「傷なんてツバつけときゃ治る!」は本当か?問題
昔から「傷なんてツバつけときゃ治る!」って言い伝えがありますが、いっぽうでは「傷を舐めるのは医学的にNG」みたいな説もあるわけです。
両者のポイントをざっくりまとめるなら、
- 治る!派=ツバには殺菌成分が入ってるから治る!
- ダメ!派=ツバには雑菌も入ってるからヤバい!
って感じです。確かに、どっちも一理ありそうな気はいたしますな。
そんな状況下、「やっぱツバは効きそうだ!」と思わせる論文(1)が出てましたんでご紹介。これはチリ大学の研究で、どんな実験だったかというと、
- 健康な参加者からツバを採取
- ヒトの皮膚、ヒトの血管細胞、ニワトリ胚を用意
- 上の3つにツバをかけて様子を見る
といったところです。それで何がわかったかというと、
- ツバは血管新生をうながす作用がある!
ってことです。その名のとおり新しい血管ができることで、傷が治るときに起きる現象であります。
もともと、ヒトの唾液は、口の中の傷を素早く治す作用があることがわかっていた。これは、口の中に特性というだけでなく、ツバにふくまれるヒスタチン1というペプチドによるものだ。
ヒスタチン1には抗菌作用があるが、(中略)血管新生にも役立つのかはわかっていなかった。しかし、この実験により、ヒスタチン1はヒトの細胞に血管新生を起こすことがわかった。
とのこと。人間のツバには殺菌作用もあるけど、実は新たな血管を作り出す効果まであったんだ、と。一気にツバに有利な展開になってまいりました。
これは細胞を使った実験なので、実際にケガを舐めて治るかどうかはわからんのですが、ウサギを対象い行われた2012年の実験(2)でも、やっぱヒトの唾液で傷の治りがよくなる現象は確認されてたりします。こちらでは、細胞の炎症低下なんかも報告されてますね。
ってことで、やっぱ傷を舐めるのはよさげな気がするわけですが、いっぽうで2002年には怖すぎるケーススタディ(3)も報告されてたりします。どういう話かというと、
- 糖尿病の男性がバイク事故を起こす
- その際にケガした親指を舐めた
- ツバから傷口に真正細菌が入り込む
- ケガが化膿して親指切断!
って感じ。うーん、怖すぎる…。
ってことで、「ツバで傷は治るのか?問題」については、肯定派も否定派もどっちも正しいとは言えましょう。もうちょい細かく言うならば、
- すり傷ぐらいならツバをつけてもいいかも
- 糖尿病などで免疫が弱ってる人は逆にヤバいかも
といったところでしょうか。ツバからの感染が怖い方は、普通に水洗い推奨ってことで。