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脳に良さそうな研究3選:ビタミンDで認知機能が改善? テレビは頭が悪くなる? アシュワガンダ良さげ?

近ごろ「脳機能の改善」に関するデータを立て続けにチェックしたので、ひとつのエントリにまとめておくことにしました。

 

 

ビタミンDは認知機能を改善できるか?の系統的レビューとか

まずはみんな大好きビタミンDに関する系統的レビュー(R)で、「ビタミンDのサプリは脳の機能を改善してくれるのか?」をガッツリ調べた内容になってます。もともと血中のビタミンD濃度が低いと認知症やアルツハイマー病になりやすいってのは言われてたので、果たしてサプリで実際に認知機能が改善するかどうかを調べてみたわけですね。

 


この系統的レビューは,ビタミンDが認知機能にあたえる影響を調べた20のRCTを対象としたもの。試験の参加者は30人から4,113人のあいだで、年齢は18歳から90歳まで幅広かったらしい。

 

 

参加者のビタミンD濃度は30nmol/L(12ng/mL)以下から100nmol/L(40ng/mL)以下の範囲で、観察期間は1.5カ月から8年。24の認知機能テストを使って脳の働きを評価してまして、1つの試験では神経認知障害の発生率もチェックしてます。

 

 

また、ビタミンDサプリの投与量は1日あたり400IUから1回540,000IUまでだそうで、ある試験では600,000IUを筋肉注射してたりします。すごいバラつきですな。

 

 

でもって、すべてのデータをまとめたら、こんな結果になりました。

 

  • 5件の試験でビタミンDのサプリによって認知機能の改善が見られた
  • 10件の試験では効果がバラバラで(一部の認知テストでは成績が上がったけど、別の認知テストは逆に成績が悪化してたりする)
  • 5件の試験では、ビタミンDに効果が見られず、軽度または重度の認知障害の発生率にも差はなかった

 

ということで、ひかえめに言っても「さっぱり結論が出ない!」て印象ですね(笑)。今回のレビューは、あつかってる試験の方法がばらばらで、ビタミンDの投与量、被験者の年齢、追跡期間、ビタミンD濃度などもかなり違うので、それによって効果の出方が違うんでしょうな。

 

 

ただ、全体的には「体内のビタミンDレベルが低い人ほどサプリで認知が改善しやすそう」って傾向はあるみたいなんで、そこらへんは気をつけていただくといいんじゃないかと。

 

 

 

テレビ視聴時の親の会話と幼稚園児の好奇心との関連性について

レビは子供の好奇心を育むのにアリかナシか?」みたいなデータ(R)が出ておりました。なんでこういうことを調べたのかと言いますと、過去に行われた研究により、

 

  • テレビを見る量が多い子供ほど、言語や認知機能の発達が悪くなることが知られている
  • 好奇心が高い子供ほど、ボキャブラリーが多く、学ぶことに喜びを感じ、学業成績が良い傾向がある

 

って報告がやたら多いからであります。テレビが子供の好奇心にどう影響するのかを調べれば、引いては子供の勉強への影響もわかるんじゃないだろうか、と。

 

 

ってことで研究チームは5,100人の子供を対象に前向きコホート研究を行いまして、子供たちが幼稚園に通っている間、両親に1日のテレビ視聴時間と、テレビ視聴中の会話の頻度を週単位で報告してもらったんだそうな。と同時に、幼稚園児の好奇心のレベル(学習意欲、新しいことへの挑戦、新しい状況への適応、仕事や遊びにおける想像力の発揮)を評価するアンケートも実施したうえで、人種、配偶者の有無、母親の学歴、貧困の有無などの変数も測定たらしい。

 

 

その結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 就学前の子供たちは1日平均2.5時間テレビを見ていた
  • 1日のテレビ視聴時間が長い子供ほど好奇心のレベルは低かった
  • しかし、テレビ視聴中に親とよく会話をする人ほど好奇心のレベルが高かった。この効果は、社会経済的地位の低い子どもほど大きかった

 

ということで、たんに受け身でテレビを見てると好奇心は低下するんだけど、テレビの内容を他人と語り合うための媒介物として使うなら好奇心の改善に役立つのではないか?ってことですね。これはテレビだけでなく、あらゆることに言えそうな話ですな。

 


もちろん、本研究は親の自己申告に基づいているのでバイアスがかかる可能性はありますけど、なんらかのコンテンツを消費する際は、誰かと意見を交換しあう作業を付け加えてみるのは、大人でも効果がありそうっすよね。

 

 

 

アシュワガンダでストレスマンの脳機能を改善するかも?

ストレスや披露に効きそうなハーブといえばアシュワガンダ。アーユルヴェーダでよく使われてきたハーブで、ストレスおよびストレスホルモンを減少させ、そのおかげで認知機能、睡眠、生活の質を改善する可能性が指摘されてきたんですよ(慢性的なストレスは認知能力や睡眠、心理的な幸福感などに悪影響を及ぼすので)。

 

 

ってことで新しいデータ(R)は、アシュワガンダが脳機能や睡眠の質に効くかどうかを調べてくれてて参考になりました。

 


これは90日間のRCTで、中程度のストレスを感じている20~55歳の健康な男女125名を集めて、2つのグループにわけております。

 

  1. 300ミリグラムの徐放性アシュワガンダを飲む(徐放性は有効成分がジワジワ体内に取り込まれる処置をしたサプリ)
  2. プラセボのカプセルを飲む

 

そのうえで、みんなの認知機能、知覚的ストレス、コルチゾール値、幸福感、睡眠の質などを調べたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • アシュワガンダを飲んだグループは想起記憶が19%改善(プラセボは変化なし)
  • アシュワガンダを飲んだグループは記憶のエラー率が25%改善(プラセボは29%悪化)
  • 知覚的ストレス、コルチゾール値、幸福感、睡眠の質も、アシュワガンダを飲んだグループのほうが改善していた

 

全体的に「わりといいんじゃない?」と思える結果が出てまして、私としても「また使ってみようかしら……」って気分にさせられますね。

 


惜しむらくは、この試験がサプリの製造元から資金提供を受けており、研究者の一部が企業の従業員だったのが難点ですけど、そこそこのストレスにお悩みの方は、試してみてもいいかもしれません。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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