今週の小ネタ:メンタルにベストな運動量、顔が似てる人は惹かれ合うのか、保守派はリベラル派より幸せか
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
どれぐらいの運動がメンタルの改善にベストなのか?
「運動はメンタルに良い!」って話は何度もしてきましたが、このたび「どれぐらいの運動がメンタルの改善にベストなのか?」を調べた新たな知見(R)が出ていたので、ポイントをチェックしておきましょう。
これは10年間にわたる縦断研究でして、4,016人の男女(平均61歳)を追いかけて、運動量とメンタルの関係を調べた内容になっております。ここでは身体活動の量をMETで表現していて、
- 運動が少ない:1週間に600MET分未満
- 中ぐらいの運動:1週間に600~1,200MET分
- 運動が多い:1週間に1,200MET分以上
って感じに分類してます。METは身体活動の強さを表す単位で、くわしくは国立健康・栄養研究所さんの「身体活動のメッツ表」をご覧ください。でもって、すべてのデータを、年齢、性別、教育レベル、喫煙と飲酒などで調整したら、結果はこんな感じになりました。
- 全体的に見ると、運動量が多い参加者は、少ない参加者に比べて抑うつ症状を有するリスクが20%低かった。
- 運動量が増えるごとに、抑うつ症状を有するリスクがちょっとずつ減った。そのリスクは、600~1,200MET分/週で7%、1,200~2,400MET分/週で16%、2,400MET分/週以上で23%低下した。
- 慢性疾患がある人の場合は、600MET分/週から抑うつ症状のリスクが8%減少。慢性疾患がない人の場合は、2,400MET分/週で抑うつ症状のリスクが19%減少した。
ということで、基本的には、運動をすればするほどメンタルは改善するという、過去にも観察された結果と似たような結論になってますね。
ちなみに、世界保健機関(WHO)とかは、ほとんどの成人に対して「最低600MET分/週の運動をしようぜ!」と推奨しているんですが、今回の研究では、これよりも下の活動レベル(400~600MET分/週)で効果が認められたのがナイスなポイントですね。これを見ると、意外と少なめな運動でもメンタルには良いのかもですが、メンタルの改善効果については、2,400MET分/週以上まで観察されたそうなので、やはり多めに動いておくに越したことはなさそうっすね。
といっても、METsで言われてもわかりづらいと思うんで、ざっくりした目安を示しておくと、
- 2,400MET分/週以上=週約10時間の早歩きに相当
- 600MET分/週=早歩きで週約150分、中強度のスポーツ活動(バスケットボール、バレーボール、テニスなど)で週約75分に相当。
みたいな感じになります。まー、MET分/週を一定の身体活動量や種類に換算するのは難しいので、「身体活動のメッツ表」を参考に、自分のやってる運動と比べてみてくださいませ。
顔が似てる人は惹かれ合うの?
「似た者同士は惹かれ合う!」ってのは複数のデータで認められてまして、だいたいの人は、自分の性格や知識、年齢、金持ちレベルが似た人と付き合う傾向があるんすよね。
でもって、新しい研究も同じようなテーマ(R)で、
- みんな自分のルックスに似た人を好きになるの?
