褐色細胞を刺激すれば痩せられる!はどこまで本当なのか問題
「褐色脂肪はすごい!」みたいな考え方がよくあるわけです。これは肩甲骨のあたりに多い脂肪組織で、普通の脂肪と違って脂を分解してエネルギーに変える性質を持ってるんですよ。
そのため、褐色脂肪を刺激すれば「太りづらい体になるのでは?」って考え方が出てきまして、「ダイエットの救世主」(R)と絶賛する向きもあるわけです。
ただ、実際に褐色脂肪がどれぐらい役立つかはまだ謎なところが多くて、「本当に刺激によって脂を燃えやすくできるのか?」や「そもそも褐色脂肪って増やせるの?」って大事なところはよくわかってないんですよ。なので、このブログの過去ログでも、「まぁダイエットに使えるかは怪しいなー」ぐらいの結論に落ち着いておりました。
で、新しいデータ(R)は、「褐色細胞って活性化できるの? 痩せにくい体にしてくれるの?」ってとこを調べてくれてて有用でした。
まずはざっと実験デザインをまとめておくと、
- 24人の健康な男女が対象(体脂肪率は28%ぐらい)
- みんなをラボに呼んで、「ちゃんと食事をした状態」と「24時間の絶食状態」の2パターンでエネルギーの消費量を計測
- みんなにTシャツ短パン姿で16°Cの部屋に2時間ほど入ってもらい、褐色細胞を刺激する(褐色細胞は寒さで働くようになるので)。その後で消費エネルギーの量を計測する
みたいになってます。その結果、まずチームは参加者のエネルギー消費量の変化を見て、全体を2つのグループに分けたんだそうな。
- 倹約家=空腹時の消費エネルギーが減りやすいタイプ
- 浪費家=空腹時の消費エネルギーが減りにくいタイプ
通常、人間の体ってのは、カロリーが足りないときは「エネルギーを節約しなくちゃ!」と考えるので、その分だけ代謝を落として消費エネルギーを減らそうとするわけです。しかし、この反応には個人差が大きくて、生まれつき代謝が下がりにくい人もいるわけっすね。このタイプは、現代のように食事な豊富な環境でも、スリムな体型を維持しやすいわけです。
さて、この分類をふまえた上で何が分かったかと言いますと、まずは両グループの消費カロリーの違いから見て見ましょう。
- 倹約家がちゃんと食事をした場合は1日のエネルギー消費量が2098kcalだったのに対し、24時間絶食をした場合は1872kcalだった(-225±80kcal)
- 浪費家がちゃんと食事をした場合は1日のエネルギー消費量が1825kcalだったのに対し、24時間絶食をした場合は1746kcalだった(-79±42kcal)
ってことで、倹約家と浪費家のあいだでは、食事量の変化に対応して結構な消費カロリーの差があるみたいっすね。なかなかの違いですなぁ。
でもって、続けて褐色細胞による消費エネルギーの違いを見てみると、こんな感じです。
- 各自が持つ褐色脂肪細胞の量は、24時間のエネルギー消費量と関係がない
- 寒さによる褐色脂肪の活性レベルは、浪費家のほうが大きかった(約9g/ml vs 13g/ml)
ってことで、生まれつき浪費家の体質に恵まれた人は、応じて褐色脂肪の活性レベルも高いわけっすね。
まー、この研究は、あくまで特定の一瞬を切りとったスナップショットに過ぎないので、この結果が長期的にどんな違いをもたらすかは不明です。ただ、今回の結果をみる限りでは、
- 褐色脂肪が日々のエネルギー消費量におよぼす影響はめちゃくちゃ小さそう
- 褐色脂肪をどれだけ持っているかは個人差がめちゃくちゃ大きく、現時点では増やす方法もよくわからない(というか、褐色脂肪の量を簡単に計測する方法もよくわからない)
って印象が強くありまして、現時点では「ダイエットのために気にするだけ無駄!」って結論に落ち着きました(アンチエイジング目的で活性させるなら別ですが)。その代わりに、「不老長寿メソッド」で紹介した「NEAT」を増やす方を意識した方が効率的でしょうね。