なぜ人は「金儲け」を嫌うのか?の心理学
「嫌儲」なんて言葉もあるとおり、世の中には金儲けに嫌悪感を持つ人たちが一定数いるわけです。
もっとも、普通に考えれば「金儲け」自体にはなんの罪もないのは当たり前のこと。問題なのはお金をどう使うかであって、金儲けそのものはニュートラルな行動でございましょう。
じゃあ「なんで営利目的を嫌う人が出てくるの?」ってところが気になるわけですが、新しいデータ(1)では「そもそも人間には嫌儲バイアスがあるのだ!」って結論になっておりました。
これはエラスムス大学の論文で、7つの実験をベースに「金儲けに人間はどう反応するか?」を調べております。
たとえばひとつ目の研究は、
- Fortune 500企業のリストを見せて、「この会社はどれだけ儲けていると思うか?」と参加者に尋ねる
- 続けて、それぞれの企業イメージを尋ねる
みたいなデザインで調査をしたところ、明確なパターンが確認されたんですよ。具体的には、
- 「儲かってる」ってイメージが強い企業ほど、「悪いことをしているのだ」と思われやすい
って感じです。実際の利益とは関係なく、「この会社は儲かってそうだなー」と思われた時点で悪い印象が生まれちゃうらしい。うーん、恐ろしい。
さらに別の実験では、ある会社の解説文を参加者に読ませたんですが、その際に2つのグループに分けております。
- この企業は”営利目的”でコーヒーの販売をしています
- この企業は”非営利目的”でコーヒーの販売をしています
どちらのグループもまったく同じ企業の説明を読んだんだけど、活動の目的が「営利」か「非営利」かだけが違ってたわけですな。
その結果も予想どおりで、
- 営利目的と知らされた場合は、社会的に害悪でメリットがないと思われやすかった
って感じだったんですな。その企業がどんな活動をしていようが、「営利目的」と思われただけでもイメージは低下しちゃうみたいっすね。
そのほかの実験も結果はほぼ同じで、人間の「嫌儲バイアス」は、本人の収入や経済知識、政治的な立場(リベラルかどうかとか)に関係なく存在するものらしい。つまり、「嫌儲」はたんなる貧乏人のひがみじゃないってことですね。
まぁ「最高の体調」にも書いたとおり、人類は数百万年にわたって「部族の仲間には持ち物を分け与えて平等に暮らそう!」って文化のなかで生きてきた生物ですから。いまみたいな富の偏在には脳が追いついてないのかもしれず、その意味では「嫌儲バイアス」が備わったのも当たり前なのかもしれません。
ただし研究者いわく、
嫌儲バイアスは、個人的な自己表現や社会的な欲求を満たしてくれるかもしれないが、必然的に社会の経済政策へ悪影響をもたらす。
ってな警鐘を鳴らしていたりもします。世の中が資本主義で動いてる以上、「嫌儲」を言い立てるのは害悪でしかないのだ、と。そりゃそうですよね(市場の失敗とかは置いといて)。
ちなみに、この研究によれば「嫌儲バイアス」を脱する方法はひとつしかなくて、
- 金儲けによる長期的なメリットに目を向けてもらう!
しかないそうな。「企業はお金を儲けるからこそ商品の品質が守られるし、イノベーションも起こせるのだ!」みたいな考え方のことですね。
というわけで、
- いま儲けてる人=金の長期的なメリットをアピールして、世間の「嫌儲バイアス」をやわらげるようにする
- いま儲かってない人=金儲けをしている人を見たら、自分が「嫌儲バイアス」にとらわれてないかを意識する
みたいに心がけると良いかもしれません。どうぞよしなに。