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世界の学校で使われるマインドフルネス学習プログラム「.b」とは?

School

 

世界の学校で使われるマインドフルネスプログラム 

イギリスには「MiSP」っていうマインドフルネスを推奨する組織(1)があって、各地の中学校で瞑想脱フュージョンを教えてるんだそうな。さすがイギリスはいろいろとチャレンジングな国ですなぁ(政府がスタンディングデスクを推奨したりとか)。

 

 

で、このMiSPが使ってるのが. b」(ドットビーってプログラムであります。9週間をかけて少しずつマインドフルネスの肝を教えていく内容になってて、ざっくり言うとこんな感じ。

 



ドットビーはどのように進むのか?

▼1週目 注意力について学ぶ

初週はまず「注意力とはなにか?」について学ぶフェーズ。注意力は子犬のようなものだから、ちゃんとトレーニングしなきゃダメなんだよ!ってとこが叩き込まれる。

 

 

▼2週目 象を飼いならす

まずは、ヒトのなかには「象のような心」(衝動的でパワフルな原始的な心)と「象使いのような心」(非力ながらも衝動を抑える心)の2種類があるという事実を学習。象を飼いならすためには、注意力を体に集中させるのが有効だと教えられる。

 

 

▼3週目 不安を認識する

反すう思考」のような心の動きが、いかに人間に不安を引き起こしているかを学習。そのうえで「AWAREテクニック」や「自動思考キャッチトレーニング」のような手法で、自分の感情を認識していく技術を学ぶ。

 

 

▼4週目 今にいることを学ぶ

ここでようやくマインドフルネスの中核スキルを学習。いま目の前の体験に対して、なんらかの評価や判断をせずにそのまま味わう感覚を学ぶ。

 

 

▼5週目 マインドフルに動く

当然ながら、マインドフルネスは瞑想のことではないので、座って目をつぶった状態じゃなくても実践は可能。そこで、マインドフルイーティング歩行瞑想のように、日常のなかにマインドフルネスの感覚を自然に染み込ませる方法を学ぶ。

 

 

▼6週目 一歩退く

「頭に浮かぶ思考と自分は別物である!」という事実を学び、「脱フュージョン」や「注意訓練法」や「デタッチドマインドフルネス」に似たような感覚を使い、ネガティブな思考と感情をただ眺める方法を学んでいく。

 

 

▼7週目 困難と友になる

人生で起きうる困難を避けると「体験の回避」が起きてメンタルには悪影響。そこで、その困難を人生のチャンスとして乗りこなす心構えを学ぶ。とくに怒り自己否定といった難しい感情に対処することを重視する。

 

 

▼8週目 人生の良い面を味わう

感謝」や「人生の意味」 など人生における良い側面に意識を向けることを学ぶ。

 

 

▼9週目 統合

1〜8週目まで学んできたすべてのテクニックを総合し、普段の暮らしに活かすことを学ぶ。

 

 

以上のような心理教育にくわえて、呼吸をベースにしたリラクゼーション法マインドフルネス瞑想をトレーニングしまして、だいたい週に40〜60分のセッションを行う模様。

 

 

私としては、アクセプタンスの要素が足りなくないか?などといった感想も浮かぶわけですが、マインドフルネスに必要な要素をおおむねカバーした内容になってるのではないか、と。このプログラムの段階に沿って自主トレしてみるのもありかなーとか思った次第です。

 

 

ドットビーのデータは割とバラバラ

が、このプログラムの効果を調べたデータなんかをみてると、かなり研究ごとに結果がバラバラなのが悩ましい感じ。たとえばオーストラリアで行われた直近の実験(2)だと、13才の学生378人に「.b」のプログラムを履修してもらい、半年と1年後にフォローアップの調査を行ったそうな。

 

 

ところが、その結果はまさかの「変化ゼロ」。メンタルヘルスやマインドフルネス尺度など、いろんな指標で調べてみたものの何の変化もなかったらしい。この結果について研究者は、

 

おそらく10代前半の子供はシニカルなため、マインドフルネスのメリットを得るためには、もっと人生で難しい体験をする必要があるのではないか?

 

と述べております。13才ぐらいだとマインドフルネスの効果を実感できるほどの人生経験がないのではないか、との推論であります。このへんの原因は謎ですが、個人的には、子供ってそもそも大人よりマインドフルネス度が高いのでは?という気がしなくもなかったり。

 

 

ドットビーで鬱傾向が改善したケースも

いっぽうで、2013年にエクスター大学が行った調査(3)を見ると、「少年の鬱傾向が減ったよ!」って報告が出てるのがおもしろいところ。こちらは12〜16才の学生522人が対象で、同じように「.b」のプログラムを実践させたところ、ちゃんとストレスレベルや鬱傾向が改善したというんですな。

 

 

同じプログラムでこんだけの違いが出てる理由は不明。プログラムの内容は統一されてるので、教師の質によるとこが大きいのかもしれませんが。 

 

 

そんなわけで、なんともモヤモヤする感じになってすみませんが、「 b.」のプログラムは定評がある心理テクをガンガンに詰め込んだ内容なので、「普通にやってれば何らかのメリットはあるのでは?」とは考えております。もともとマインドフルネス研究って、結果がバラバラに出るケースがありがちなんで、今後はその食い違いが起きる理由を調べて欲しいとこですなぁ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。