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狩猟採集民は週に15時間しか働かないのに、みんななんでそんな働いてるの?というケンブリッジ大学の人類学者のお話



 

仕事:石器時代からロボットの時代までの奥深い歴史(Work: A Deep History, from the Stone Age to the Age of Robots)」って本を読み終わり。著者のジェームズ・スーズマンっていうケンブリッジ大学の人類学者で、日本だと「『本当の豊かさ』はブッシュマンが知っている」が有名っすね。

 

 

この本も狩猟最終民族の暮らしなどをベースに「そもそもお仕事ってなんだ?」や「現代人はなんでこんなに働いてばっかで時間がないの?」って問題をあつかってまして、非常に良い感じでした。現代人は衣食住の基本的なニーズが満たされているにもかかわらず、なぜここまで働き続けるのか? って問題ですね。なかなか深刻なポイントですよねぇ。

 

 

というわけで、以下は個人的に勉強になったところの覚え書きです。

 

  • 人類学の研究から見れば、狩猟採集民は世界で最も過酷な環境で暮らしてるにも関わらず栄養状態がよく、自給自足の農業社会よりも健康で長生き。1週間の労働時間が15時間以上を超えることはほとんどなく、先進国の人間よりもはるかに多くの時間を余暇に当てている(まぁ、このあたりの研究には異論もあるので、15時間って数値をうのみにはできんのですが)。

 

 

  • カラハリのサン族などは、その日を生きるのに必要な食料より多くを集めるために働くことはなく、あまったものを蓄えたり、将来のために食料を保存することもない。なぜなら、環境が自分たちを確実に満たしてくれると信じているから。つまり、無限の欲求を満たすためにとてつもない努力をすることは人間の本質ではないと考えられる。

 

 

  • 先進国の人間は、「勤勉は美徳だ!」とか「怠惰は罪だ!」とか言うけれど、この考え方は、約1万年前に誕生した農業文明によって生まれたものだと考えられる。農業では、自分が働いてからリターンを得るまでに数ヶ月〜数年を要し、これが現在の文化的なベースを作った。つまり、現代人の多くが将来のことばっか心配しているのは人間の本質的な性質ではなく、農耕時代に生まれた思考の副産物だと思われる。

 

 

  • 先進国の人間の多くは、「人間は生まれながらにして上下がある!」と考えがちであり、現代人の仕事の多くは「社会的なヒエラルキーを上昇させたい!」という野心のために行われている。しかし、狩猟採集社会から得られたデータでは、ほとんどが「非階層化」と呼ばれる社会を形成しており、首長や裁判官といった正式な指導機関を持たず、食料や資源を平等に分配する傾向がある。

    男性と女性は役割は違っても地位は同じで、子供たちは年齢別のグループでほとんど競争しないで遊び、高齢者は愛情を持って扱われても特別な特権は与えられない。もし資源を独占しようとする者がいると、嘲笑やからかいの形で制裁を受ける。つまり、富や地位を得るために余計な仕事をする人はいない

 

 

  • かつての人類は小規模で密接に結びついたコミュニティで構成されており、親族、宗教的信念、儀式の共有などによって自己のアイデンティティを形成してきた。しかし、現代の都市環境では緊密なコミュニティを維持できず、その結果、現代では仕事がアイデンティティの基盤になっている。というか、なりすぎている。

 

 

  • 確かに、現代の物質的な繁栄は農耕民族が作り上げた労働の文化のおかげではある。しかし、そのせいで私たちの多くは、これまで必要としなかったものに対して「これがなければ生きていけない!」と思わせてしまう弊害も生んだ。

    同時に、現代では仕事から満足感を得ている人がほとんどいなくなり、2017年の大規模な世界調査でも自分の仕事にやりがいを感じている人は10人に2人にも満たないことがわかり、他の調査でも30%の人が自分の仕事を基本的に無意味だと考えていた。ところが、それでもなお現代人はアイデンティティのために仕事の重要性を過剰に主張している。

 

 

というわけで、全体的には「現代人の仕事観は農耕生活の産物!私たちにはもっと適切な仕事観がある!」って主張が展開されてて、お節ごもっともでございますって感じ。確かに現代人の仕事観は生存のリソースが不足してた時代にはフィットしてたんでしょうが、いまでは不適応になってるのかもですなー(この感覚を変えるのは大変でしょうが……)。


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