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今週半ばの小ネタ:血糖値と脳のパフォーマンス、ダビンチとADHD、エクストリームスポーツとエナドリ

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

血糖値の上下が脳のパフォーマンスを左右する!は本当か?

血糖値が上がると脳のパフォーマンスは上がるの?下がるの?って疑問は昔からあるんだけど、「認知が下がる!」ってデータが出たかと思えば、逆に「糖質で脳の活動が上がる!」なんて報告が出たりして、なかなか決着してないのが現状であります。いちおう動物実験とかだと、血糖値の上昇により認知や記憶に関わる脳エリアの活動が高まるって話はあるものの、ヒトではどうなのかまだよくわかんないんですよね。

 

 

ってことで新しい実験(R)は、健康な男女55人にスクロース(GI値 65)、イソマルツロース(GI値 32)っていう2つの糖質をそれぞれ別の日に飲むように指示。そのうえで図形や単語の記憶テストなどを行なったところ、

 

  • 血糖値が上がってから60分後にテストをやっても、認知、気分、満腹感のどの指標においても、成績の違いはなかった

 

だったそうです。かなりGI値が違う飲料を摂取しても、参加者の認知機能には目立った違いはないんだってことですね。

 

 

そう考えると、別に脳のパフォーマンスを気にして血糖値にこだわる必要はない気もするわけですが、

 

  • このテストはサンプル数が少ないのと、いろんなポイントをチェックし過ぎてるので、どうも偽陰性の可能性が高そう
  • 認知テストの前に血糖反応を測定してない(測定によって認知パフォーマンスが変わるかもしれなかららしい)

 

って問題はありますんで、まだ決定的な結論ではないところをご了承ください。まぁ私としては、よほどドカ食いでもした場合は別として、少々の血糖値の上がり下がりで脳のパフォーマンスが変動することはないんじゃないかなーと思ってますが。

 

 

 

エクストリームスポーツ好きはエナジードリンク好き

エクストリームスポーツ好きはエナジードリンクが好き!みたいなデータ(R)が発表されておりました。ドラッグレースとかフリーソロみたいな危険性の高いスポーツが好きな人は、エナドリをよく飲むのではないか、と。

 

 

これがどんな研究だったかと言いますと、

 

  1. エクストリームスポーツを見るのが好きな男女からアンケートを集める
  2. 集まった247件の答えから、エクストリームスポーツの観戦回数とエナジードリンクを飲む量を比べる

 

みたいな感じです。すると、その結果は、

 

  • 1週間あたりのエクストリームスポーツ観戦回数が1回増えるごとに、「エナジードリンクを飲む」って答えのオッズ比が1.31になった
  • エナジードリンクの広告を見ても、エナジードリンクを飲む率は増えなかった(もっとも、エナジードリンクをガンガン飲む人は、広告にちょっと影響されやすいかも?って傾向も出てる)

 

だったそうで、エクストリームスポーツ好きは、別に広告に反応してるわけでもないのにエナジードリンク消費量が多かったらしい。まぁこれだけだと原因は何もわからんですが、やっぱエクストリームスポーツみたいなアドレナリン増加系のイベントが好きな人は、基本的にアッパーな飲み物を好むのかなーって気はしますね。

 

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチADHD説

レオナルド・ダ・ヴィンチってADHDだったんじゃない?」みたいな面白研究(R)が出ておりました。そんな昔の人の診断なんかできるの?と思うでしょうが、研究チームはこうコメントしておられます。

 

500年も前に生きた人物の診断を行うことは不可能だが、レオナルドがあそこまで作品の完成に苦心した理由を説明するには、ADHDを考慮するのがもっとも確からしい仮説だと考える。

 

歴史的な記録によると、レオナルドはプロジェクトを計画するために過剰な時間を費やしたが、いずれにおいても忍耐力を欠いていたことを示している。レオナルドがADHDだったと考えれば、彼の気質と移り気な天才性を説明できる。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチが大半の作品を完成できなかったのは有名な話で、最後まで終わったのはほんの4点。デッサンこそ無数に残ってるものの、生涯で手がけた作品は16点ぐらいしかないんですよね。実際、本人のメモにも「なんで俺はこんな集中力がないんだ!」みたいな文章が残ってて、思わず共感しちゃうわけです。

 

 

ちなみに、チームが記録を分析したところ、

 

  • ダ・ヴィンチは左利きで、おそらく失読症だった
  • 言語機能が脳の右半球にローカライズされていた(人口の5%ぐらいしかいないケース)

 

って可能性が高いそうで、これらはどれもADHDにも多い特徴なんだそうな。

 

 

チームいわく、

 

レオナルドが自分のことを「人生に失敗した人間」だと考えていたのは悲劇的なことだ。

 

ADHDの者たちは、決してIQが低いわけではなく、創造性が欠けているわけでもない。レオナルドのケースは、ADHDの者たちが持つ天性の才能を活用することの難しさを示していると考えられる。

 

レオナルドが残した業績は、ADHDに関する偏見を取り除く役に立つかもしれない。

 

ってことで、ADHDが存分に才能を発揮できるようになったら、もっとすごいことになるのでは?って視点が強調されておりました。確かにねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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