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今週末の小ネタ:創造性が高い人ほど非倫理的、セレブ好きは知性が低いのでは?夜行性の人ほど孤独で脳の一部が小さい?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

創造性が高い人ほど倫理的ではないぞ!というメタ分析

創造性がある人ほど倫理的ではない!と結論づけたメタ分析(R)が出ておりました。これはは19の論文から合計6,783人のデータをまとめたもので、だいたいの研究では、

 

  1. みんながどれぐらい斬新なアイデアを大量に思いつけるかどうかを調べる

  2. みんながどれぐらい非道徳的な行動をとる意思があるかを調べる(万引きとかカンニングとか)

  3. 2つのデータに関係があるかどうかを調べる

 

って感じで、それぞれの創造性と非倫理性につながりがあるかをチェックしてます。その結果、両者には弱いながらも正の相関が認められまして、この傾向は年齢、性別、裕福さとは無関係に確認されたんだそうな。

 

 

では、なんでアイデアマンほど非倫理的なのかってとこが気になりますが、研究チームは3つの原因を推測しておられました。

 

創造的な人は、未来に実現する価値が高いことを想像する際に権利意識を強く持つ傾向があり、そのせいで目標に到達するためには一線を越えても構わないと考える。

 

また、創造性のある人は、認知的な柔軟性が高く、問題に対して様々な視点からアプローチできるため、非倫理的な行為を正当化する能力も高い。

 

さらに、創造性と非倫理性はどちらも規則の破り方や不適合なプロセスを伴う。これらの構成要素は同じ認知的プロセスを伴う。

 

ややわかりにくい表現がありますけど、要するに、

 

  1. 創造的な人は未来の価値を優先するので、「目的が正しいなら手段はどうでもいいっしょ!」と考えやすい

  2. 創造的な人はいろんな視点で考えるので、悪いことをしてもうまい言い訳を思いつくのがうまい

  3. 創造的に考えるにはルールを破らねばならないので、これは非倫理的な行動と近いところがある

 

みたいな話です。あくまでゆるーい相関ではありますが、この関係性はわかる気がしますねぇ。

 

 

 

セレブ好きは知性が低いのでは?という研究

セレブ好きは知性が低いのでは?みたいなデータ(R)が出ておりました。芸能界のゴシップを追いまくったり、セレブに夢中になるような人は、認知機能が低いのではないか?という話であります。

 

 

これはハンガリーの成人1,763人を対象にしたテストで、

 

  1. みんなに30単語の語彙力テストと数字記号の置き換えテストをしてもらう

  2. その後、全員がどれぐらい有名人に関心があるかをアンケートで調べる

 

ってな感じで各人の頭の良さとミーハーレベルを照らし合わせたんだそうな。有名人への関心レベルは、「好きな有名人の個人的な習慣を知りたい」「好きな有名人の人生の詳細に夢中になることがある」「好きな有名人から違法なことを頼まれたら、私はおそらくそれをするだろう」みたいな文章に賛成するかどうかで調べたらしい。違法なことに手を染めるかどうかって、すごい質問ですな。

 

 

で、結果をまとめると、こんな感じです。

 

  • ミーハーテストで高得点を取った人ほど2つの認知能力テストの成績が悪かった
  • 有名人好きと認知テストの低さが関係する理由はよくわからない

 

ということで、セレブ好きの認知が低い傾向はあるもののその理由は不明で、有名人に脳の処理力を使いすぎているせいなのか、認知機能が低いからセレブにこだわるのかはよくわからんらしい。

 

 

研究チームいわく、

 

今回の研究は、好きな有名人に強い執着心を抱くことで、認知テストのスコアが低下することを証明するものではない。しかし、好きな有名人への感情を注意深く監視することが賢明であることを示唆する。

 

とのこと。有名人好きが悪いわけじゃないものの、いま自分がどれぐらいセレブに執着しているかを自己モニタリングしてみるのは有効かもしれないっすねー。

 

 

 

夜行性の人ほど孤独で脳の一部が小さい説

世の中には朝型と夜型の人がいて、時間によって最適なパフォーマンスを発揮できるタイミングが違ったりするわけです。いわゆるクロノタイプっすね。

 

 

でもって、新しいデータ(R)は「夜型の人ほど孤独で脳の一部が小さい!」みたいな結論になってておもしろいです。まずは調査の概要をまとめておくと、

 

  1. 40~70歳の成人4684名を対象に、みんなに朝型か夜型かを尋ねる

  2. 同時に全員の孤独感を尋ねて、さらにみんなの脳をスキャンしてボリュームをチェック

 

みたいになってます。その結果、自分で夜型だと思ってる人ほど孤独感が強いし、さらには右海馬の体積が小さい傾向もあったんだそうな。

 

 

ちなみに、ここでいう「夜型」ってのは遅い時間に起床して、遅い時間まで働いて、遅い時間に活動する嗜好のことで、研究チームがピックアップしてくれたデータによりますと、この傾向を持つ人たちは、

 

  • 2型糖尿病、心血管疾患、死亡率の増加など、健康状態の悪化と関連することが多い
  • うつ病などの精神疾患や神経症などの性格特性とも関連しやすい
  • 情動処理における負のバイアスや情動制御の障害とも関連することが多い

 

なんて傾向が認められてるんだそうな。なんだか悪いことばっかみたいですけど、やっぱ現代社会は朝型に優位なようにできてるんで、いたしかたないことかもしれません。

 

 

もちろん、この研究はわりとゆるめで、孤独感をひとつの質問でしか判定してないし、朝型夜型の判断も自己診断で決めてますんで、今後の追試では違う結論が出てきそうな気もしております。そこらへんはご注意ください。

 

 

ともあれ、先行研究をだーっと見てみる限りでは、夜行性の心身に不調が出やすい傾向はあるようなんで、心当たりのある方はご留意いただければと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。