「自分のことなんて誰も見てないんだから気にするな」の科学
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自分のことなんて誰も見てない問題
よく「自分のことなんて誰も見てないんだから気にするな!」ってアドバイスがあるわけです。自分で思うほど他人はあなたのことを気にしてないんだから、もっと自由に行動しなさいよ、みたいな話ですね。
その正しさは2000年のコーネル大学実験(1)でも認められてて、参加者たちに「変わった柄のTシャツ」を着て大学の授業に参加してもらったところ、
- 参加者の50%が「まわりは自分のTシャツに気づくだろう」と思った
- しかし、実際にTはシャツに気づいたのは20%だけだった
って差が出たんですね。これは「スポットライト効果」と呼ばれていて、追試でも同じ現象が確認されております。
実は他人は思うよりもこちらを見ている?
が、近ごろイエール大から出た論文(2)は、「他人は自分が思うより意外と見てるよ!」って結論になってておもしろいです。
これは6種類の実験をもとに、「透明マントバイアス」をチェックしたもの。要するに、「他人は自分を見てない」と思ってるときほど、実は周囲はこちらを観察しているぞ!って現象について調べたんですね。
たとえば、ある実験のデザインはこんな感じ。
- 実験室に参加者を集める
- 「研究者が遅れています」と伝えて、しばらく何もせずにほっとく
- あとで、参加者たちが互いにどれだけ周りを観察していたか聞く
みたいな感じ。参加者をフリーな空間に置いたとき、自意識の方向がどう変わるかをチェックしたわけですな。
さて、結果はと言いますと、
- 参加者の大半が「自分は周囲からとくに観察されていない」と思っていた
- ところが、実際には、みんな他人の服装、顔立ちなどを細かく見ていた
みたいな感じ。実は、自分が思うより他人はこちらを見ているんだ、と。
いまの心のあり方によって「見られてる感」が変わる
というと昔の実験と食い違うようですが、要するにこういうことです。
- 自分に引け目がある状況(服にソースのシミがあったりとか)では、「他人に見られている!」と実際よりも思い込みがち
- 自分がニュートラルな状況では、「他人から見られていない!」と実際よりも思い込みがち
人間は自分を中心に考える生き物なので、どうしても自意識のレベルが実態よりズレちゃうわけですね。わかるなぁ。
その点で、「自分のことなんて誰も見てないから気にするな!」ってアドバイスは正しくもあり、いっぽうで間違ってもいるわけですな。なんとも判断が難しいとこですが、
- 他人はつねに自分のことを2割ぐらいはしっかり見ている
- その割合は、いまの自分の心の有り様によって変わる(ような気がする)
ってとこを意識しとくといいかもですね。あくまで自意識レベルの問題なので、「脱フュージョン」みたいな手法が効くような気もしますが、そのあたりは不明。