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今週末の小ネタ:スマホでうまく本を読むコツ、「有名人ストーカー」になりやすい人、認知症にかかりやすくなる薬


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

スマホで本を読む人は「ため息」をつけ!

電子書籍って読解力が下がるんじゃない?」って調査(R)がおもしろかったんでメモ。

 

 

これは昭和大学などの先生による試験で、34名の大学生が対象。どんな実験だったかと言いますと、

 

  1. 村上春樹の『ノルウェーの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の一部を、みんなに読んでもらう

  2. その際に、スマホか紙のどちらかで読むように指示する

  3. 読書中の脳の活動をヘッドバンドで記録する

  4. 最後に、小説に関する質問に答えてもらって読解力をテストする

 

みたいになります。電子か紙かのどちらかで小説を読んでもらいつつ、どっちのほうがしっかり読めたかを調べたわけですね。

 

 

でもって、結論はこんな感じです。

 

  • 紙で読んだ方が、スマホより読解力のスコアが高かった

 

  • 紙で読んだときの方が、スマホよりも「ため息」の数が多かった(1回の呼吸の深さが通常の呼吸の2倍)

 

  • スマホで読むときの方が、前頭前野の活動が高まった

 

  • 前頭前野の活動が高くなるほどため息の回数が減り、これが読解力の低下につながっていた

 

電子より紙の方が読解力が上がるって話は昔からあったんですが、ここで面白いのは「ため息」の回数が読解力と連動しているって結果が出たところですね。

 

 

なぜ「ため息」と読解力に関係があるのかと言いますと、

 

  1. 読書をすると脳をよく使うので、前頭前野の活動が上がる

  2. 前頭前野の活動が大きくなると、どんどん頭が疲れてくる
  3. ここで深いため息をつくと、脳が休憩を取ることができ、機能が回復する

 

って仕組みだそうです。なんでも、過去の研究でも、たいていの人は頭をよく使うほどにため息の回数が増えることがわかってるんだそうな。うーん、面白い。

 

 

では、なんで電子だとため息の回数が減るのかってことですが、「スマホは明るいから脳が覚醒状態になり、そのせいでため息が低下するのでは?」ってことらしい。スマホは脳を覚醒させすぎて、これが読解力の低下をもたらすのではないかってことですな。

 

 

そう考えると、

 

  • Kindleみたいに、明るくない電子書籍リーダーを使えば問題はないのかも?

 

  • スマホを使っていても、意識して深呼吸をすれば読解力が上がるのかも?

 

って感じもしてきますね。スマホで電子書籍を読むことが多い方は、お試しあれー。

 

 

 

 

「有名人ストーカー」になりやすい人の共通点

有名人のストーカーになりやすい人の特徴とは?を調べた研究が出ておりました(R)。

 

 

これはアメリカの大学生596名を対象にした調査で、みんなに「ヤバいファンの特徴を集めたテスト」をやってもらい、自分がどれぐらい当てはまるかを採点してもらったんだそうな。ちなみに、このテストには、

 

  • 有名人を尾行したことがあるか
  • 有名人の宿泊先で出待ちしたことがあるか
  • 有名人の家に行ったことがあるか

 

みたいな文章が並んでまして、この質問にイエスと答えた量が多い人ほど、「有名人のストーカーになりやすい!」と判断されるわけですね(当たり前ですが)。

 

 

その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • 有名人の心理をいろいろと推測する人ほどストーカーになりやすい!
  • 有名人のことを知ろうと、ガンガンに情報を集める人ほどストーカーになりやすい!
  • すぐに退屈しちゃう人ほどストーカーになりやすい!

 

って感じだったそうな。まー、「心理を勝手に推測」とか「情報を集める」とかは当たり前ですが、「退屈しがち」ってのは、ちょっとおもしろいポイントですね。

 

 

なぜ退屈とストーキングに関係があるのかは謎ですが、おそらく「普段は退屈しているだけに、いったんハマると手がつけられなくなるのでは?」みたいな推測がなされておりました。言い換えれば、ストーカーになりやすい人は興味の幅がせまく、そのせいで、いったん気になった相手には暴走気味になるんじゃないかってことですな。

 

 

 

認知症にかかりやすくなる薬があるぞ!

認知症にかかりやすくなる薬があるぞ!って研究(R)が出ておりました。

 



これはノッティンガム大学などの研究で、「抗コリン薬」と認知症のリスクとの関連性を分析したものです。こいつはアセチルコリンと呼ばれる化学伝達物質を阻害するクスリで、筋肉を弛緩させたり収縮させたりする作用があるんで、膀胱の病気、胃腸障害、パーキンソン病などに処方されるケースが多めっすね。

 

 

で、研究チームは、認知症の人58,769人と認知症のない人225,574人の医療記録を分析。そのうえで、

 

  • 抗コリン薬全般は、認知症リスクの上昇と関連していた。

 

  • より具体的には、抗コリン作用のある抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、膀胱治療薬、てんかん治療薬が、最もリスク上昇に関連していた。

 

  • 55歳以上で強い抗コリン薬を少なくとも3年間日常的に服用している人は、使用していない人に比べて、認知症を発症する確率が50%近く高い

 

との結論を導き出しております。これらの結果は、BMI、喫煙状況、飲酒などの変数で調整しても変わらなかったそうな。50%ってすごいなぁ。

 

 

研究チームいわく、

 

この研究は、医師が抗コリン作用のある薬を処方する際に注意すべきことを示す。しかし、この種の薬を服用している人は、急に薬を止めないことが重要だ。急に投薬を止めるなら、その方がより有害である可能性がある。

 

もし心配になるのであれば、医師と相談し、自分が受けている治療の長所と短所を検討するべきだ。

 

とのこと。抗コリン薬の問題については昔から言われてたので、今回の結果も驚きではないんですけど、だからといってすぐに投薬中止だ!って話にはならないのでご注意ください(あくまで観察研究だし)。

 

 

とはいえ、やっぱ抗コリン薬は注意が必要だよなーって結論は変わらないんで、私も注意しておきたい所存です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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