今週の小ネタ:日常のちょっとした運動で脳が4歳若返る、頭が良い人が持ってる価値観、世界の13%の人は「病的な嘘つき」?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
日常のちょっとした運動で脳が4歳若返る
「軽い散歩でも、子どもと遊ぶだけでも、脳の健康に短期的なメリットがある!」みたいな研究(R)が出ておりました。日常的な軽い運動でも脳の認知スピードが向上し、まるで脳が4歳若返ったような効果をもたらすというんですな。
この研究は204名の中年層を対象にしたもので、9日間にわたって1日5回、スマホアプリで「運動の有無」や「気分」、「食事」などを記録してもらったんだそうな。その際、簡単な「脳トレゲーム」をプレイしてもらい、以下の2つを測定しています。
- 認知処理スピード:どれくらい素早く正確に情報を処理できるか
- 短期記憶:記憶力の維持
すると、結果は割と明確でして、テスト直前の3.5時間以内に身体活動を行った人のほうが、脳トレゲームで処理スピードが向上していたんだそうな。しかも、この効果は運動の強度に関わらず得られたってことで、ここが今回の研究のポイント。軽い散歩でも、ハードなランニングでも、とにかく「動く」こと自体が脳を若返らせるカギだったわけですな。
というわけで、この研究の結果からすると、重要なのは 「ちょっとでも動くこと」 ってことなんで、以下のような簡単なアクションを日常生活に取り入れてみるだけでOKであります。
- 短い散歩:昼休みにオフィスの外を10分歩くだけでも◎。
- 子どもやペットと遊ぶ:一緒にキャッチボールをしたり、公園で走り回るのも良い。
- 家事をアクティブに:掃除機をかけたり、庭仕事をするのも立派な運動。
- 仕事の合間に立ち上がる:1時間に1回、椅子から立ち上がって伸びをするだけでも効果が期待できる。
こんな感じで、とにかく軽度な活動を行うだけでも、脳にとっても身体にとってもプラスになるわけっすね。
もちろん、この研究には限界もありまして、運動の種類や強度は被験者の自己申告だったんで記録の正確性にばらつきがある可能性があるし、この短期的な認知機能の向上が長期的な健康効果につながるかは、まだ明らかじゃありませんので。とはいえ、短期的に脳の健康を守るためには、意外と「ハードな運動」は必要なさそうだってのは希望がある話なんで、まずは散歩をしたり、子どもやペットと遊んだり、家事にひと工夫を加えるだけで、脳のスピードが4歳分若返るかもしれませんな。
頭が良い人が持ってる価値観
「頭が良い人ほど、自律性や他者への思いやりを重視するぞ!」って研究(R)が出ておりました。知能と価値観には割と大きな相関があるぞーという、ちょっと面白い結論であります。
これは15,522人(平均年齢39歳、女性が60%)のオーストラリア人を対象にした試験で、個人の価値観、性格特性、知能との関係を探ったものです。この研究は、心理学の調査でよく使われる「シュワルツの基本価値観理論」に基づいてまして、全世界で共通する10の基本価値をピックアップして、それぞれの価値を参加者がどれぐらい持っているかを調べております。10の基本価値がどのようなものかと言いますと、
- 自律性(独立性や創造性)
- 刺激(新しさや興奮)
- 快楽(楽しさや喜び)
- 達成(成功や有能さ)
- 権力(地位や支配)
- 安全(安定や安心感)
- 順応(規範への従順さ)
- 伝統(文化や慣習への敬意)
- 善意(他者を助けること)
- 普遍性(寛容や理解)
って感じになります。だいたいどんな文化圏を調べてみても、この10個についてはだいたい一致しているというんですな。確かに、普遍的な価値観が選ばれてる気がしますな。
でもって、さらにこの調査では、「結晶性知能」と「流動性知能」という2つの知能を測定してまして、
- 結晶性知能:経験や教育から得た知識を使って問題を解決する能力(例:語彙力や過去の知識を使った推論)
- 流動性知能:新しい問題に対処するための柔軟な思考力(例:パズルのような未経験の課題を解く能力)
ってあたりも調べて上で、みんなの価値観の有無と比較したんだそうな。その結果がどうだったかと言いますと、以下のようになりました。
- 知能が高い人は、自律性、善意、普遍性を重視しやすい
- 知能が低い人は、安全や伝統、順応を重視しやすい
ってことで、知能が高い人ほど自由を重んじて、知能が低い人はルールを重んじる傾向があるっぽいですね。この傾向は、主に「結晶性知能」と関係していまして、「流動性知能」と価値観の関係はごくわずかだったらしい。おもしろいもんですな。
ちなみに、この研究では性格と価値観の関係も調べているんですが、全体的にはそこまで関係が見られなかったらしい。要するに、性格特性よりも知能のほうが価値観に影響を及ぼす可能性があるわけですな。これもおもしろいっすねぇ。
というわけで、この研究によれば、「知能が高い人は、自分の意思で物事を選ぼうとしたり、他者と協力して共通のゴールを目指すのが好き」って感じになんでしょうな。もちろん、この研究だけだけと因果関係がわからないんで、知能が価値観を決定するのか、それとも価値観が知能を育むのかは謎。また、知能と価値観の関連性は統計的に有意だったものの、効果は弱かったため、他の要因も大きく影響しているはずであります。そこは注意した上で、シュワルツの10の基本価値をチェックしつつ、自律性や普遍性といった価値観を意識して育んでみるのも良いかもですな。
世界の13%の人は「病的な嘘つき」?
