いつもの料理油で体が老ける「酸化コレステロール」の話
料理油のコレステロール酸化ってなんだ?
こないだ「料理油のコレステロールは酸化が怖い!」って話を軽く書いたところ、「もっとくわしく!」とのご要望をいただきましたんでちょっと細かくまとめてみます。
で、酸化コレステロールってのは、その名のとおりコレステロールが酸素でダメージを受けた状態です。血管にこびりついて動脈がつまったりするのは酸化コレステロールがおもな原因でして、アンチエイジングの大敵のひとつ。
コレステロール酸化はいろいろ怖い
酸化コレステロールが体内に入ったらどうなる?って問題については2002年のレビュー論文(1)がくわしくて、
- 大動脈にこびりついて大ダメージ
- アテローム性動脈硬化のリスクが激増
- リーキーガットが起きる
- 糖尿病のリスクを上げる
- アルツハイマーの確率も上がる
ってあたりはかなり確認されとります。酸化コレステロールで腸内環境が壊れ、脳の働きも衰え、最後は早死にしやすくなっちゃうわけですな。うーん、恐ろしい
意外と低温からコレステロール酸化は始まる
料理に使われる脂のなかでコレステロールが多いものといえば、
- バター
- 牛脂
- ラード
- ギー
あたりが代表例。先のレビュー論文によれば、
- だいたい120℃からコレステロールの酸化がスタート!
- 料理の温度が高くなっても、そこまで酸化レベルは変わらない
って現象が確認されてたりします。つまり、動物性の脂自体は熱に強いものの、いっぽうでコレステロールは割と低い温度から酸化が始まっちゃうんですよ。120℃といったら、ちょっと炒め物をすれば超えちゃうレベルですからねぇ。
市販のバターはすでにコレステロールが酸化している
参考までに言うと、1999年の調査(2)で牛脂を揚げ物に使って調べたところ、
- 全体のコレステロールの78%が酸化していた!
って結果だったりします。なかなかのもんですねぇ。
さらに余談で書いとくと、1993年にオックスフォード大学が市販のバターをチェックしたところ(3)、お店に並んでいる時点で全体のステロールの12.3%が酸化してたとか。これまた嫌になっちゃうデータですな。
都市部のインド人と田舎のインド人の違い
といっても、酸化コレステロールの研究はマウス実験がメインなんで、ヒトにどこまで悪影響があるかはまだ不明(というか、この手の実験はヒトで行いづらい)。なので、いまのところは「状況証拠」を見ていくしかない感じではあります。
そこで興味深いのが1995年に行われたメタ分析(4)で、「なんでインド人は心疾患が少ないのか?」について調べたんですね。というのも、インドの方は日常的に大量のギーを使うにも関わらず、昔から欧米にくらべて心疾患の発症率がやたら低いんですよ。
で、これで何がわかったかと言いますと、
- 都市部に住むインド人(ギーで揚げたフライなどをよく食べる)は、田舎に住むインド人の倍も心疾患を起こしやすい
- アメリカに移り住んだインド人で年間に1kgのギーを使う者は、ギーの消費量が少ないインド人にくらべて4倍も心疾患が起きやすい
ってことでなかなかの結果になっとります。やっぱ欧米風のフライはよくないみたいですねぇ。
まとめ
もちろん、食品に入っているコレステロールには問題がないので、以上の話は「脂身を食うな!」ってことではありません。ざっくり言えば、「高温調理の害はどうやっても防げないので止めよう!」ってことです。
あと、いまのとこ市販のバターがどれだけ酸化してるかは見極めようがないので、このへんの判断も難しいところ。バター特有のメリットもなくはないんですけど、あえて日々の暮らしに取り入れることもないのかもですねぇ。