今週末の小ネタ:ネットニュースをシェアするだけで頭が良くなった気になる問題、ネットのかまってちゃんってどんな人? 他人と話すときは音質が良いほうが印象がよくなる
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
私たちはネットニュースを共有するだけで頭が良くなった気になるから気をつけようね
「私たちは、共有した情報を自分の知識だと勘違いしやすいから気いつけや!」ってデータ(R)が出てておもしろかったです。
これはテキサス大学などの研究で、4つの実験で「ネット情報と主観的な知識の感覚」を調べております。ざっくり、どんな実験だったかをまとめると、以下のようになります。
- 最初の研究では、参加者にオンラインニュースを読んでもらい、その一部に、記事を好きなように共有してもらった。その後、参加者に主観的知識を測定したところ(「私はこのトピックについて他人よりよく知っている」みたいな質問に答えてもらう)、記事を共有した人は、実際に記事を読んだかどうかに関わらず、共有しなかった人よりも「自分は知識がある!」と感じていた。
- 2つ目の研究では、「共有するという行為」そのものが、「自分には知識がある!」という信念を後押ししていることが示された。
- 3つ目の研究では、参加者の一部に「自分の名前で記事を共有」と「偽名で記事を共有」というパターンにわけたところ、自分の名前で記事をシェアした場合のみ、「自分は他人より知識がある!」と思う現象が確認された。 さらに、この現象は、見知らぬ人ではなく親しい友人と共有するときに強くなった(つまり、友人に記事をシェアしたほうが、「俺は知識がある!」と思いやすい)。
- 最後の研究では、参加者に投資に関する記事を読んでもらい、そのうち半分に記事を共有するように指示た。その後、参加者全員に金融知識知識を測定する質問に回答してもらったとこと、記事を共有した人は、投資計画の演習でリスクを取りやすくなった(つまり、「俺は知識がある!」と思い込んだ人ほど、その偽の知識をベースに行動しようとする)。
ということで、私たちは、オンラインのニュースを共有することで、「自分は知識人だ!」と思い込むだけでなく、行動まで変わってしまうかもしれないわけですね。実際に記事を読まなくてもシェアだけで思い込みが増すってのは怖いですねぇ。だからネット上には、一次ソースを読まずに自信満々な人が多いのか……。
ネットのかまってちゃんってどんな人?
「ネットのかまってちゃんってどんな人?」ってのを調べたデータ(R)が出ておりました。
この研究は、347名の男女を対象にしたもので、サッド・フィッシングをする人の特性を調べたものです。サッド・フィッシングって初耳だったんですが、研究チームの定義によりますと、
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SNSで自分の感情の状態を誇張して同情を引くこと
だそうです。軽い風邪なのに「もうヤバい!終わりだ!」と騒いでみたり、軽いケンカしただけで「人生に絶望した……」と書いてみたりと、いわゆる「かまってちゃん」のことですな。
実験では、まず参加者がいつもどれぐらいサッド・フィッシングを行っているかを質問(仕事のトラブルや健康問題をネット上で誇張した経験を尋ねたらしい)。そのうえで、みんなの愛着スタイルやソーシャルサポートを測定したんだそうな。
その結果は、こんな感じになりました。
- サッド・フィッシングをする人は、不安型の愛着スタイルが強い
愛着スタイルってのは、当ブログで何度も出ているポイントで、詳しくは「あなたの性格は住む場所によって大きく変わる」をご覧ください。不安型の愛着スタイルってのは、他人から見捨てられることへの不安が大きいタイプで、相手から「コミュニケーションが重い……」と思われやすい人を意味しております。
研究チームいわく、
より不安な愛着スタイルを持つ人は、他者との関係や友情を形成するために、他者を操作する傾向が強い。
とのこと。不安型は「見捨てられたくない!」という思いが強すぎるため、ネットでかまってちゃんと化して、他人の興味を惹こうとするわけですね。「そりゃそうでしょうなぁ」みたいな結論ですね。
ちなみに、サッド・フィッシングのデメリットとして、
- 本当に助けが必要な際に断られれやすくなる(オオカミ少年状態っすね)
- 他人を操る快感に取りつかれて、どんどんヤバいやつになってしまう
のような問題も指摘されておりました。まー、不安型の愛着スタイルについては、改善しておくにこしたことがないので、心当たりがある方はお気をつけください。
他人と話すときは音質が良いほうが印象がよくなるぞ
「音声が悪い状態で話をすると印象が悪くなるぞ!」というデータ(R)が出ておりました。音声の品質が、話し手の印象を大きく左右するというんですな。
ここでは2つの実験が行われていて、
- 最初の実験では、まったく同じ講演の音声を高音質と低音質で聞いてもらい、話し手の評価をしてもらった。具体的には、講演の質、講演者の知性、講演者の好感度、議論されている研究の重要性などを評価させている。
その結果、講演の内容の良し悪しから講演者の頭の良さ、研究の重要性まで、音声の質は、リスナーの認識に全面的な影響を与えた。簡単に言えば、良い音声で聞いたほうが、「この話は重要だ!」や「この話し手は良い人だ!」などと思われやすく、高音質のほうが19.3%ほど評価が上がる。
- 2つ目の実験では、2つのラジオインタビューを選び、上の実験と同じように、高音質と低音質の両方を参加者に提示した。その結果は上と同じで、高音質の音声を聞いたリスナーは、低音質のリスナーよりも研究をより高く評価し、研究者をより有能と評価し、ラジオインタビューをより良いと評価した。
ということで、音質が高ければ高くなるほど、あらゆる面で話し手の印象は上がるらしい。
こうして見ると、ユーチューブやポッドキャストをやってるような人はもちろん、オンラインの会議が多い人などは、
- 高品質なマイクを使用する
- 高品質なネット接続を使用する
- 背景のノイズを最小限に抑える
ってあたりを守っておくと、より聞き手から好感を持たれ、頭がよい人物だと認識されやすくなるんでしょうな。また、音質をコントロールできない状況は、事前にリスナーに対して「すいません!マイクが悪くて!」などとコメントしておくと、ネガティブなバイアスの影響を避けやすくなるかもですな。
ちなみに、なんでこういった現象が起きるのかというと、そもそも人間ってのは、処理しづらい情報を嫌う生き物だからです。たとえば、過去の研究でも、
- 見やすい文字で書かれた文章ほど「これは真実だ!」という印象を与えやすい(R)
- わかりにくいアクセントや発音が難しい名前を持った人は、簡単な名前の人よりも信用されにくい(R)
- 読みにくい文字を書く人は、知的ではないと思われやすい(R)
- あまり聞かない専門用語を多用する人は、知的だと思われづらい(R)
みたいな報告が出てたりします。簡単に言えば、私たちは「メッセージの簡単さとメッセンジャーの能力には関係がある!」と思い込みやすいので、そのせいで、わかりにくいメッセージを伝える人ほど印象が下がってしまうんですよ。
ってことで、どのようなメッセージを送るにせよ、「できるだけ明確でわかりやすくする!」と心がけておくと、印象が良くなってよろしいのではないでしょうか。