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今週半ばの小ネタ:オンライン会議って創造性下がるんじゃない?「寝てないアピール」のメリットは?ビタミンDと自己免疫疾患


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。  

 

 

 

オンライン会議はクリエイティビティが下がるかもだ!

オンライン会議はクリエイティビティが下がるかもだ!みたいな話(R)が出ておりました。これはコロンビア・ビジネス・スクールなどの研究で、ラボ実験に参加した602人と、大手通信会社の社員1490人を対象に、5カ国の職場で調査を行ったものです。

 

 

ラボ実験では、参加者にランダムでペアを組ませ、対面またはオンラインで、クリエイティビティが必要な課題を指示。具体的には、各チームに「フリスビーやプチプチのクリエイティブな使い方を5分間でできるだけ多く考えてください!」って指示を出したんだそうな。すると、対面とオンラインではおもしろい差が出まして、

 

  • 対面でディスカッションした参加者の方が、より多くのアイデアを思いつく傾向があった
  • ただし、いくつも出たアイデアのなかから最も優れたものを選ぶ段階においては、オンライン会議のほうが優れていた

 

って感じだったとのこと。つまり、対面の作業は創造性がアップするけど、オンラインの作業は意思決定の能力が高まるのではないか、と。

 

 

さらに、この結果は大手通信会社を使った実験でも同じ傾向が見られまして、創造性に関しては対面が勝っており、意思決定に関してはオンラインが勝っていたらしい。おもしろいもんですな。

 

 

では、なんでこういうことが起きるのか?ってことですけど、研究チームはアイトラッキング技術で参加者の視線も追いかけてまして、こちらではどんな結果が出たのかと言いますと、

 

  • オンラインで作業をしたグループは、コンピュータの画面を凝視している時間が非常に長かった

 

みたいになってます。つまり、これがどういうことなのかと言いますと、

 

  1. オンライン作業をすると、せまい画面を見なきゃいけないので、自然と視線が固定する

  2. 視線が固定すると思考も固定され、収束的思考のほうが強くなっていく

  3. 逆に対面だと視線を自由に泳がせるため、拡散的思考のほうが強くなっていく

  4. ゆえに対面のほうが創造性が高くなる!

 

って感じです。収束と拡散の違いを知りたい方は、「学習効率を劇的にアップさせるには脳を緩和モードに切り替えよう!」を参照していただければ幸いであります。

 

 

まぁ要するに対面とオンラインの作業には、どっちもメリットとデメリットがありますんで、そこらへんを切り替えていけばよろしいのではないかと。

 

 

 

寝てないアピール」にはどんなメリットがあるのか?

現代では「寝てないアピール」でマウンティングをする人の数も減った気がしますが、新しい調査(R)では、寝てないアピール」のメリットを調べてくれてました。「寝てないアピール」といえば、現代ではうざい人の代名詞みたいなもんですけど、メリットもあるんじゃないか?という話ですね。

 

 

これはオレゴン大学などの調査で、最初の研究では144人の参加者を集め、「ベッドを買おうとしてる男性を想像してね!」と指示。そのうえで、参加者の半分には「その男性はよく寝てます」と伝え、もう半分には「その男性はあまり寝ません」と伝え、その後で「その男性をどう思いますか?」と尋ねたんだそうな。すると、睡眠時間の長さによって男性の評価は大きく変わりまして、

 

  • たいていの人は、睡眠時間が短い人のことを「男性的だ!」と評価する傾向があった

 

だったそうな。つまり、私たちはあんまり寝ない人を「マッチョで男らしい!」と思う傾向があったんだ、と。

 

 

さらに、研究チームは追加で2つの実験を行ってまして、

 

  • 参加者に「男らしい人と男らしくない人はどんなイメージがあると思いますか?」と尋ねたところ、男らしい性格の人は男らしくない性格の人よりも平均で33分ほど睡眠が少ないイメージがあった。

 

  • 207人の参加者に、「たくさん眠る男性」と「あまり眠らない男性」を複数の指標で評価してもらったところ、ここでも大半の参加者あ「たくさん寝る男性はあまり寝ない男性より男性的でない」と評価した

 

って結果だったらしい。なんでも、「たくさん眠る男」は基本的に主体性がないと判断されやすく、それが「男らしくない」って評価につながってるんだそうな。「たくさん寝る」って行動は、怠け者で時間を効率的に使ってないってイメージがあるんでしょうな。

 

 

あくまでアメリカの実験なので、日本だともう少し「男らしさ」へのこだわりは薄く出そうな気もしますが、こうして見ると「寝てないアピール」にも一定の効果と申しますか、マウンティングの手段としてはちゃんと機能してるのかもなーとか思わされますね。まぁ普通に考えれば、マウンティングのメリットよりも寝不足のデメリットのほうが大きいので、「寝てないアピール」はおすすめしませんけども。

 

 

 

ビタミンDのサプリが自己免疫疾患に効果はあるの?

ビタミンDについては何度も取り扱っていて、商品も出してるわけですけど、新しいデータ(R)では「ビタミンDのサプリが自己免疫疾患に効果があるか?」ってところを調べてくれておりました。関節リウマチや潰瘍性大腸炎のような自己免疫疾患について、ビタミンDサプリは意味があるのか?ってことですね。

 

 

というのも、もともとビタミンDのレベルが低いと自己免疫疾患の発症確率が高くなるとは言われてきたので、サプリが有効なんじゃないか?と言われてきたんですよ。そこで、この研究では、25,871人(平均年齢67歳)の男女を集めて、以下の4つのグループのいずれかに割りつけてます。

 

  1. ビタミンDとオメガ3サプリメントを飲む(エイコサペンタエン酸(EPA)460mg、ドコサヘキサエン酸(DHA)380mg)
  2. ビタミンD3サプリメント(コレカルシフェロール2,000 IU)と偽のオメガ3サプリを飲む
  3. オメガ3サプリメントと偽のビタミンDサプリを飲む
  4. 偽のビタミンDサプリを偽のオメガ3サプリを飲む

 

そのうえで、中央値で5.3年の追跡調査を行いまして、自己免疫疾患のレベルを調べたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • ビタミンDを飲んだグループは、プラセボと比べて、自己免疫疾患の発症リスクが22%低かった。試験の開始前に発症していた可能性のある自己免疫疾患を除外すると、ビタミンDグループは確定自己免疫疾患のリスクが31%、確定+可能性自己免疫疾患のリスクが29%低かった

 

  • 試験の最初の2年間の追跡調査を除外すると、ビタミンDは自己免疫疾患の確定リスクを39%、確定+可能性のある自己免疫疾患のリスクを31%減少させた

 

  • オメガ3を摂取したグループは、プラセボと比べて、確定した自己免疫疾患のリスクは低下しなかったが、確定+可能性のある自己免疫疾患のリスクは低下した。しかし、試験開始前に存在した可能性のある自己免疫疾患を除外すると、確定した自己免疫疾患も確定+可能性のある自己免疫疾患のリスクもオメガ3を飲んだグループで低くなった

 

ということで、どうやらビタミンDはやはり効くのではないか?って気がするわけです。なんでも、ビタミンDは体内で活性して受容体に結合して、数十の遺伝子の発現を変化させるかもしれないらしい。

 

 

ただ、今回の結果は、過去に行われた試験の結果とは食い違うところもありまして、このデータを見る限り「効果を観察するには力不足かなー」って気もするわけです。そこんとこもふまえつつ、血中のビタミンDは下げないように心がけておきたいところっすね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。