【質問】吊り橋効果って恋愛を成功させるのに役立つんですか?
こんなご質問をいただきました。
この前、忘却曲線について書かれていましたが、同じような話で「吊り橋効果」はいかがでしょうか? こちらもかなり古い実験だと思うのですが、恋愛を成功させるのに使えるのでしょうか? どう思われますか?
ということで、「吊り橋効果」はどんなもんなのか、と。念のため説明しておくと、吊り橋効果ってのは「覚醒状態(心臓がドキドキしてたりとか)の時に見た他人を、通常時よりも魅力的に感じる現象」みたいなやつです。本当は吊り橋をわたって心臓がドキドキしているのに、そのドキドキを恋愛のドキドキだと勘違いしちゃうって話ですね。
この元ネタは1970年代の実験(R)で、だいたい以下のような感じになります。
- 非常に高くて不安定なつり橋、または地面に近くてまったく怖くない橋の、どちらかを歩いている男性をピックアップ
- 魅力的な女性が男性たちに橋の真ん中で声をかけ、めんどうなアンケートに答えるようにお願いする
- 終了後、女性はそれぞれの男性に電話番号を伝え、さらに話したいことがあれば電話をくださいと頼む
すると、その結果、不安定な橋を渡った男性は、安定した橋を渡った男性に比べて、アンケートの内容にエロい文章が多かっただけでなく、女性に電話をする確率も有意に高かったんだそうな。ちょっと前のポップ心理学書によく乗ってた、定番の研究ですよね。
でもって、これがいまも通じるのかってことですけど、いちおうその後も追試がいくつか行われてたりします。たとえば、ウィートン大学の実験(R)では、女性の参加者に協力をお願いしたうえで、みんなに心拍計から偽のフィードバックを与えて「心拍数が上がっている!」と思わせたんですよ。すると、心拍数が上がった(と思わされた)参加者は、そうでない参加者よりも、男性の研究者のもとへ2回目の面接に戻る可能性が有意に高かったそうな。
さらに言えば、ノースカロライナ大学の調査(R)では、「一緒に難しいことをする場合も恋愛感情が高まるよ!」って結論を出してたりもします。これは20組の夫婦を対象にしたテストで、みんなにデジタルデバイスを持ち歩かせ、自分の気分やパートナーに対する気持ちについて、定期的に研究者に報告してもらったとのこと。
その後、すべてのデータを調べたところ、日常的に一緒に難しい作業をしているカップルほど、お互いを好きである可能性も高いことがわかったんですよ。たとえば、一緒に難しい副業をしたり、なんらかのスポーツに取り組んだり、自宅のリフォームをしたりとか、そんな感じです。
このような現象がなぜ起きるのかと言いますと、
- 挫折しそうな作業に成功するとテンションが上ってよい気分になる
- その良い気分を「このパートナーと一緒だったからだ」と勘違いする
- 恋愛感情が高まる!
みたいな感じです。「成長できた!」とか「能力や知識が増えた!」とか「やりとげた!」みたいな興奮のおかげで、相手によりひかれるようになるわけっすね。そう考えると、仕事で知り合った男女の結婚率が高いのもよく理解できると申しますか。
というわけで、これらのテストを見ると、男女を問わず「吊り橋効果は使えそうだなー」って感じがするわけですが、注意点もあるのでご注意ください。というのも、1981年の研究(R)だと、吊り橋効果には副作用もあるから気をつけて!って結論になってるんで。
こちらの研究をざっくりまとめておくと、
- ポジティブ、ネガティブ、またはニュートラルな刺激を呼び起こす3つの別々の動画を作成
- 男性の参加者を集めて、作成した動画を見てもらう
- その後、いろんな女性を撮影した動画を見て、どの女性に魅力を感じるかを評価してもらう
みたいになります。その結果、どんな傾向が確認されたかと言うと、
- ポジティブにせよネガティブにせよ、強い刺激を受けた男性は、魅力的な相手をより魅力的に、魅力的でない相手をより魅力的でないと感じた
だったんですよ。要するに、吊り橋効果を使うときは自分の魅力が高くないと逆に嫌われちゃうぞ!ってことですね。吊り橋効果でメリットを得られるのは美男美女に限る、とも言えるでしょうか。
つまり、以上の話をまとめますと、
- 吊り橋効果はおそらく存在する(いちおう異なるメカニズムも提唱されているので、まだ確実ってわけでもない)
- ただし、その効果をうまく使えるかどうかは、こちらがわの魅力度に左右される
といった感じになります。なので、吊り橋効果につきましては、「こちらに脈がある」と確信できる相手か、すでに付き合っている相手との仲をさらに深めるために使うのがよいのではないか?と思う次第です。吊り橋効果は、用法を守ってお使いください。