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糖質を制限したからといって体脂肪が燃えやすい体になるわけではない

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こないだ「炭水化物より脂肪を減らしたほうが体脂肪が減る!」って実験を紹介したところ、いろいろな反応をいただきました。

 

 

体脂肪の燃焼能力は2日でマックスに達する

これはアメリカ国立衛生研究所の実験で、低糖質食と低脂肪食をくらべたら、低脂肪のほうが体脂肪の減るスピードは速かったというもの。「インスリンが肥満の原因!」という説を完全に打ち砕く内容になっております。

 

 

これに対してもっとも多かったのは、「実験期間が短すぎるのでは?」って意見でした。たった6日間だと十分に脂肪が燃える体にならないので、実験の数字は糖質制限ダイエットとは無関係なんだ、と。

 

 

幸いにも、この問題については1970年代からリサーチが進んでまして、大量の実験が行われております。たとえば有名なのが1972年の実験(1)で、22人の参加者に7〜35日間のカロリー制限をしてもらい、そのうえで全員の脂肪分解率を計ったんですね。つまり、体脂肪が燃えるスピードは何日で上限に達するか?がわかるわけです。

 

 

その結果は一貫していて、全員の体脂肪は2〜3日で燃焼スピードが最大に達して、あとは23日後まで数値は横ばいだったそうな。要するに、脂肪が十分に燃え出すまでは6日もかからず、たいていは2日もあればOKなんですね。



 

糖質を制限したからといって体脂肪が燃えやすい体になるわけではない

もうひとつ、2012年に出た生理学の教科書(2)にも、脂肪(+ケトン体)・糖質・タンパク質の分解量が上限に達するまでの日数が出ております。数値をざっくりグラフで再現すると以下のような感じ。

 

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やっぱり、ヒトが脂肪を燃やす能力は2〜3日で上限に達すると考えていいみたい。実際、今回のアメリカ国立衛生研究所の実験でも、糖質制限グループは2日で脂肪分解率が最大になり、残りの4日は同じ数値で推移していった模様。実験期間が長いに越したことはないですが、「6日間は短すぎるから無関係!」って話でもないだろうと思うゆえんです。

 

 

というか、そもそも糖質制限ダイエットの世界では、糖質さえ減らせば脂肪がもっと燃やすくなる!って誤ったイメージが強いように思います。でも現実のヒトの体は、状況によってエネルギー源を切り替えてるだけなんですよ。

 

 

たとえば、ハイブリッドカーは動力源を2つ持っていて、状況によってガソリンと電気を切り替えますね。このとき、もし電気がなくなったとしてもガソリンの燃費が良くなるわけじゃありません。たんに電気が切れた代わりにガソリンを使うようになっただけです。

 

 

ヒトの体も同じようなもので、糖質がなくなったからといって脂肪の燃焼スピードがあがるわけではありません。たんに糖から脂肪にエネルギー源が切り替わっただけです。って、すごい当たり前のことを書いてますけど、このへんの誤解は意外と根深いようなので。

 

 

まとめ

いろいろ書いてきましたが、そもそも今回のアメリカ国立衛生研究所の実験は「糖質制限より低脂肪のほうが痩せるの?」ってことを確かめたのではなく、あくまで「インスリンが肥満の原因だ!」説をフルボッコにしたところがポイントであります。

 

 

実験期間やケトン体の代謝がどうこうではなく、「インスリンの分泌さえ抑えれば太らない!」という糖質制限ダイエットの基本が完全に怪しくなった点に、もっとご注意いただければなーと。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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