って疑問を取り扱ってます。まぁ、似たような研究は過去にもたくさんあったものの、ほとんどの調査は、参加者に写真やCG画を評価してもらってるので、リアルな世界もでも同じようなことが確認されるかはよく分かってなかったんですよね。
ってことで、クイーンズランド大学の先生方は、こんな実験をしてくれております。
- 682人の参加者を集めて、全体で2,285回のスピード・デートをやってもらう。
- その際、参加者は相手と3分間の会話を交わし、その後、「顔の魅力」と「優しさ・理解」という2つの側面を評価させる。
-
ついでに、参加者の顔の画像も分析し、顔の男性性、平均性、交流相手の類似性などの客観的な尺度も使う。
ってことで、たった3分のコミュニケーションを行った場合に、ルックスの類似性は、相手に抱く魅力度にどこまで影響するのかをチェックしたわけです。
すると、結果はこんな感じになりましたー。
- 平均的な顔をしている人ほど、相手から一貫して魅力的だと評価されやすかった(つまり、顔のパーツが標準に収まる顔ほど美男美女に見られやすい)。
- 顔の平均度と顔の類似度の役割を一緒に調べたところ、平均性が高い顔は「魅力的だ!」と判断されやすく、これに顔の類似性が加わると、さらに「より魅力的だ!」と判断されやすくなった(つまり、自分の顔の特徴と似ている人に魅力を感じやすい)。
- ついでに、異なる民族のパートナーに比べ、同じ民族のパートナーほど顔の魅力の評価は高くなった。
- 多くの人は、自分と似たような顔の人を「より親切で理解力がある!」と評価した(類似性が親近感や信頼感を育むってのは、昔から言われてることですな)。
ってことで、研究チームいわく、
多くの参加者は、平均的な顔や自分と似た顔のパートナーを、より魅力的だと評価することがわかった。そして、顔が似ている相手を評価する人々は、民族に関係なく、お互いをより親切であると評価した。この発見は、たいはんの人が平均的な顔を好むのは、顔の類似性に起因している可能性があることを示唆する。
とのこと。昔から「平均的な顔がモテやすい」と言われてきたのは、平均的な顔はいろんな人に似ている可能性が高くなるからじゃないかってことですね。その上で、さらに自分のルックスに似た人を、みんな求めるわけっすね。
まー、データを見る限り、観察された効果は小さめなんで、当たり前ですけど人間の魅力を構成する要素ってのは、まだまだたくさんありそうっすね。とはいえ、とりあえず類似性が魅力に関わるという昔ながらの知見は、やはり正しそうだようなーってことで。
保守派はリベラル派より幸せか?
「保守とリベラルはどっちが幸せなんだ?」を調べた研究(R)が出ておりました。これは19カ国の調査をまとめた縦断研究で、政治的な保守派とリベラル派を比べたときに、生活満足度や幸福度のスコアが異なるのかを調べたものです。
言わずもがな、保守とリベラルってのは2大政治イデオロギーでして、
- 保守派=経済への限定的な政府の介入、伝統的な価値観、強力な国防を支持する。個人の責任を重視し、急進的な社会変化に反対する。
- リベラル派=社会的・経済的な不平等に対処するために政府の介入を支持し、広範な社会政策を提唱し、個人の自由と市民権を重視する傾向がある。
みたいになります。もちろん、このどっちがいいって話じゃないんですが、過去の研究だと「保守派のほうがリベラル派より主観的な幸福度が高いのでは?」と言われてまして、どうも保守派のほうが自分の人生に満足しているケースが多いのではないかと言われてきたんですよ。
ただし、過去の研究はまだまだデザインが甘いところがあったんで、今回の研究では、もうちょい幅広い国から集めたデータで検証を行ってみたわけです。対象になったのは合計8,740人の男女で、全体としては欧米の国が多めっすね。これに加えて、チリの社会縦断研究から2,554人のデータを集めまして、両者を統合して大きな結論を出してくれております。
で、分析の結果はこんな感じになりました。
- いちおう保守のほうが生活満足度が高い傾向が見られたが、人口統計学的な側面を加味して分析すると、保守主義と人生満足度の関係は消えた。さらに、保守と不安、抑うつとの間にも明確な関係が見られなかった。一般に、社会的な地位が高い参加者ほど、生活満足度が高いと報告された。
- 対照的に、チリの研究では、保守的な考え方が強いほど、将来の生活満足度が低下するという傾向もみられた。この相関はかなり小さいんだけど、人口統計学的要素で調整した後も確認された。このコホートでは、社会的な地位が高い人ほど保守的であり、また自分の人生に満足していた。
だったそうです。ってことで、過去における研究とは異なり、保守ほど幸福だってことはないらしい。これを見ると、もしかしたら「保守の人ほど社会的な地位が高いから、そのせいで人生に満足していることが多いのかも?」って気はしましたね。社会的な地位が高い人は不平等を認識しづらいし、そのせいで社会システムに満足する傾向があるのかも?みたいな話ですね。もうちょいデータを見ないとよくわからんテーマではありますが。