今週の小ネタ:SNSでシェアすると『知ったかぶりのヤバい奴』になる、ゲームで人は幸せになれるか、コミュ力を上げるには対面とオンラインのどちらがよいか
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ゲームで人は幸せになれるか?
「ゲームで人は幸福になれるのか?」って疑問は昔からあって、賛成派と否定派が入り乱れている状況なわけです。
- 否定派:ゲームは幸福度を下げて、依存症を生み出す!
- 賛成派:ゲームはリラックス感を生むし、「ゾーン」に入る感覚が促され、気分を高めてくれる!
みたいな指摘があって、どちらが正しいかはまだよくわからない状況だったんですよ。
で、この点についてオックスフォード大学が新たな研究(R)をしてくれまして、まずは結論から言いますと、
- ゲームの影響は、良いとも悪いともも言えない!
みたいになります。賛成派も否定派もどちらの主張も支持しない!って結論なわけですね。
この研究は、世界数カ国のゲーマーにインタビューを行い、約4万人のサンプルを調べたもので、各プレイヤーの6週間分のデータを分析し、これを全体の生活満足度と比較しております。調査対象になったゲームは、『どうぶつの森』、『Apex Legends』『Forza Horizon 4』『Gran Turismo Sport』『Outriders』『The Crew 2』などで、そこそこ幅広いタイトルを網羅しているものの、バイオレントなゲームはふくまれてないっすね。
その結果、「どんだけゲームを長時間プレイしようが、みんな幸福にも不幸にもならなかった!」って傾向が見られたらしい。一方で、「プレイの理由」はユーザーの幸福度に影響を与えたそうで、
- 「楽しむため」「リラックスするため」にゲームをする人はウェルビーイングと生活満足度が上昇した
- 「暇つぶし」のためにゲームをする人は、ウェルビーイングと生活満足度が低下した。
って感じだったらしい。使用する目的が幸福度に影響するってのは、SNS研究などの報告と似てますね。
研究チームいわく、
良くも悪くも、ビデオゲームのプレー時間がプレイヤーの幸福度に及ぼす平均的な影響は、おそらく非常に小さい。遊びの主観的な質が、その量よりも重要なのだろう。
ってことで、プレイ時間は幸福度に影響しなさそうなんで、ゲームとつきあう際は「自分はなんのためにゲームをやるのか?」を自問するのが良さそうですな。
SNSでシェアすると『知ったかぶりのヤバい奴』になる
「SNSでシェアすると『知ったかぶりのヤバい奴』になるぞ!」ってデータ(R)が出ておりました。こちらはテキサス大学の研究で、研究の概要はだいたいこんな感じです。
- 参加者に、いくつかのニュース記事を選んで、好きなものを別の人に共有する。共有した記事のうち約40%は「参加者が内容をすべて読んだ」もので、約20%は「記事の一部だけを読んだ」もので、残りの40%は未読のまま共有を行った。
- その上で、みんなに「記事の内容についてどれぐらい知っていると思うか?」を質問。さらに、全員に記事に関するクイズをやってもらい、2つのデータを比べる
- すると、ニュース記事を実際に読んだかどうかにかかわらず、その記事を共有するだけでも「俺は記事の内容に詳しい!」と思う人が増加した。
ということで、実際にはニュースを読んでいなくても、誰かにシェアするだけでも「俺は詳しいのだ!」って気分になっちゃうんじゃないか、と。これはSNSでめっちゃ見られる現象ですな。
ちなみに、これは別の研究でも確認されていて、
- がんの予防法などの健康に関するトピックについて評価させたところ、やはりSNSで知識をシェアした場合、「俺はがん予防について詳しいのだ!」って気分が上昇した。
- ファイナンシャル・プランニングの知識を対象にした調査でも、投資に関する記事を共有した人は、共有しなかった人よりもリスクの高い投資を選ぶ傾向があった(「俺は投資に詳しいのだ!」って気分になったせいで、慎重さがなくなったらしい)。
といった結果も出てたりします。これは俗に言う「説明深度の錯覚」ってやつで、他人に情報をシェアするだけで、私たちは「知ってるぞ!」って気分になるわけっすね。このバイアスが原因で、SNSで恥ずかしい思いをしちゃうケースはよくあるんで、気をつけたいところだぜ……。
コミュ力を上げるには対面とオンラインのどちらがよいか
「コミュ力がない人は、対面よりもオンラインのほうが良いぞ!」ってデータ(R)が出ておりました。こちらも結論から言ってしますと、
- 対人関係が苦手な人は、オンラインで話すほうが不安を感じにくく、そのおかげで自分が相手にどのような印象を与えているかをちゃんと判断できる。
みたいになります。結局、コミュニケーションが苦手な人って、不安と緊張にやられちゃってることがほとんどなので、その感情を減らせる環境であれば、持ち前のコミュ力を発揮しやすくなるわけっすね。
研究の内容をざっくりまとめると、こんな感じです。
- 305人の参加者に初対面でペアを組ませ、2分間の雑談をしてもらう。同時に555人の参加者を3~9人のグループごとにZOOMのビデオ会議に招き、やはり自由に会話をしてもらう。
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それぞれの会話のあと、相手のことをどう思ったかを尋ね、さらに自分がどんな印象を相手に与えたと思うかも尋ねる。
ということで、会話のなかで自分が相手に与えた印象もチェックしたわけですね。その結果、なにがわかったのかと言いますと、
- わずか2分の会話でも、たいていの人は「自分が相手にどう思われているか?」を正確に言い当てられることができた。
- ただし、コミュニケーションが苦手な人は、そうでない人に比べて、自分が相手に与えている印象を正しく判断できない傾向があった。ただし、ZOOMを使った場合は、このような認識の食い違いは発生しなかった。
って感じだったそうです。どうやら、コミュ力がない人にとっては、オンラインでの対話のほうが快適に過ごせるようなんですな。
なんでこういった現象が起きるのかはまだよくわからないものの、対面での会話に不安を感じている人は、大事な仕事の打ち合わせなどはオンラインでやってみるのも良いかもしれませんな。
対面のやり取りを避けることが長い目で見て問題の解決策になると言うつもりはない。しかし、対人関係への不安が強い人たちが、対面によるやり取りを円滑に行えるように自信をつけていく過程で、特に初対面の際には、時折ビデオ会議システムを利用することで恩恵を受けられる可能性がある。
チームのメンバーは、本稿で紹介した研究結果を知れば、ビデオ会議で話す場合も自分の印象マネジメントの能力に悪影響が及ばないとわかり、より安心感が強まるだろう。ズームでほかの人たちが自分のことを理解してくれるかどうか気を揉むことにエネルギーを費やすのではなく、ミーティングの内容により注意を払い、チームのアイデアに積極的に関われるようになる。その結果として最終的に同僚たちによりよい印象を与えられるかもしれない。
対人関係への不安を強く感じている場合はとくに、ズームを利用することにより、職場での自分の評判をコントロールするうえで有効な手段となる可能性がある。