「体が痛いなら運動だ!」とはよく言うけど、どんな運動をどれぐらいやればいいの?問題
「体が痛いなら運動だ!」みたいな話はよく聞くところで、腰痛の治療でも「運動療法はかなりいいっぽいよー」などと言われてるわけです。
ただし、「痛み」の研究ってのはかなりややこしくて、なにが本当に効くのかを調べるのは難しいんですよね。心拍数や乳酸値みたいはっきり測定できないし、痛みの体験が人によって違うんで、どうにも調査しづらいんですよ。
そこで、ニューサウスウェールズ大学のチームが、新たに「どんな運動をどれぐらいやれば痛み強くなるの?」を調べたメタ分析(R)をしてくれまして、非常に参考になりました。
もうちょい正確に言うと、この研究は「運動誘発性鎮痛」について調べたもので、簡単に言えば運動のあとで痛みに強くなる現象のことですな。過去の研究からRCTに限定したデータのみ13件をまとめて大きな結論を出してくれていて、なかなか良い感じです。
では、細かいとこはぶっ飛ばして、大きな結論だけまとめると以下のようになります。
- 健康な人は有酸素運動をすると間違いなく痛みに強くなる
- ただし、筋トレや等尺性運動(関節を動かさずに押したり引いたりの状態を維持する運動)には、痛みに強くなる効果が認められなかった。厳密に言えば、筋トレにはちょっとした効果があるかもしれないけど、これは2つの研究をベースにしているだけなので現時点ではよくわからない
ということでして、いまんとこ筋トレなどの効果は謎で、痛みへの耐性をつけたいなら有酸素運動にこだわっておいたほうが良さそうっすね。
それでは、有酸素運動をどれぐらい行えばいいのかといいますと、
- 6分間ぐらいのウォーキングでは、基本的に変化が見られないっぽい
- しかし、30分間のサイクリングや40分間のトレッドミルでのランニングを行った場合には、もっとも良い効果を得られるっぽい
みたいになってます。痛みに強くなるためには、ある程度の時間をこなす必要があるのかなーってとこですが、決定的な結論を出すにはまだ十分なデータがないのでご注意ください。
ちなみに今回の調査では、慢性疼痛に悩んでいる人を対象にした研究も3件ほどふくまれてまして、変形性膝関節症、足底筋膜炎、テニス肘への効果などもチェックしてるんですが、
- 筋トレや等尺性運動は効果がないかもしれない(これはデータ不足でよくわからない)
- 慢性的な痛みに有酸素運動が効くかどうかについては、基準を満たすデータがなかったので現時点では謎
といった結論でした。おそらく慢性痛にも運動は効くと思われるのですけど、はっきりした結論を出すにはまだ時間が必要かもしんないですね。
まー、今回のメタ分析を見る限り、やっぱ運動と痛みの関係性はよくわからんことが多いなーって印象ですね。痛みに強くなるメカニズムはまだ謎だし、はっきりしたトリガーは何なのかや、もっともメリットを受けやすい人が誰なのかも不明ですからねぇ。
とはいえ、有酸素運動によって身体の痛みがやわらぐのはほぼ間違いないんで、私みたいにしつこい腰まわりの不快感にお悩みの方は、30分以上の有酸素運動をお試しいただくといいんじゃ無いでしょうか。