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心拍数の変化でうつ病が90%見抜ける?とか、心拍変動の大事さとかみたいな話

 
 

心拍数の変化でうつ病リスクがわかるぞ!」って話がECNPのプレスリリース(R)に出てて、ちょっとおもしろかったです。

 

 

これがどんな研究だったかと言いますと、

 

  1. 治療抵抗性うつ病(抗うつ薬を使っても症状が改善しないタイプのうつ病)に悩む患者さん16人と、メンタルの問題がない人16人に協力を依頼
  2. それぞれにケタミンまたはプラセボ薬のいずれかを飲んでもらい、72時間以上連続して心拍数心拍変動をモニターする

 

みたいになってます。

 

 

ケタミンってのは、近ごろ大うつ病の治療薬として評価が高まりつつあるクスリで、従来の抗うつ薬とは違って数分で効果が現れることが多いんですよ。なので、ケタミンを使うことで、気分の変化による心拍数の変化を把握しやすくなるんですね。

 

 

もともと心拍数がうつ病と相関してるのは有名で、うつ病患者の心拍数は一貫して高く、心拍変動は低いことがわかってタンですよ。ただし、心拍数はすぐに変動しちゃうのに対して、うつ病は長い期間をかけて発症するケースが多いので、具体的にどこまで関わってるかは謎だったんですよ。それが、ケタミンのおかげで光明が見えたわけであります。

 

 

そこでどんな結果が出たかと言いますと、

 

  • うつ病の人はベースラインの心拍数が高く、心拍数の変動が少ない
  • うつ病の人の心拍数は、そうでない人に比べて1分あたり約10~15回高い
  • うつ病の人の心拍数は夜間にも低下しづらい(普通は夜間に心拍数が下がる)
  • 24時間の心拍数をAIプログラムに送ると、うつ病かそうでないかをほぼ正しく判定できた
  • ケタミンによってメンタルが改善すると、心拍数と心拍変動の両方が正常ラインに変化していた

 

だったそうです。研究チームいわく、

 

私たちのパイロット研究によれば、心拍数を24時間測定するだけで、その人が現在うつ病かどうかを90%の精度で見分けられることが示唆される。

 

ということで、「心拍数ってメンタルの重要なマーカーなんじゃないの?」ってポイントが強調されておりました。

 

 

もっとも、まだ小規模なテストですし、私もプレスリリースしか読んでないので、今回の結果についてはまだ様子見といったところではあります。とはいえ、大うつ病の方々の心拍変動が下がりやすいって傾向は以前から確認されてましたし、ちょい前にハーバード大学などが行った研究(R)でも、こんなことを言っておられました。

 

自律神経系への介入は、トラウマや社会的な逆境にさらされている若者のストレス感受性や、メンタルの問題への弱さに良い影響を与える、

 

自律神経は心臓や消化器などの活動をコントロールする神経で、交感神経と副交感神経があるのはご存じのとおり。当然ながら心拍数や心拍変動にも大きく関わるポイントでして、この機能をいかにハックするかがメンタル改善の鍵なんだ、と。自律神経バランスが大事!みたいなことはよく言われてることですが、さらに重要性を増してきた感じですかねー。

 

 

そんなわけで、皆さまにおかれましては、Apple Watchなどで心拍数や心拍変動をモニタリングしつつ、心拍変動のトレーニングなどに勤しんでいただくといいかもしれません。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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