行き過ぎたポジティブで人生がぶっ壊れる「有害ポジティブ」ってなんでしょうね?
「有害ポジティブ(Toxic Positivity)」って本(R)をちまちま読んでおります。有害ポジティブってのは近年よく聞くようになった言葉で、簡単にまとめれば、
- どんな状況でもポジティブでいないと!って考え方を一般化しすぎて悪影響が出ること
みたいになります。本当はネガティブな感情がわきまくってるのに、「ポジティブでいないと!」って気持ちを優先するあまり、負の感情に逆襲されてしまうわけですな。似たような本はいろいろ出てまして、「ネガティブな感情が成功を呼ぶ」なんかも同系列で書かれた名著っすね。
日本ではまだそこまでのポジティブ信仰はない気もするんですけど、アメリカではフィットネスインストラクターやらヨガなどの世界などでもゴリゴリのポジティブ思考が浸透してまして、問題視する人が増えてるらしいんすよね。有害ポジティブにはどんな例があるのかと言いますと、
- 新型コロナで自宅にこもっているあいだも、すべての時間を有意義に使わねばならない!
- いつも前向きで感情をおもてに出さない人間こそ強いのだ!
- 悲しみや苦しみはすべて乗り越えて、人生の明るい側面を見なければいけないのだ!
- どんなに悲惨な事故でもなんらかの意味があるはずだ!
みたいな感じです。まー、基本的にネガティブな感情には正当な機能がありまして、不安は危険な状況を知らせるシグナルだし、怒りは不正や不当な扱いを受けたときに起こる正常な反応だしで、そこらへんのサインを無理やり押さえつけていたら、そりゃあ不都合も出てきますよね。
で、これら有害ポジティブには、以下のようなデメリットがあったりします。
- 実際の問題を過小評価する:家庭内暴力に関する29の研究を対象としたナラティブレビュー(R)によると、ポジティブばっかを追い求めている人は、虐待の深刻さを過小評価し、ヤバい関係性に留まりやすいことがわかった。楽観主義や希望の追求は、虐待をエスカレートさせてしまう可能性が高くなる。
- 不平不満がアップする:逆境に直面しても笑顔でいなければ!とか思ってる人は支援を求める傾向が弱く、そのおかげで感情がどんどん満たされなくなっていく。
- 他人からの信頼を失う:どんな人間関係にも問題はあるのに、それを無視してポジティブなことに集中していたら、人間関係のトラブルを解決する方向に向かわず、最終的には人間関係が崩壊する。
- 自尊心が低下する:人間ならネガティブな感情を抱くのが普通なのに、有害ポジティブはネガティブな感情を押し殺そうとするので、ネガティブな感情わくたびに「また失敗した!」って気分になり、どんどん自尊心が失われていく。
というわけで、つねにポジティブを追い求めていると、人間関係は崩壊するし、問題はさらに大きくなるし、自分への自信もなくなってしまうしで、結構なトラブルの種になっちゃうわけっすね。うーん、おそろしい。
ちなみに、有害ポジティブのサインには、以下のようなものがあったりします。
- 悲しみ、怒り、不安などを感じると罪悪感を感じてしまう。
- 問題を直に解決しようとはせずに、それを軽く受け流そうとする。
- 自分のネガティブな気持ちを、できるだけ隠そうとする。
- 自分がネガティブな気持ちになりたくないあまり、他人の感情をコントロールしようとする。
- ポジティブな態度をとらない人を見つけたら、その人を強引にポジティブにしようと説得する。
- 辛い感情を乗り越えるためならなんでもしようとする。
- 自分よりポジティブな人を見ると罪悪感を抱く
ここらへんの姿勢に心当たりがある人は、有害ポジティブにはまっている可能性が大。自分で自分の首を絞めてるかもしれないんでご注意ください。
それでは、有害ポジティブにハマってる人はどうすればいいの?って話ですけど、だいたいこんな感じになります。
- ネガティブな感情は正常であり、人間なら誰でも経験するし、実際には役に立っていることを認識する。
- ネガティブな感情を避けようとするのではなく、自分が感じたネガティブ感情に名前をつける。
- 信頼できる人に、自分のネガティブな感情を素直に話す。
- 相手が言うことを片っ端からポジティブにとらえようとしない。
- 自分に過度な期待をせず、いつもポジティブになるのは不可能なことを認める。
まぁ過度なポジティブが癖になってる人には、どれも難しい対策だろうとは思いますが、有害ポジティブをほっとくと確実に人生のQOLが低下するのは間違いないので、ぜひ対策をしておいてくださいませ。