運動ですぐに頭を良くするためには、どれぐらいのキツさの運動をどれぐらいすべきか?問題
運動で頭が良くなるよーって話は昔からいくつもあって、
- 運動で脳をデカくするためにはどれぐらい動けばいいのか?
- 頭を良くする物質「BDNF」の量を増やすための運動ガイドライン
- 年を取ってから運動で頭を良くするための最低ライン
- 頭が良くなる運動の条件とは?を調べたメタ分析
- 運動をサボると頭が悪くなる。10日で悪くなる
- 1回の運動をしただけでもすでに頭は良くなっている
みたいなデータを取り上げております。運動を続けると長期的に頭が良くなるだけでなく、ランニングやサイクリングをした直後から脳のパフォーマンスが上がるって証拠はたくさんあるんですよね。必ずしも実感できるレベルではないかもしれませんが、再現性はとても高いんですよ。
ただし、ここにはまだ未解決の問題も多くありまして、
- どのくらいの運動量でこの効果を引き起こすことができるのか?
- 逆に脳の機能が下がっちゃう運動量はないのか?
- 個人の体格は関係あるのか?
- どのような種類の認知が改善するのか?
みたいなポイントはまだ謎だったりします。特に「運動しすぎたら逆効果だったりしないの?」問題はまだ検証が進んでないんで、気になるところなんですよね。
というわけで、シドニー大学などの新しいテスト(R)では、上記の問題にある程度の答えを出そうとしてくれていて、まことにありがたいことでありました。
この研究では、トレーニングを受けた21名のサイクリストまたはトライアスリート(男性11名、女性10名)を集めまして、以下のトレーニングを2日に分けて行ってます。
- 中程度のサイクリングを15分間+約4分間の認知機能テスト
- 1に続けて中程度のサイクリングを30分間+約4分間の認知機能テスト
- 2に続けて疲労困憊するまでのサイクリングを平均11~12分間+約4分間の認知機能テスト
中程度のサイクリングはピークパワーの50〜55%でスタートし、15分後には最大心拍数の平均75%、45分後には80%になるように設定したとのこと。要するに、少しずつ運動の負荷と長さを上げていって、それぞれの認知レベルをみたわけです。なかなかハードなテストっすな。
ちなみに、認知テストがどんなものだったかと言いますと、
- スクリーン上に4つの黒い箱が表示され、そのうちの1つが赤くなるたびに、その箱に対応するボタンをできるだけ早く押す(脳の反応時間をチェックしてる)
- 一連の単語(赤、緑、青、黒)がランダムな色(赤、緑、青、黒)で表示され、言葉の意味ではなく文字の色に対応するボタンを押す(いわゆるストループテストで、脳の瞬間的な反応にストップをかける能力をチェックする)
みたいになってます。わりと認知テストとしては定番のものが選ばれてますね。
で、結論です。
- すべてのケースにおいて、45分の運動の方が15分よりも優れていた
- 従来は「完全に疲労困憊した後は脳の機能が下がる」と言われていたが、今回のテストではそのような結果は認められなかった
- ちなみに、この効果にプラセボはほぼ関係なく、運動による脳への血流の増加や神経伝達物質の増加が原因であることが確認された
ってことでして、基本的には普通に会話ができないレベルの運動を45分行うほうが、認知の機能は上がるみたいっすね。
ただ、すでにお気づきの方も多いでしょうが、この研究はあくまですでに体力がめちゃくちゃある人だけを対象にしてるんでご注意ください。2015年に台湾の研究者が行った研究(R)とかだと、ほとんど運動をしていない学生で計測した場合は、
- 頭を良くするには20分間の適度な運動がベスト!
- 45分間の運動だとそこそこの効果しか得られない
みたいな報告も出てますんで。あまり心肺機能が高くない人は、20分ぐらいの運動に抑えといたほうが良さそうっすね。
そんなわけで、重要なプレゼントかテストがある場合は、その直前に45分ぐらいのジョギングをしてみるのも吉でしょう。私も講演の前とかはちょっと走ってみるか……(そうなると汗の問題が難しいですが……)。