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今週半ばの小ネタ:五戒でメンタルが改善? ピアノを弾くとメンタル改善?ポッドキャストでメンタル改善?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

仏教の五戒でメンタルが改善するかもねー

仏教の教えのなかで、もっとも有名なもののひとつが「五戒」。仏教者が守るべき基本的な戒律を5つにまとめたもので、殺さない、盗まない、乱れた性行為をしない、悪意のある嘘をつかない、酒を飲まない、という感じになります。まー、確かにこの5つを守ってれば、心穏やかな日々は過ごせそうですね。 

 

 

では、この5つのルールは本当にメンタルに良いのか?ということで、この疑問を検証したデータ(R)が出ておりました。

 

 

研究チームは、タイの男女644人を対象にオンライン調査を実施。みんなのストレス、神経症、うつ症状のレベル、および五戒を守った生活をしているかどうかを尋ねたんだそうな。

 

 

すると、五戒を守るレベルとメンタルには明確な相関が見られまして、

 

  • 五戒を守っている人ほど、ストレスで抑うつ状態になりにくい。

 

って傾向が確認されたんだそうな。つまり、不安になりやすい人や、日々のストレスが大きい人は、五戒をしっかり守っていれば、メンタルが落ち込みにくいかもしれないわけですね。

 

 

研究チームいわく、

 

今回の研究は、うつ病の文脈で五戒の効果が期待できることを示唆するものの、因果関係を確認するものではない。

 

とのこと。要するに、うつ病になりにくいからこそ五戒を守れている可能性があるわけで、そこはご注意いただきたいところです。また、今回の調査は93.3%が仏教徒なので、他の文化圏でも当てはまるのかは謎であります。

 

 

とはいえ、五戒の実践によってメンタルが低下する可能性がありますので、日常の基本ルールとして採用してみるのも良いかもしれません。

 

 

 

 

ピアノを弾くとメンタル改善?

ピアノを弾くと脳の機能が上がる!」という、私にはうれしいデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは、楽器の経験がない31人の男女を対象にした研究で、まずはみんなを3つのグループにわけております。

 

  1. ピアノのレッスンをする
  2. 音楽鑑賞をする
  3. なにもしない

 

ピアノのレッスンは1回1時間で、これを11週間にわたって続けたうえで、視覚や聴覚といった多感覚的な情報を処理する脳の能力を調べたところ、

 

  • ピアノの練習をしたグループは、数週間で脳の多感覚処理が向上した

 

って結果だったらしい。多感覚処理力の向上は、映画を鑑賞したり、たくさんの情報から特定のものを探したりと、あらゆる日常生活に役立つ機能なので、高めておいて損はないんですよね。

 

 

ちなみに、このような認知能力の改善は、音楽を聴いただけのグループや、勉強や読書をしただけのグループには見られなかったとのこと。楽器のトレーニングで脳機能が高まるって話は昔からありますが、またひとつ有利なデータが出てきた感じですね。

 

 

さらに、ピアノを練習したグループには、認知能力の向上以外のメリットも確認されたそうで、

 

  • ピアノを練習したグループは、トレーニング後に抑うつ、不安、ストレスのスコアが減少していた。

 

ということで、ピアノによってメンタルの調子が改善する可能性もあるわけですな。その理由はよくわからんですが、興味深い話ですね。

 

 

研究チームいわく、

 

ピアノのような楽器の演奏は、楽譜を読み、動きを生成し、聴覚と触覚のフィードバックをモニターして、次の行動を調整するという複雑な作業だ。科学的に言えば、このプロセスは、視覚と聴覚の手がかりを組み合わせたものであり、多感覚トレーニングになる。

 

とのこと。あくまで小規模な研究ではありますが、ピアノだけでなく楽器の練習ってのは、脳トレとしての機能が非常に高そうな気がしております。

 

 

 

ポッドキャストでメンタル改善?

音声メディアをよく聞く人は、人生の意味が大きい!」という研究(R)が出ておりました。ポッドキャストような音声メディアの熱心なリスナーは、「他人とコミュニケーションを取りたい!」という欲求が満たされやすく、それによって人生の意味を感じているケースが多いというんですな。この研究はポッドキャストの影響だけに的を絞ってるんですが、私のような深夜ラジオリスナーには気になる研究ですね。

 

 

この研究は、イギリスやアメリカなどから、308人の男女に調査を行ったもの。参加者の、ビッグファイブ性格特性や、認知の必要性(考えることがどれぐらい好きか)などを尋ね、その結果を、みんなのポッドキャストの利用状況と比較したんだそうな。

 

 

その結果、参加者は平均して週に3.5時間、3年間にわたってポッドキャストを聴いていたそうで、熱心なポッドキャストリスナーには、以下のような結論が見られたんだそうな。

 

  • 知的好奇心が強い

  • インターネットへの好奇心がある

  • 考え事をするのを楽しむことができる

 

ってことで、ざっくりまとめると、ポッドキャストをよく聴く人というのは、「情報がもっと欲しい!」って欲求が高く、新しい話題を探求し、努力型の思考ができる人だってことですね。音声メディア好きの知的好奇心が高くて、考えるのが好きだってのはおもしろいですね。理由はよくわからんですが、確かにそんな印象もありますね。

 

 

さらに、1ヶ月あたりのポッドキャストの聴取回数が多い人には、以下のような傾向も確認されております。

 

  • 人生における意味を強く感じていた。

  • ポッドキャストのホストに親しみを感じている人ほど、社会的なつながりや所属感を求める心理的が満たされていた。

 

ということで、ポッドキャストをよく聞く人は、情報の発信者に強い親しみを感じ、それが人間の基本的な欲求を満たす方向に働いていたんだそうな。そのおかげで人生の意味の感覚まで増したわけですね。

 

 

研究チームいわく、

 

今回の私たちの発見は、ポッドキャストのような音声メディアが、リスナーに情報的・社会的満足を与えることができるという考えを支持している。我々は、情報的欲求がポッドキャスト聴取の動機となる可能性が高く、ある種の聴取が社会的満足を与えることができると結論づけた。

 

とのこと。もちろん、この研究は横断的なものなので因果関係はよくわからんのですが、深夜ラジオに熱狂的なファンがつきやすい理由の一端を示している感じはしますね。私も動画よりは音声のほうがなじみやすい感覚があるもんなぁ…。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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