーニングをしてない人でも意味があるの?ってとこは不明だし、なによりも「3つのサプリを同時に使ってるから、どれが本当に効いたのかがわからん!」って問題もあるわけですが、個人的には、「キツめの運動をしたときに使ってみようかなー」と思わせてくれる報告でしたねー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。