「なかなか決められない……」って性格にもめちゃくちゃ良いメリットがあるんだぞ!という話
「ものごとを決められない!」みたいな人はどこにでもいるもんでございます。レストランで「肉にするか……魚にするか……そして、デザートは……」みたいに延々と悩んでしまうタイプですな。
このような状態を心理学では「両価性」と呼んでまして、一般的には「あの人は決断力がないねぇ」と思われる原因になってたりします。なかなか困ったものですな。
が、ケルン大学から新たに出た研究(R)は、「決断力のなさにも良いところはあるんじゃない?」という話になってまして、決断が苦手な人にはためになりそうな内容で有馬した。かくいう私もなかなかの優柔不断マンですので、参考にさせていただこうかと。
では、まずは簡単に結論から行きましょう。研究チームは、ここで「優柔不断」のメリットとして、
- バイアスにだまされにくい!
ってのをあげております。バイアスはご存じのとおり「考え方のゆがみ」みたいなもので、「科学的な適職」でも「多くの人が職業選びを間違ってしまう原因のひとつ」として説明してたりします。さらに詳しくは「私たちの判断を鈍らせる「認知のゆがみ」40選」をご覧くださいませ。
要するに「優柔不断な人間ほど賢明な判断をしやすいかも?」って話なんですが、なぜそんなことが言えるのかと言いますと、
- 決断ができない人は、あらゆる問題の両面に目を向けられるから
って感じです。優柔不断な人ってのは「これがいいのは確かだけど、あちらにもいい面があるしなぁ……。欠点も同じぐらいあるし……」みたいに迷い続けるケースが多いんですが、それはすなわち「ものごとの長所と短所を見て考えている」ってことなんで、良いことでもあるんですよね。
一方で決断が速い人ってのは、ともすれば「こっちが良いに決まってる!」 と思い込みで突っ走ることがあり、その分だけ誤った判断をしやすくなっちゃうわけです。世の中のことなんて全て長所があれば短所もあるわけで、即断即決が良いとも限らないのは間違いないとこでしょう。
というわけで研究チームは、オンラインで参加者(平均36~37歳)を集めて、簡単なテストでみんなの優柔不断レベルをチェック。その上で、よくある2つのバイアスについて調べています。
- 根本的な帰属の誤り:何人かの失敗談を読んでもらい、その失敗の原因を尋ねる。即断即決する人ほど「これはその人が抜けてるんだよ!」みたいに考えがちで、優柔不断な人ほど「その人が置かれた状況もあるしなぁ」みたいに幅広い判断をしがち
- 自己奉仕バイアス:みんなに20個のアナグラムを解くように指示し、その結果を参加者がどう判断するかを見る。即断即決する人ほど成功すると「自分は頭がいい!」と思い、逆に失敗すると「テストが難しかった!」と考えがち。優柔不断な人はその逆で、割とテストの難易度を客観的に見積もる傾向がある
ということで、優柔不断さとバイアスの関係を調べたところ、やはり全体的に「ものごとを決められないタイプ」の人ほど認知がゆがんでおらず、全体を見た偏りのない判断ができていたんだそうな。なるほどねぇ。
研究チームいわく、
両価性は、より広い情報の処理と多様な視点の取り込みにつながる。両価性が高い人は、世界を良いか悪いかだけではなく、より複雑な評価が対立する世界だと見なしている。
とのこと。優柔不断は良くないことのように思われがちですけど、実際には善悪を単純に割り切らずに物事を見られるって側面もあるわけっすね。
ただし、もちろん研究チームは優柔不断のデメリットも指摘してまして、
- 慢性的に優柔不断な人は、つねに自分の中に対立を抱え込むため、緊張や心配、そして全体的にネガティブな心の状態につながる
ってあたりは警告を鳴らしておられました。まぁ誰でも未解決の問題を内面に抱え続けるのは嫌ですもんねぇ。
というわけで、もしあなたが優柔不断に困っているのであれば、
- これは物事を総合的に見て賢明な判断を下しているプロセスなのだ!と自分に言い聞かせる
- 問題が解決せずに内面に残り続けている場合は、マインドフルネスなどでしのぐ(即決即断の魅力にはあえて逆らう)
ってあたりが対策になるんでしょうな。優柔不断の辛さは続くんだけど、多少の慰めにはなりますかね。
ちなみに、このデータでは「優柔不断レベルを測るテスト」みたいなものも出てましたので、セルフチェックをしたい方はお試しください。テストは全10問でして、それぞれに1点(自分には当てはまらない)から7点(自分に強く当てはまる)までの点数で評価してくださいませ。
- 自分の考えは相反していることが多い
- 世の中の話題を見て「矛盾しているなぁ」と感じることが多い
- 物事の良い面と悪い面の両方を見ることが多い
- ある問題について、両サイドの意見に影響されることが多い
- 何事にも長所と短所があると感じることが多い
- 私はよく、ある問題の2つの側面の間で悩むことがある
- ほとんどの場合、自分の考えと感情は必ずしも一致していない
- あるトピックについて考えているとき、物理的に左の端と右の端を切り替えているように感じられる
- 自分の感情は、ポジティブなものとネガティブなものが同時に存在することが多い
- あるトピックについて考えているとき、自分の考えと感情が相反することがよくある
採点が終わったら、各項目のサブスケールごとに判断していきます。
- 項目3、5、9の点数の平均点=ポジティブな感情とネガティブな感情を同時に持ちやすい人
- 項目2、6、7、10の点数の平均点=特定の状況に対してどっちつかずの態度になりやすい人
- 項目4、8の点数の平均点=問題の両極の間で引き裂かれるような感覚を持ちやすい人
- 項目1=よく矛盾した思考に陥りやすい人
という感じでして、「難点より上であればOK」みたいな基準はないんですけど、全体的に「自分は優柔不断のどの側面が強いのかなー」とかチェックしてみることで、優柔不断のメリットをコントロールしやすくなるんじゃないかと思うわけです。