体脂肪を減らしすぎるとどれぐらい免疫システムに良くないのか?問題
太ってると免疫機能がうまく働かなくなるのは有名ですけど、逆に痩せすぎても免疫機能が下がってしまうのはあまり知られてないかもしれません。生存にはある程度の体脂肪が必須なので、あんまり脂肪を落としすぎても良くないんですよね。
で、新しいデータ(R)では、「体脂肪を削りすぎるとどれぐらい免疫システムに良くないのか?」ってとこを掘り下げてくれててナイスでした。
どんな研究だったかと言いますと、
- 77人のボディビルダーと64人の普通の筋トレ好きを集める
- 全員の体組成とヒト白血球抗原G(免疫機能がちゃんと働いてるかを示すマーカー)を調べる
- 体脂肪や筋肉量とヒト白血球抗原Gの関係を調べる
みたいになってます。ボディビルダーの体脂肪と免疫機能の関係を調べた研究ってありそうでなかったので、非常に貴重でよろしいのではないでしょうか。
ちなみに、各グループの体脂肪は以下のようになっております。
- ボディビルダーの平均体脂肪率=男性6.5%、女性10.6%
- 普通の筋トレ好きの平均体脂肪率=男性16.7%、女性28.7%
こんだけ体脂肪率が違うと、確かに免疫システムにも差が出てきそうな気はしますね。
さて、結果はこんな感じです。
- ボディビルダー内の比較では、女性よりも男性のほうがヒト白血球抗原Gが有意に高かった(つまり、男性のほうが免疫システムがちゃんと働いてない)
- 男性ボディビルダーは、体脂肪率と筋肉量のあいだには、ヒト白血球抗原Gの増加と小〜中程度の有意な相関が認められた(つまり、体脂肪が少ない男性ほど免疫がちゃんと働かなくなるのかもしれない)
- ただし、女性ボディビルダーの場合は、体脂肪率とヒト白血球抗原Gの相関は弱く、有意ではなかった
というわけで、全体的に見れば「体脂肪率が低い人は免疫システムが低下してる可能性が高い」と言えそうっすね。昔から「ゴリゴリのビルダーは意外と風邪に弱い」とか言われてたんで、まぁ納得の結果と申しますか。
ただ、細かく見てみるといろいろわからん点もありまして、たとえば、
- ビルダーさんと普通の筋トレ好きをくらべたら、ヒト白血球抗原Gのレベルに有意差が出ていないので、体脂肪の低さと免疫システムの不調にそこまで明確なつながりがあるかはよくわからん
- 体脂肪と免疫の不調の相関は小〜中のあいだをまたいでおり、関係は存在するが決して強くはない。パワー不足によって偽陰性が起きてる可能性もそこそこありそう
- ヒト白血球抗原Gだけで免疫機能の働きをチェックするのってどうなの?
みたいなあたりはかなりの不確定要素になっております。このテストだけだとハッキリ言えない感じなんすよね。
まぁ過去のデータ(R)などを見てますと、
- 運動量を増やして体脂肪が減ると、免疫機能にはポジティブな影響がある
- ただし、激しいトレーニングを行う競技アスリートは、病気にかかる回数が増加していく
ってな話は出てますんで、激しすぎる運動や低すぎる体脂肪がよくないのはおそらく確実だろうなーとは思うわけですが。
現時点では、体脂肪率の低さによって免疫システムがダメージを受けるメカニズムはまだ不明なとこが多いんですけど、
- エネルギー利用可能性の低さが一番の問題なんじゃない?
ってあたりはおおかたで一致してる感じでしょうか。要するに、必要なエネルギー量よりもカロリーが少なくなり、慢性的な栄養不足が起きた状態っすね。これにより睡眠や代謝、免疫に異常が起きちゃうのはわかりやすい話っすな。
というわけで、今回のデータから教訓を得るとすれば、
- おそらく体脂肪率が低いと免疫システムは損なわれるが、それは慢性的な低エネルギーによるものが大きいのかな?と考えられる
- なので、体脂肪率を低くしてもいいけど、その場合は適切な量の有酸素運動に加えて、可能な限り食事を増やす
って当たり前の話になりますかね。やっぱ、免疫を万全にしつつ体脂肪をひと桁に保つのは、かなり難易度が高い作業なんでしょうなぁ。