いくら全粒粉パンを食べようが「腸内環境」が乱れてたら無駄無駄無駄!みたいな話
本当に全粒粉パンは食パンより健康的なのか
よく「食パンより全粒粉パンがいいよ!」と言われまして、地中海式ダイエットなんかでも主食のひとつとして推奨されているわけです。
個人的には全粒粉パンはあんま食べないんですが(カロリーの質が低いので)、食パンより食物繊維が豊富でビタミンやミネラルが多いのは間違いないところ。その点で「食パンより全粒粉パン!」ってのは正しいわけですが、最近になって「どっち本当にいいかは腸内細菌が決める!」と主張する論文(1)が出まして、ちょっと驚いた次第です。
全粒粉パンと食パンを交互に食べて比べた
これはワイツマン科学研究所の実験で、20人の男女を対象にしたもの。具体的なデザインはこんな感じです。
- 最初の1週間は全粒粉パン、または食パンのどちらかだけを食べる
- 2週間ほどパンを食べないで、体をリセットする
- 続く1週間は、最初の週に食べなかったパンを食べる
同じ参加者が全粒粉パンと食パンを1週間ずつ交互に食べて、どんな違いが出たかをチェックしたわけですね。いわゆるクロスオーバー試験っすな。
全粒粉パンで健康状態が悪化するケースも
で、参加者の血液検査をしたら、まずはこんな結果が出ました。
- 全粒粉パンも食パンも特に目立った差はなし!
なんと、全粒粉パンだろうが食パンだろうが、コレステロールや体内の炎症、血圧、空腹時血糖などには特に違いが出なかったというんですな。これは意外。
が、これはあくまで平均値を見た場合の話。細かくデータを見るとまた状況がまったく変わっちゃうんですね。たとえば空腹時血糖のグラフはこんな感じ。
って、パッと見じゃ意味不明かもしれませんが、見どころとしては、
- 全体の半分は、食パンより全粒粉パンのほうが血糖値が上がっている
ってとこですね。全粒粉が体にいいどころか、逆に血糖値に悪影響が出ちゃった人もかなりいたわけです。要するに、個人差を平均値でならしちゃったから、全体的には全粒粉パンと食パンで差がないように見えたって話ですな。
その食事が健康にいいかどうかは腸内細菌が決める
なんとも不思議な現象ですが、ここで研究者が採用したアイデアがおもしろい。この個人差のデカさは、もしかしたら腸内細菌のバランスによるんじゃないの?と考えたんですよ。
そこで、参加者の腸内フローラをいくつかのパターンに分類し、血糖値の変化と対応させてみたところ、
- 腸内フローラを使うと血糖値の反応が83%の精度で予測できる!
って結果だったんですね。つまり、腸内細菌のバランスによって全粒粉パンが健康にいいかどうかが決まるのではないか、と。いやー、おもしろい。
もちろん、これは20人の実験なんで検出力が足りないですし、2週間の実験で十分なのかって問題はあります。全粒粉パンの栄養価が高いのは間違いないんで、長期的には食パンに勝つだろうなーとは思いますし。
ただ、いかなる健康食でも腸内の環境がよくないとムダ(どころか逆効果の可能性もある)かもよ!ってのは、可能性として肝に銘じておきたいところ。具体的なフィックスについては「腸内フローラ改善のための8ステップ」などをご参照くださいまし。