ハチミツが風邪に効く!………かもしれないぞ!というメタ分析のお話
「ハチミツが風邪に効きまくる?」みたいなメタ分析(R)が出ておりました。
もともとハチミツは風邪の治療に使われてきた歴史があるものの、「本当に意味あるの?」ってのを証明するようなデータがほとんどなかったんですよ。いちおう2018年にコクランから系統的レビュー(R)が出てるんですが、「子供の咳をやわらげるかもだけど、全体的に強い証拠はないよねー」ぐらいの結論でして、その他の症状や成人への効果がどうなのかは謎のままだったりしまして。
ということで、今回の研究チームは、「すべての年齢の上気道感染症(URTI)にハチミツは効くか?」ってのを調べてくれております。URTIってのはウイルスのせいで鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどが起きることで、いわゆる普通の「風邪」っすね。
具体的には、過去のテストから12のデータをピックアップしてまして、そのうち8つは小児または青年が対象で、残り4は成人が対象になってます。また、使われたハチミツの種類はいろいろで、
- 8つの試験では、純粋なハチミツを使用
- 3つの試験では、ハチミツとハーブのミックスを使用
- 1つの試験では、牛乳とハチミツのミックスを使用
- 1つの試験では、コーヒーとハチミツのミックスを使用
みたいになってます。これらのハチミツを、プラセボや以下の治療法などと比べたんだそうな。
- 一般的な風邪のケア(衛生状態の改善とか)
- ジフェンヒドラミン
- デキストロメトルファン
- カルボシステイン
研究数が少ないんで出版バイアスは評価されてないですが、メタ分析は事前登録されていてPRISMAガイドラインに従っております。
では、どんな結果だったかザーッと見てみましょう〜。
- 通常のケアと比べると、ハチミツは咳の回数(n=8、SMD=0.36)、咳の重症度(n=5、SMD=0.44)、および複合の症状(n=3、MD=3.96)を改善する
- プラセボと比べたデータでは、ハチミツは複合的な症状に有意な改善が認められなかった(ただし、ギリギリの改善は確認されてる(n=2、SMD=0.63、95% CI: -1.44~0.18)
ということで、全体的に見てみると「もしかしたら通常のケアより風邪の諸症状を改善するかもだけど、これだけだとなんとも言えんなー」みたいな印象っすね。実際の分析にふくまれたテストはほんの少しだけですし(咳の重症度については5つの試験だけで、複合症状スコアについては3つの試験だけ)。
あと、個人的に感じた難点としては、
- 通常の風邪ケアの定義がわりと謎(「コーヒーを飲む」とかもふくまれてる)
- ほとんどの試験では咳の頻度と重症度しか測定していない(つまり、鼻づまりとかくしゃみや喉の痛みなどについてはほとんどよくわからない)
- 全体的にバイアスのリスクが高いので、あとで結論がひっくり返る可能性も高そう
といったあたりは解釈を難しくしてますね。まぁ大人がハチミツを飲んで問題を起こすケースはほぼないと思いますんで、「風邪を引いて咳が止まらない!」みたいなときは、試すだけ試してみてもいいんじゃないかと。カロリーにだけ気をつけつつ、お使いください。