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今週半ばの小ネタ:ピンクの飲み物で運動力アップ、抗うつ剤を減らす方法、HIITで頭がよくなる?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

ピンクの飲み物で運動のパフォーマンスが上がるかも

ピンクの飲み物で運動のパフォーマンスが上がる!」という変な研究(R)が出ておりました。これはウェストミンスター大学などの研究で、どんな実験かと言いますと、

 

  1. 参加者にトレッドミルで30分間ほど好きなペースで走ってもらい、ランニング中の主観的な辛さをRPEで評価してもらう

  2. トレッドミルでのトレーニング中、参加者に「低カロリーで人工甘味料を加えた透明な液体」か「低カロリーで人工甘味料を加えたピンク色の液体」のどちらかで口をすすぐように指示する

  3. ランニングのパフォーマンスをチェックする

 

みたいになってます。ピンク色の液体は着色料で色づけしたもので、ピンク色を選んだのは、「ピンク色の飲料は一般的に甘さを連想させるため、糖分や炭水化物が入っていることを連想させるから」だそうです。要するに、研究チームは「俺は糖分を補給したぜ!」ってプラセボ効果で運動のパフォーマンスが上がるんじゃないかと考えたわけっすね。

 

 

すると、結果は研究チームの読みどおりでして、

 

  • ピンクのドリンクを飲んだ場合、参加者の運動パフォーマンスは4.4%向上した
  • ドリンクの効果は、ランニング速度、総走行距離、および主観的なランニングの辛さなど、すべての側面において確認された

 

と言うことで、あらためて「人間の思い込みすごい!」って感じっすね。個人的にはヘンな色の飲み物に偏見があるので、この実験を私が試しても効果は出ないと思いますが(笑)、この思い込みパワーは使っていきたいっすね。

 

 

 

抗うつ剤を減らすためのベストな方法はあるのか?問題

抗うつ剤を減らすにはどうすればいいの?って問題について調べたデータ(R)が勉強になったんでメモ。これは4,995名の参加者を含む33の研究を調べた調査で、抗うつ剤を減らしていく方法としては何がいいのか?を調べた内容になります。

 

 

で、くわしいとこははしょって、結論だけを申し上げますと、

 

  • いまんとこ入手可能なデータによると、抗うつ剤を中止するさまざまな方法のうち、強力な証拠に裏づけられたものはない

 

  • 一般的な減薬の方法は、1)急激に止める、2)数週間かけて少しずつ薬を減らす、3)心理的なサポートを受けながら断薬するの3つだが、現時点では心理的サポートを受けながら1週間以上かけて減らすのがベストだと思われる

 

  • 心理的サポートを受けずに抗うつ剤を減らしたり、急に抗うつ剤を中止したりした場合はは、うつ病や不安症の再発のリスクが高まるかもしれない

 

ということで、いまのとこ「減薬についてはほとんどわかってることはないんだなー」って印象が強い研究でしたね。抗うつ剤の使用スタートに関する研究は1,000件以上あるのに、抗うつ剤の使用中止に関する研究は世界中で33件しかないってのが困ったもんですね。

 

 

さらに研究チームいわく、

 

イギリスでは10人に1人以上の成人が抗うつ剤を使っているが、長期服用者を対象とした調査によると、そのうち3分の1から2分の1は服用を継続する根拠がなく、長期的には副作用が増加することが示唆されている。

 

とのことで、イギリスでは割と無闇に抗うつ剤が処方されてるみたいっすね。日本の事情はよく知らんのですが、抗うつ剤の利用って難しいすなぁ……。

 

 

 

HIITは普通の運動よりスピーディに頭が良くなる?

HIITみたいに負荷が高い運動は脳にいいのでは?」って研究はいくつかあって、

 

  • DKUの試験(R)では、高強度のランニングがBDNFレベルを増加させ、ワーキングメモリも改善したが、簡単なストレッチや低・中強度の運動では同じ効果が得られなかった

 

  • トロント大学などの試験(R)でも、中程度の運動よりもHIITのほうが高齢者の記憶が改善したと報告されている

 

なんてのがあります。別に普通のランニングでもいいんだけど、HIITは負荷が高いぶんだけ時短効果も大きいのではないかと考えられてるわけっすね。

 

 

で、新たに筑波大学の研究チームが行った試験(R)も、「HIITは普通のランニングより脳の効果が高い?」みたいな結論になってておもしろかったです。ラットを使った動物実験なんでヒトにも当てはまるかどうかは謎なんですが、気になる結果ですね。

 

 

どんな話かと言いますと、

 

  1. 雄のラットを、普通のランニンググループ、HIITグループ、運動しないグループに割り当てる

  2. 運動後のラットを迷路に離して、どうやって抜け出すかを調べる

 

といった感じで週5日のトレーニングを4週間続けさせ、脳機能の違いをチェックしたんだそうな。すると、

 

  • 普通のランニンググループとHIITグループはどちらも空間の記憶能力が改善した

  • しかし、HIITグループのラットは普通のランニンググループより約33%の距離しか走らなかったが、空間記憶の改善は同じレベルだった

 

だったそうです。あくまで動物実験なんであれですが、これがヒトにも当てはまるとしたらかなりの時短が望めそうですなぁ。人間への効果はまだ謎ながら、とりあえず脳を手っ取り早く鍛えたい人はHIITを試すのもいいんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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