「ひとめぼれ」ってどういう現象なの?の科学
「ひとめぼれ」ってなんなの?
「ひとめぼれってどんな状態なの?」って問題を調べた論文(1)がおもしろかったんでメモ。
これはフローニンゲン大学の実験で、396人の学生を対象にしたもの。そのうち60%が女性で、大半はヘテロセクシャルだったそうな。
「ひとめぼれ」は愛情にもとづく現象なのか?
実験はオンラインサーベイと実験室の両方で行われまして、 以下のようなデザインになっております。
- みんなの現在の交際状況を尋ねる
- 全員に、それまで会ったことがない「いろんな男女」の写真を見せる、または実際に初対面の異性と20〜90分ほど会話してもらう
- それぞれの写真や会話した相手について、「親密性」(相手に親しみを感じるかどうか)、「情熱」(相手とロマンスを結びたいかかどうか)、「コミットメント」(相手と深い人間関係を結びたいかどうか)を採点してもらう
- さらに、写真の相手と会話した相手について、5点満点で「ルックスの魅力」を採点してもらう
- 最後に、写真や会話相手に「ひとめぼれ」したか、またはこれまで「ひとめぼれ」の体験があるかどうかを全員に尋ねる
全員に「親密」「情熱」「コミットメント」の3つを尋ねたのは、「愛情の三角理論」ってモデルにもとづいております。
これは1980年代に提唱された理論で、たいていの人が「愛」と呼ぶ感情は、これら3つの要素で成り立っているという考え方のこと。それぞれの要素が強いか弱いかで、「おしどり夫婦」とか「イチャイチャカップル」みたいに人間関係の形が様々に変わっていくわけですな。いちおう追試で妥当性が確認されていて、愛情の研究ではよく使われる定番モデルだったりします。
結局「ひとめぼれ」は相手のルックスに反応してるだけ
で、以上のデータをまとめたところ、
- 「ひとめぼれ」の経験を持つのは圧倒的に男性が多い
- 「ひとめぼれ」は「愛情の三角理論」のどの要素とも対応していなかった(つまり、愛情の三角理論の数字が高くても「ひとめぼれ」は生じない)
- 結局、「ひとめぼれ」と相関が強いのは「相手のルックス」だけだった
って結果だったそうな。具体的な数値でいうと、ルックスの採点が1ポイント上がるごとに、相手から「ひとめぼれ」される確率は9倍になるらしい。こりゃハッキリした差が出ましたな。
「ひとめぼれ」は記憶の改ざんである
研究者いわく、
今回の研究は、一般的な「ひとめぼれ」という現象が、「情熱的な愛」や「穏やかな愛情」とは異なるものだという事実を示している。(中略)端的に言えば「ひとめぼれ」とは、ルックスが良い相手に対して抱いた衝動を、後づけで「ひとめで愛が生まれた」と記憶を書き換えているにすぎない。
とのこと。 もちろん、「ひとめぼれ」から「愛情の三角理論」へと発展していくケースもあるでしょうから、別に何が悪いって話でもありません。あくまで、「ひとめぼれ」は別にロマンチックな現象でも何でもないって話です。まぁそんなもんでしょうな。