よりよい決定をするための「正しい情報の選び方」とは?
どのように最適なものを選ぶか問題
なにかを選ぶときの方法として、「一気に選ぶほうがいいか? それとも、ひとつずつ選ぶほうがいいか?」って問題があるわけです。
たとえば、予算内でベストのレストランを選びたい!ってときに、
- よさげな店をひとずつつ検討していく
- 候補店の情報をすべてリストアップして比較検討する
のでは、どちらのほうが正しい選択ができるのか?って問題であります。
誰もが日常的に出くわす問題かと思いますが、そのへんをガッツリ調べてくれた論文(1)が出てておもしろかったです。
情報はまとめて検討したほうがよい
これはシンガポール大学の実験で、2,783人の男女を対象にしております。論文内では全部で7種類の実験が紹介されてまして、ひとつめの実験では、参加者に5種類のデジタルガジェット(ノートPCとか電子レンジとかデジカメとか)を見せて、「最適なものを選んでね」と指示したそうな。
それぞれのガジェットには6パターンのモデルが用意されていて、たとえばノートPCだったら、各機種についてRAMやHD容量、バッテリー寿命などの細かいスペックを提供したらしい。そのうえで、参加者を2つのグループにわけております。
- 6つのモデルの情報をスクリーンにまとめて表示させた状態で、性能と価格のバランスがベストな機種を選ぶ
- 6つのモデルの情報がひとつずつスクリーンに表示される状態で、性能と価格のバランスがベストな機種を選ぶ(もちろん、いったん確認した情報でも再チェックはできる)
その結果は、
- 情報をまとめて見ながら選んだ場合の正答率は84%
- ひとつずつ情報を見ながら選んだ場合の正答率は75%
だったそうな。なかなかの差が出ましたねぇ。
可能なオプションを一気に検討したほうが比較がしやすい
もうひとつの実験では、参加者に「自分がレストランのオーナーだったら、と想像してください」と指示。そのうえで、様々なサプライヤーのなかから、もっともコスパがいい食材の仕入先を選んでもらったらしい。
こちらも全体を2つのグループにわけていて、「A社の牛乳は35ガロンで73ドル」「B社は29ガロンで69ドル」のような情報を、
- まとめて提示する
- ひとつずつ提示する
の2つにわけております。ついでに、この実験では、すべての参加者に「自分が選択をしたときの思考をノートに記録してください」という作業を頼んだのがポイント。これにより、「よりよい選択をもたらす原因は何か?」がわかるわけっすね。
で、こちらも結果は同じで「情報をまとめてチェック」したグループの勝ち(正答率は61% vs 55%)。さらに、参加者の記録したノートをチェックしたら、
- 情報をまとめて見たグループは「YよりもXのほうが価値があると思う」や「それゆえに、Xのほうが正しい選択だと考える」といった文章が多かった
って傾向が浮かび上がったんですな。簡単に言えば、可能なオプションを一気に検討したほうが比較が効くってこってすな。
新たな選択肢が見つかるたびに、すべての候補と比較し直す
研究者いわく、
「選択肢の提示の仕方」はささいなことに思えるが、実はヒトの意思決定の質を上げるうえで大きなインパクトを持っている。
とのこと。当然といえば当然の話なんですけど、言われてみれば意外と「すべての選択肢をまとめてチェックする」って作業はやってない気がしてきました。
私の普段の選び方だと、
- 欲しいもののオプションを何個かリストアップして検討
- その数日後に新しいオプションが見つかって、改めて検討
- また数日後に新しいオプションが…
みたいな作業のくり返しになってる感じ。今回の実験から考えれば、新しいオプションが見つかるたびに、その前にリストアップしたオプションも引っ張り出して、あらためて全てをまとめて検討し直したほうがいいんでしょうな。
ちなみに、大量のオプションからベストなものを選ぶ方法については、
が参考になるかと思いますんで、合わせてご参照ください。ではまた。