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嘘研究のプロ「他人の嘘を見抜きたかったら、このテクニックを使うのがベストでしょ!」

 


人間は他人の嘘を見抜くのが苦手!って話は昔からあって、たとえば2016年の研究(R)では 「真実を語る行動」と「嘘をつく行動」を比べた100以上のデータをチェックしたうえで、

 

  • みんながよく使う「嘘を見抜く手がかり」は全部ウソ!

 

って結論を出しております。たとえば、一般的には、嘘をつく人は「視線がキョドる」「早口になる」「まばたきの量が増える」「率直に話さない」「より否定的である」みたいな印象がありますが、これらの要素は、全部ウソとは関係がなかったんだそうな。あきらかに不審そうな動きをしていても、その人がウソをついているとは限らないわけですな。

 

 

研究チームいわく、

 

 

私たちは、無邪気に見える人を信じることに慣れている。結局のところ、人は善良であるということをデフォルトで信じるのが得策なのだ。

 

 

とのこと。当然ながら、いつも「この人は嘘をついているのでは……」とか思ってたら疲れちゃうんで、たいていの人は、とりあえず相手は真実を言っているって態度でのぞむことが多いんだって話ですね。それゆえに、私たちは他人を信じがちなわけですな。

 

 

 

ちなみに、現在のところ、アメリカの警察などは、「嘘をついている可能性を示す92以上のシグナルを見分けよう!」みたいなトレーニングが行われてるらしいんですが、アムステルダム大学のブルーノ・ヴェルシュエール先生いわく、

 

そもそも92以上のシグナルに気を配ることができるはずがない。人は短時間ですべてのシグナルを評価することはできないし、ましてや複数のシグナルを統合して正確で真実味のある判断をすることもできない。

 

とのこと。確かに、過去の研究でも、トレーニングされた人でも他人の嘘を見抜ける確率はとても低いって結論が出てるので、そりゃそうだよなーって気がしますが。

 

 

では、どうすればいいのかってことで、上記のヴェルシュエール先生がおもしろい実験(R)をしてくれてました。これがどんな実験だったかと言いますと、

 

  1. 1,445人の男女を集め、「キャンパスで運動した」「友人のロッカーから物を盗んだ」といった大学で起きた出来事を描写した文書、動画、インタビュー映像を見てもらう。ここには、真実の話と嘘話の療法がふくまれている。

  2. みんなには、動画やインタビュー映像を見ながら、「自分の直感を頼りに嘘を見抜いてください」と指示する。

  3. その際に、「いろんな手がかりに注目してください」と指示するグループと、「話がどれぐらい細かいかだけに意識を集中させてください」と指示するグループにわける。

 

みたいになります。ここでは9つの実験が行われてますが、おおまかなデザインはだいたい同じですね。

 

 

すると、実験の結果はこんな感じになりました。

 

  • 多くの嘘の手がかりに注目するよう指示されたグループは、嘘を見抜く確率が偶然の一致と変わらなかった。

 

  • しかし、「話の詳細度だけに注目してください」と指示されたグループは、嘘を見抜く確率が59~79%の範囲で上昇した。

 

だったそうです。従来の方法とは異なり、嘘を見抜く際は「話の詳細さ」にだけ的を絞ったほうがよいのではないか、と。

 

 

ここでいう「話の詳細さ」ってのは、

 

  • エピソードのなかで、人物、場所、行動、日時などがどれぐらい含まれているか?

  • エピソードに具体性はあるか? 豊かな描写ができているか? 感情表現ができているか?

 

ってあたりを意味しているんだそうな。とにかく、視線とか態度に意識を向けるよりは、話のディテールに気を配ったほうがよいってことですな。確かに、嘘話をするときに、いちいちディテールを考えるのは大変だもんなぁ。

 

 

研究チームいわく、

 

1つのよい手がかりに頼ることは、多くの手がかりを使うよりも有益であることが、私たちのデータにより示された。真実を語る人は、実際にその出来事を体験しているからこそ、豊かな描写ができる。嘘をつく人は、詳細を思いつくことはできても、それをうまく語ることはできない。

 

この戦略は、被験者に「この実験は嘘を見抜くのが目的だ」と伝えた場合でも有効だったため、エピソードの詳細度で嘘を判断する手法が、バイアスの影響を受けづらいことを示している。

 

とのこと。つねに「この人は嘘をついてるのか?」と思いながら話を聞くのはしんどいですが、「この人の話はディテールが豊富か?」と考えるだけなら楽でいいですね。

 

 

ちなみに、このブログでは他にも嘘についてはいろいろ書いてまして、

 

 

 

みたいな話を取り上げたことがありました。今回の手法は、従来の考え方よりシンプルなので、日々のコミュニケーションツールのひとつとして押さえておくとよいかもですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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