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【質問】乳酸菌などを配合したスキンケアアイテムって意味がありますか?

 

 

こんなご質問をいただきました。

 

肌の微生物を最適化するという製品が増えてきましたが、これは効果がありますか?微生物を配合した商品で肌の炎症がおさまるというのですが。

 

ということで、確かに近年は乳酸菌を配合した保湿クリームや、乳酸球で発酵させた液体などを配合した化粧水が増えてきますね。

 

 

で、このブログでは、プロバイオティクスのメリットを何度も強調していて、自分でもプロバイオティクス系の商品を開発してたりするわけです。

 


ただし、これまで紹介してきたのは、あくまで口から飲むタイプのサプリメントでして、「微生物はスキンケアにも効くのでは?」って考え方については触れておりませんでした。プロバイオティクスを配合したクリームや化粧水は、美肌を保つのに役立つのか?ってポイントですね。

 

 

事実、ここ数年は、プロバイオティクスを配合したスキンケア商品が増えてまして、ディオールやランコムのような大企業も参入しているレベルなんですよ。すごいですねぇ。

 

 

ざっとおさらいすると、ヒトの腸内にさまざまな微生物が住み着いているのは有名ですが、実は体内のあらゆる部位にも、ウイルス、真菌、バクテリアなどが住みつき、独自のマイクロバイオームを形成しております。

 

 

なかでも、腸内フローラと同じぐらい重要なのが、皮膚のマイクロバイオームです。それというのも、皮膚ってのは人体でも最大の臓器でして、炎症をコントロールし、病原体をブロックするためのバリアとしての役割を持っているからです。たとえば、皮膚に住み着く善玉菌ってのは、黄色ブドウ球菌などの悪い菌をふせいでくれたりするんですな。

 

 

ところが、現代人ってのは、慢性的な炎症、ストレス、肌のpH値の変化、食生活の乱れなどが原因で、肌の微生物バランスが崩れることがありまして、その結果として、感染症、ニキビ、湿疹、酒さなどの病気が起きるんですよ。

 

 

そこで登場してきたのが、「マイクロバイオーム・スキンケア」の考え方です。これは、プロバイオティクス、プレバイオティクス(細菌のエサ)、ポストバイオティクスなどを配合したスキンケア製品の総称で、こいつを使うことで肌に住む微生物のバランスが改善し、湿疹やニキビ、乾燥肌、さらにはシワや紫外線ダメージを軽減できるかもしれないというんですな。

 

 

まだ研究の歴史が浅い分野なので、どこまでマイクロバイオーム・スキンケアを推奨すべきかはハッキリしないんですけど、プロバイオティクスによって、湿疹、ニキビ、乾燥肌の予防に役立つというエビデンスは少しずつ増えてきてはいるんですよ。

 

 

たとえば、具体的には以下のようなデータが出ております。

 

  • 2015年にシャヒドベヘシティ医科大学などが行ったレビュー(R)では、一部のプロバイオティクスは肌の水分を閉じ込め、ニキビの原因となるバクテリアのレベルを抑えるセラミドを生み出す可能性を指摘している(R)。周知のとおり、湿疹に悩みがちな人はセラミドの量が少ないので、セラミドの補充はとても重要。

 

  • 2016年のレビュー(R)では、プロバイオティクスが肌のpHを改善し、酸化ストレスを軽減し、紫外線による日焼け被害の影響を軽減し、肌の水分バリアを改善し、髪質を向上させることができると示唆されている。

 

  • 2019年のレビュー(R)では、プロバイオティクスが皮膚の老化や皮膚がんの抑制に役立つことが示唆されており、こちらも注目に値する。歳を取るほど肌のpHは上昇しやすく、そのぶんだけ悪玉菌も繁殖しがちなので、ぜひ対策をしておきたいところではある。

 

  • 2019年のレビュー(R)では、ビフィズス菌がによって、皮膚の過敏症を軽減する可能性が報告されている。研究チームは、「(ビフィズス菌は)湿疹や酒さ、または炎症を起こしている皮膚を持つ患者の症状改善に役立つ」と指摘している。

 

  • 乳酸菌を肌に塗った場合も、皮膚の炎症が抑えられ、皮膚のバリア機能を向上させ、ニキビや赤ら顔を改善する可能性も報告されている(R)。

 

というわけで、これだけ見ると「意外といいのかな?」って気がしますが、個人的には「まだ具体的な商品を買うのは早いかなー」とも思っております。その理由はいくつかありまして、

 

  • プロバイオティクスを肌に塗っても、顔のマイクロバイオームが根っこから変わるかわからない。そのため、顔を洗ったら終わりになる可能性もかなりある。

 

  • 肌の改善に必要な投与量は謎だし、菌が肌の上でどれくらいの期間生き続けるかについては、まったくわからない

 

  • 日本や韓国で使われる乳酸球菌培養溶解(乳酸菌で発酵させた液から菌体や高分子物質を除いたもの)が、本当に保湿に効くかはわからない。

 

といったところがあります。まだわからないことが多すぎて、「使ってみよう!」と言えるほどのデータがないもんですから。

 

 

まー、個人的には「マイクロバイオーム・スキンケア」には期待していて、将来には美肌の改善に役立つ可能性を秘めた分野だとは思っております。ただし、現時点では昔ながらのスキンケアを実践するのがベストでしょうねぇ。

 

 

具体的な注意点としては、

 

  • 刺激の強い洗顔料で肌をゴシゴシ洗わない:洗浄力が強い商品で肌を洗い、さらにスポンジで肌をこすってしまうと、肌のバリア機能が損なわれ、善玉菌が死滅する。なので、あくまでマイルドな洗浄剤を使い、肌でなでるぐらいの洗い方で。

 

  • 1日1回の洗顔、毎日の保湿と日焼け止めを忘れない:マイルドな洗顔、洗顔後の保湿、外出時の日焼け止めは、肌の劣化を防ぐだけでなく健康な肌のマイクロバイオームを維持するのにも役立つ。

 

  • pH値に気を配る:善玉菌は肌のpH値が適切でないとうまく繁殖できない。pH5~7の保湿剤と、pH4.5~7の洗浄剤を使うと肌のpHが最適化され、善玉菌が繁殖しやすい。


といったあたりに注意していただければ幸いです。ではまた!


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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