嫌な記憶を簡単に消せるかもしれない方法の話
ついこないだ「三人称で自分に話しかけるとお菓子やジャンクフードの誘惑に強くなるぞ!」というデータを紹介しました、あらためて「三人称視点って使い勝手がいいなー」とか思っております。そういえば、「科学的な適職」でも「三人称の就職日記が効果的だ!」みたいな話をしてますしね。
でもって、新しいデータ(R)もまた「三人称視点」の話でして、今回のポイントを簡単にまとめると、
- 三人称視点で嫌な記憶が消える…………かも?
みたいになります。 FPSみたいに自分の目を通して見た光景として記憶を思い出さず、第三者の視点で同じ記憶をイメージすると、嫌な思い出の強度が弱まるんだそうな。
これはアルバータ大学のペギー・セント・ジャック博士の調査で、この方は昔から「三人称視点のメリット」を調べてる方です。2019年にも三人称視点にまつわるニュースリリース(R)を出していて、
記憶を三人称で見ることは、その経験の鮮明さだけでなく、私たちが感じる感情の量を減らす傾向がある。私たちの記憶システムはダイナミックで柔軟性に富んでおり、自分自身の力で経験の認識を変えることが可能だ。
厄介な記憶について感じる方法を変えられれば、私たちはよりその体験から教訓を学び、さらに前進することができるだろう。
と申しておられます。まぁ普通に考えても、三人称視点で自分の記憶をよみがえらせたほうが他人事みたいに感じられるんで、そのぶんだけ記憶にとらわれにくくなりそうっすもんね。
で、今回の新しいデータも昨年の研究の追試で、どんなテストだったかと言いますと、
- 参加者に過去の記憶を「三人称」または「一人称」で思い出してもらう
- その最中の脳をfMRIでチェックする
みたいになってます。すると、「三人称視点」と「一人称視点」では脳の働きに変化がありまして、
- 三人称で記憶を思い出してる時は、脳の海馬前部と後部ネットワークの間の相互作用が強くなってた
って違いが確認されたんだそうな。なんかわかりにくい話ですけど、この結果ってのは要するに、
- 違う視点で記憶を思い出すと、脳が記憶を作り替えている可能性が高い!
ってことです。視点を変えるだけで脳が思い出の再構築を始め、そのおかげで嫌な記憶の強度が変化するんじゃないか?ってことですね。
博士いわく、
我々が何らかの記憶を思い出すときの”視点”は、記憶を司る脳領域そのものと、その脳領域の作用を変える。
厄介な記憶を遠い距離からながめると感情の強度が下がるため、嫌な思い出に対処するための効果的な方法になるかもしれない。
とのこと。これがどこまでの効果レベルを持つものなのかはわからないながら、負の記憶対策としてはかなり簡単なハックでよろしいっすな。