若い人ほどマルチタスクの能力が発達してるって本当?
若い人はマルチタスクが得意って本当?
昔から「いまの若い人ってマルチタスクが得意なんじゃない?」って説があるんですよ。私のように大学時代に初めてインターネットに触れた世代とは違って、若い人は生まれつきデジタル環境になじんでいる分だけ、脳の認知機能も変わってるんじゃないか、と。
これが事実であれば、若者ほどマルチタスクによる生産性の低下を防げるってことになりまして、まことにうらやましい話であります。本当のとこはどうなんでしょうねぇ。
とか言ってたら「若者のマルチタスク能力」について調べた論文(1)が出てて、おもしろかったです。
そもそも若者はオッサンよりデジタルが得意ってわけでもない
これはオランダ・オープン大学のレビュー論文で、過去に行われた「若者って本当にデジタルが得意なの?マルチタスクうまいの?」って研究を概観したもの。大量の文献をざっくりまとめてくれてて参考になります。
それで、まず大きな結論からいくと、
- 20代の若者がマルチタスクに秀でているという証拠はゼロ
ってことで、とくに若いから認知が違うってデータはなかったみたい。それどころか、
- そもそも若い人がオッサンよりデジタルを使っているってわけでもない(2)
- さらに、デジタル世代と言われてても、実はPCやスマホの扱いが他の世界にくらべて上手いわけでもなく、マルチタスク能力が高いわけでもない
- ところが、若い人は「オレはマルチタスクが得意だ!」と答えるケースが、年上の世代より2倍も多い
って証拠がいろいろ見つかったそうな。確かに、ヒトの脳が世代で変わるわけもないでしょうし、デジタルへの適応度にもそんな差は出ないんでしょうな。それにも関わらず、若者ほどマルチタスクへの自信が大きいのは、世間から洗脳されてるせいでしょうか。
マルチタスクの運転は酔っぱらい運転と同じ
研究者いわく、
私たちの脳機能はそう簡単に適応しない。特定の世代が特別なスキルを持っているかのように思うのは止めるべきだろう。
とのこと。結局、本当にマルチタスクができる人間なんて存在せず、いくら本人が「できる!」と思ってても、実は意識を交互に振り分けているだけの話。近年の研究(3)でも、「どんな世代だろうが、電話しながら車のハンドルを握るのは、酔っぱらい運転と同じぐらい危険!」なんてデータも出てるそうで。
さらに研究者いわく、
私たちの脳はシングルコアだ。プロセッサーをひとつしか備えていないコンピューターに近いため、一度にひとつのことにしか処理能力を使えない。
テクノロジーの進歩は、私たちにメールをあたえ、ワード書類をあたえ、SNSをあたえた。多くの人はそのすべてを一度に使おうとするが、過剰な刺激により押しつぶされてしまう。
ってことで、デジタルだろうが作業はひとつずつやろう!といういつもの結論でした。まぁ今後は「自分はオッサンだからデジタルは苦手で…」みたいな言い訳は通じなくなるって話でもありますが。