筋トレの直前に糖質をとると筋肉が増えやすくなるんじゃないか?というメタ分析の話
「筋トレの直前に糖質をとっておくとはかどる!」みたいな考え方があるわけです。当たり前ですけど、筋肉を動かすには糖質が必要なんで、これは非常に理にかなった考え方なんですよね。
で、糖質の重要性は有酸素運動系のスポーツではほぼ確定していて、中~高強度(≧70%)のトレーニングを行う場合は、1日に体重1kgあたり8~10gを摂取することで、パフォーマンスが上がることがわかっております。
が、一方で、実は筋トレへの効果についてはまだハッキリしてなくて、トレーニングの直前に糖質を取ることで、どれぐらいメリットがあるかはまだわかってなかったんですよ。そこで、新しい研究(R)では、「筋トレ前の糖質の効果」に関する過去の研究をまとめてメタ分析を行いまして、この問題に良い結論を出してくれております。
これは、過去の研究から21件をピックアップして、226名分のデータを統合して分析。筋トレの直前に糖質(マルトデキストリンみたいなやつね)を飲むことで、どんなメリットを得られるかを調べてくれております。
その結果をざっくりまとめると、こんな感じになります。
- トレーニング前の糖質を飲まない場合と比べて、糖質を飲んでおくと筋トレの総トレーニング量はアップする(SMD = 0.61, [95% CI 0.11, 1.11]; p = 0.020; I2 = 79%; k = 12)。
- 45分以上の筋トレだと糖質のメリットを得られる(SMD = 1.02 [95% CI 0.07, 1.97]; p = 0.040; I2 = 83%; k = 6)。しかし、45分より短いセッションでは、統計的に有意な効果を示さなかった(SMD = 0.23 [95% CI - 0.21, 0.67], p = 0.231; I2 = 46%; k = 6)
ということで、大きな結論を言うと「糖質でもっとたくさん筋トレができるようになる!(ボリュームが上がる)」「ただし45分以上の筋トレじゃないと意味ないかも!」みたいな感じですね。言わずもがな、筋トレにおいてボリュームはもっとも大事なポイントですから、その点で、トレーニング前の糖質摂取は筋肉の成長に役立つ!と言えるでしょう。
ちなみに、この分析から得られた他の知見も紹介しておくと、
- 最後の食事をしてから8時間を超えた後に筋トレをした場合は、糖質の摂取によって筋トレがはかどる(SMD=0.39[95%CI 0.06,0.72];p=0.030;I2=0%;k=5)
- 筋トレのタイミングが、最後の食事をしてから8時間以内だった場合は、糖質を飲んでもあんま意味ないかも
なんてのもあったりします。最後にいつ食事をしたかどうかが、糖質の摂取には重要なポイントみたいですね。
ということで、以上の話をまとめておくと、
- 1回あたりの筋トレにおけるトレーニング量が多ければ多いほど、糖質のメリットは得やすい
- 筋トレ前の糖質は、45分以上のセッションと8時間以上の空腹時に最も効果的
みたいになりますね。ただし、この研究では、具体的にどれぐらいの糖質をとればいいかはわからないんですが、ここで扱ってるデータを見てますと「体重1kgごとに1gの糖質飲もう!」って結論になりそうではあります。
まー、この研究は、それぞれのデータの筋トレメニューがバラバラなので効果量の解釈が難しいし、データが十分でないもあったりしますんで、もうちょい今後も追う必要はあるでしょうね。その一方で、適切なメタ分析手法使ってバイアスのリスクを特定してまして、そこらへんは非常に良い感じっすね。
とりあえず、私は1回のトレーニングで90分ぐらい使っているので、試してみるか……。