自分にとって最適な幸福を理解するための「一日再構成法」のすすめ | ポール・ドーラン「幸せな選択、不幸な選択」
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「幸せな選択、不幸な選択」を読みました。著者のポール・ドーランはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの行動経済学者で、ノーベル賞を取ったカーネマンのお弟子さんみたいな人らしい。
現代人にとって最も貴重な資源は「注意」
本書の主張は、ズバリ「幸福は注意の割り当て方で決まる!」というもの。ポジティブなことに注意を向け、ネガティブなことからは注意をそらせば、必ず幸福の総量はアップするって発想です。著者いわく、幸福は「自分の注意を何にどう割り振るか」で決まる。あなたが注意を向けるものが、あなたの行動を決定し、あなたが幸せになるかどうかも決める。注意とは、生活をまとめあげる接着剤のようなものだ。
とのこと。こういった発想が出てくるのは、
- 経済学では「少ないものほど価値がある」と考える
- 現代は人の注意を奪う情報が刺激が多すぎる
- ゆえに「注意」は現代人にとって最も貴重な資源のひとつである!
って考え方があるから。「注意」を水や石油と同じ資源の一種としてとらえるわけですね。
最適な注意の配分を知るための「一日再構成法」
ただし、最適な資産配分が簡単にはいかないように、正しい注意の配分も一筋縄でははいきません。なぜなら人間には、- 環境に左右されやすい
- 偏見や先入観に弱い
- 未来の予想が超ヘタ
って傾向がありまして、「自分が本当に幸福になれるもの」を見抜けないんですな。たとえば、多くの人は「子どもを持てば幸せに!」と考えがちですが、実際には「子どもを産んだ女性は幸福度が下がりやすい」ってデータがあったりとか。さらに詳しくは、 カーネマン「ファスト&スロー」やギルバート「明日の幸せを科学する 」やソマーズ「考えてるつもり」あたりを読むといい感じです。
自分のバイアスをどう乗り越えるか?
そこで本書がおすすめするのが「一日再構成法」。心理実験で実際に使われている検査法を、日常生活に応用したものであります。といっても難しいことはなく、1日の終わりに、以下のようなシートへ行動と感情の記録をつけていくだけでOK。
ここで大事なのが、幸福を「快楽」と「やりがい」の2種類にわけたところです。たとえば、
- テレビは快楽が大きいが達成感は少ない
- 難しい専門書は快楽は少ないが達成感はデカい
- ネットは手軽な快楽を得られるがやりがいが低い
といったように、幸福の中身を区別していくわけですね。
もちろんテレビやネットが悪いわけじゃなく、あくまで快楽とやりがいのバランスをとるのが重要って話であります。快楽だけの人生は空虚だし、やりがいだけの人生も窮屈なんで、両者のレベルを同じぐらいにしたほうが幸福の総量は上がるんじゃない?って考え方です。
で、実際に「一日再構成法」を続けていくと、そのうち「自分が本当に幸福になれる行為」がわかってきますんで、あとは実行あるのみ。認知行動療法でも、やる気を出すために似たようなシートを使いますし、ちゃんと効果がある手法ではないかと思います。
まとめ
というわけで、「一日再構成法」の話だけを中心になりましたが、本書には他にも、といった定番のネタが満載。この手の本が好きな方には目新しい話は少ないでしょうが、考福学の基本をザッと知りたい人には好適の一冊じゃないでしょうか。