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性格は変えられる?科学が明かす『変化の多様性』と人生のヒント

 
 

「性格は大人になったら変わらない」と言われたこともありましたが、これはもはや過去の考え方。近年の心理学の世界では、性格は生涯にわたって変化し続けるものであり、その変化のパターンは一人ひとり異なるとされているんですな。特に近年の研究では、「性格変化は直線的ではなく、複雑で予測不可能な形を取る」ことが明らかになってきたんですよ。

 

ってことで今回注目するのはチューリッヒ大学などの研究(R)で、「みんなの性格の変わり方を平均して見ちゃうと、一人ひとり違う性格の変わり方が見えなくなってしまう」ってポイントを調べてくれております。

どういうことかと言いますと、そもそも性格の研究では、ある集団の「平均値」がよく使われております。たとえば、年齢とともに「協調性」が上がる、「外向性」が少し低下する、みたいな変化は全体の平均を調べた結果として出てきた知見なんですね。しかし、この研究では、こうした平均的な傾向だけでは個人の性格の変化を正確に捉えられないよーってところを主張しているんですな。

 

たとえば、自分自身の性格の変化を振り返ってみると、多くの人は以下のような疑問が浮かぶんじゃないでしょうか。

 

  • 「自分はどのタイミングで性格が変わったんだろう?」
  • 「周りの人と比べて、自分の変化は遅いのか、それとも早いのか?」
  • 「これから先、自分の性格はどう変わっていくのか?」

 

このような疑問に答えるには、単純な「平均的パターン」ではなく、「個々の変化の形」に目を向ける必要があるでしょう。今回の研究では、このポイントを調べてくれたわけですな。

 

これは26,500人の成人を対象にした研究で、ビッグファイブと呼ばれる5つの性格特性を分析したもの。ざっくりおさらいしておくと、

 

  • 外向性— 社交的で活発な傾向
  • 開放性— 新しい経験を好み、好奇心旺盛
  • 協調性— 他者に対して寛容で優しい
  • 誠実性— 責任感があり、計画性がある
  • 神経症傾向— 感情が不安定でストレスを感じやすい

 

って感じの性格分類のことですね。この研究では、参加者一人ひとりのビッグファイブの変化を長期にわたって追跡し、線形(直線的)や曲線的(上がったり下がったりする)な変化のパターンを統計的に分析しまして、その結果、次のようなことが明らかにしております。

 

  • 性格の変化は、単純な「直線」では表せない

  • 多くの人の性格は、「変動」や「複雑なカーブ」を描く

  • 変化の形には、個人差が大きい

 

簡単に言えば、ある人は「外向性」が20代で一気に上昇し、その後は緩やかに減少する一方で、別の人は40代で突然「協調性」が急激に高まることもあったりしたんだそうな。このような変化は人によってバラバラすぎるので、「一般的に人間の性格はこう変わる!」とは言いづらいところがあるわけですな。

 

こうした性格の変化は、人生の出来事や環境、さらには本人の意識的な努力によっても影響を受けまして、だいたい以下のような要素が関わっていたそうな。

 

  • 仕事で大きな失敗を経験する→ 責任感が高まり、誠実性が上昇する
  • 結婚や出産を経験する→ 他者への思いやりが深まり、協調性が向上する
  • 新しい趣味やスキルに挑戦する→ 好奇心が刺激され、開放性が高まる
  • 人間関係のトラブルに直面する→ 感情の起伏が増え、神経症傾向が一時的に高まる

 

このように、人生で起きたイベントによって性格に大きな変化が起きた人が多いらしい。ただし、こちらにも個人差が大きくて、すべての人が同じように変わるわけじゃないのが難しいところ。同じような出来事があっても全く性格が変わらない人もいたりして、これが性格変化の多様性を生み出す要因のひとつになってるらしい。要するに、人間の性格は変えられるんだけど、どんな要因によって変わるかは一概には言えなさすぎるってことですね。

 

ということで、この研究から実生活に活かせそうな教訓を得るならば、

 

  • 「性格の変化は人それぞれであり、直線的であるケースもない」ので、「平均」にとらわれなくていい。つまり、性格の変化は個々のペースや形があるとしか言いようがないので、周りと比べて「自分だけ何も変わらない……」とか「性格を改善したいのに効果がない……」と感じる必要はないってことですね。

 

  • 性格を変えようと思うなら、おそらく自分の過去をいったん振り返ってみる作業が必要になる。「過去の出来事が自分の性格に影響を与えた瞬間はないか?」と考えてみると、それが未来の変化のヒントになる………かもしれない。

 

  • とにかく、「自分はこういう人間だ!」と固定的に考えるよりは、「性格は変わることが当たり前だ!」と理解しておいたほうが人生の選択肢が広がってよさげ。

 

みたいになるでしょうね。せんじつめると、今回の研究が示したのは、私たちの性格ってのは、時に急激に、時に緩やかに変わり続けるよーって話でして、その変化の形が「平均的なパターン」に当てはまらなくても問題ないってのが重要なポイントでしょうね。むしろ、変化の多様性こそが「普通」であり、それぞれの人生を豊かにする個性だと言えましょうか。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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