嘘をつくのは誰にでもあることですが、新しい研究(R)によれば、「全人口の13%が病的な嘘つきなのでは?」って結論を出していてビビりました。
この研究は623人の参加者を対象にしたもので、年齢や性別、収入、学歴はみんなバラバラ。みんなに以下のような質問を行い、全員の「嘘の頻度」と「自己認識」を測定したんだそうな。
- 自分を「病的な嘘つき」と思うか?
- 他人からそのように言われたことがあるか?
- 日常的にどのくらい嘘をついているか?
でもって、その結果を分析してみたところ、自分を病的な嘘つきと認識するグループは 全体の13%で、彼らは1日に平均10回もの嘘をついていたらしい。うーん、すごい。
このデータを見てみると、病的な嘘つきにはいくつかの共通点があるようでして、だいたいこんな感じ。
- 嘘をつく理由がない:病的な嘘つきは、「嘘をつくために嘘をつく」という現象が頻繁に見られた。特に最初に何気なくついた嘘が連鎖的に膨らむことが多いらしい。
- 思春期に始まる:多くの病的な嘘つきは、10代からこの傾向が始まったと報告している。これは、成長期における環境やストレスが影響している可能性があるのかもしれない。
- 嘘をつくと安心する:嘘をついた直後に「不安が減る」と答える人が多く、嘘が一種の自己防衛として機能していると考えられる。
- 社会的な問題が生じる:病的な嘘つきは、職場や人間関係、さらには法的な場面でトラブルを抱えることが多め。他人の信頼を失うだけでなく、自分自身もその嘘に苦しむことがあるらしい。
どうやら、このタイプは、自分が安心感を得る手段として嘘をつくため、目立った理由がない時でも嘘をついちゃうことがあるらしい。なかなか悩ましい問題ですな。
ちなみに、「病的な嘘つき」って概念はかなり昔からありまして、1891年にドイツの精神科医アントン・デルブルックがて「空想的虚言症」って名前で記録を残したのが始まりだと言われております。ただし、それ以降はあんまり研究が進んでいなかった分野なので、医学的に正式な診断基準として認められていないんですな。
しかし、今回のデータをもとに、研究チームは「病的な嘘つきを精神疾患として認識すべきだ!」と提言しておられます。具体的な判断基準としては、
- 持続的で広範囲にわたる嘘の習慣
- ウソのせいで社会的、職業的、または他の重要な機能において障害を引き起こす
- 自分や他人に対するリスク(例:自殺念慮を隠す嘘)を伴うことがある
みたいなあたりを提唱しておられます。もしこれが正式に認められれば、治療法の開発なども進むんでしょうな。
いまのところ、病的な嘘に関する明確な対策はわからんのですが、研究チームは以下のアプローチが有望かなーとしておられます。
- 認知行動療法(CBT):嘘をつく動機や思考のパターンを分析し、より適応的な行動に置き換える方法。自己制御を高める効果が期待されている。
- 薬物治療:嘘をつく衝動が抑えられない場合、特定の神経伝達物質を調整する薬が有効……かもしれない。
ってことで、もし「自分が当事者かもしれない?」と思った場合は、改善を試みてみるのも良いかもですな。