どんなときに脳のバリアは壊れてしまうの?「リーキーブレイン #2」
結局は慢性炎症で脳のバリアが破れる
こないだ書いた「リーキーブレイン問題」の続きです。
ざっくりおさらいすると、ヒトの体は血液と脊髄のあいだにバリアが張ってありまして、こいつが有害物質を通さないようにブロックしております。ところが何らかの原因でバリアが破れると、炎症物質が脳に入り込んでエラいことになっちゃうんですな。これがリーキーブレインであります。
その原因はハッキリしてないものの、サウサンプトン大学から出たレビュー論文(1)などを読むと「やっぱ慢性炎症が一番デカいんじゃない?」ってのが大まかなコンセンサスです。炎症は当ブログで何度も出てくるテーマで、鬱病を引き起こしたり、お肌をボロボロにしたり、寿命を縮めたりと、健康におけるパブリック・エネミーナンバーワン的な要素といいますか。
リーキーブレインをもたらす原因たち
つまり、体内に炎症を起こすような行動は、すべてがリーキーブレインの原因になり得る次第です。たとえば、
などが代表的なところ。いずれも当ブログで「老化の理由」としてあげてきたポイントばっかですが、やっぱ脳にも悪いわけですねー。
体に悪けりゃ脳にも悪い
また、このほかにも脳のバリアが破れる原因としてありそうなのは、
- 酒:アルコールは血液脳関門を簡単に突破し、リーキーガットを起こすことがわかっております(11)。といっても、まだ「どれぐらい飲むとヤバいの?」ってとこはわからんので、今後の研究待ち。
- グルタミン酸:コンブ、シイタケ、チーズなんかに入ってるうま味成分。「味の素」の中間原料としても有名っすね。実は、まだラット実験(12)の段階ながら、過度のグルタミン酸でリーキーブレインが起きたって報告があるんですよね。まぁ用量の問題がまったく明らかになってないので、杞憂に終わる可能性も高いですけど。
- 肥満:体脂肪が増えると全身の炎症が起きるのは有名な話で、当然ながらリーキーブレインにもつながっていくわけであります(13)。過去には「太った中年は脳が小さい」なんてデータもあったとおり、肥満は頭へのダメージもデカいわけっすね。
みたいな感じ。まぁ基本的に体に悪いことは脳にも悪いって当たり前の話ですね。
リーキーブレインを調べる方法はない
では、自分がリーキーブレインになってるかどうかを調べる方法があるかというと、これがなかなか難しいとこです。なんせリーキーブレインって考え方が新しいんで、まだどうしていいかわかんないんですよね。そのへんはリーキーガットと同じ。
いちおう現時点でありえなくもない手法としては、
- GABAを1g飲んでみる:GABAは脳の興奮を鎮める神経伝達物質。普通は脳のバリアを通過できないはずなんですが、リーキーブレインが起きると頭のなかに達しちゃうんですよ(14)。つまり、市販されてるGABAサプリを飲んでみて、やたらと眠くなったり気持ちが落ち着いたら、ひょっとしたら脳に穴が開いている……のかも。ただし、このへんは思い込みにもかなり左右されるんで、信頼性はかなり低め。
- アルブミンテスト:前回も触れたとおり、アルブミンはリーキーブレインの重要な指標のひとつ。ここ数年は、染色したアルブミンを追っかけるテスト(15)も出てきたんだけど、まだクリニックでどうこうできる段階ではなし。
といったものがありますが、どちらも信頼性が低いし手軽さに欠けるのが難点。なので、いっそのこと「体内が炎症してればリーキーブレインも起きてるはず!」と割り切って、CRPやTNF-αみたいな炎症マーカーを調べたほうがよさげ。
とくに近年では「健康を崩してる実感があれば体内で炎症が起きている!」って説が有力なんで、「なんか体調が悪いなー」と思った時点で脳のバリアも破れてると考えちゃっていいかも。かなり雑な話ですが、正確なテストがないからしょうがないですもんねぇ。
まとめ
ってことでリーキーブレインの主な原因と、その雑な判断方法についてでした。次回はリーキーブレインの具体的な対策でもまとめていこうかと。