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幸福研究の専門家「お金の喜びも解雇の苦しみも大したことないんだから、人生の出来事は気楽にとらえておこうぜ!」

 

人生ってどんなことがあれば幸せになれるの?」ってのを調べた研究(R)が出ていたので、内容を簡単にメモっておきましょう。例えば、「結婚した!」とか「お金をゲットした!」みたいな人生の出来事により、私たちはどれぐらい幸福を得ることができ、その変化はどれぐらい続くのかってのを調べたわけですな。

 

 

これはシドニー工科大学の調査で、オーストラリアに住む7682世帯から、1万3969人を対象にしたもの。このデータは、全員を16年間ほど追跡したもので、「健康」「結婚」「出産」「昇進」のようなライフイベントによって、みんなの幸福度がどれぐらい変わるのかをチェックしたデータがふくまれております。

 

 

ちなみに、ここでは人間の幸福を2つの種類に分けてまして、

 

  • 幸福度:私たちの日ごろの生活で、どれぐらいポジティブな感情を抱くことができるかを意味するポイント。このタイプの幸福は、大人になってからもかなり安定している傾向があり、長期的に見れば、たいていは一定のレベルの幸福感にもどる。

 

  • 満足度:自分の人生で、どれぐらいのことを達成できたのかを意味するポイント。そのため、「仕事で大事なプロジェクトを達成した!」ってライフイベントが起きた場合、それにより満足度は上がるが、そのせいで家庭が壊れて幸福感は損なわれることもある。

 

みたいになります。つまり、幸福度と満足度は、つねに同じ方向で幸福に影響を及ぼすわけではなく、その効果の大きさも異なることが多いわけですな。

 

 

では、以上をふまえたうえで、どのような傾向が確認されたかチェックしてみましょうー。

 

 

  • 良い出来事も悪い出来事も、幸福度の変化は一時的なもので、通常3〜4年後には消えてしまう。その後の、幸福度は、個人の初期設定値にもどる。つまり、人間はどんな幸福にも不幸にも、わりと早く適応する。

 

 

  • 「配偶者の死」のような、非常に悪い出来事が起きた後でも、一般的に2~3年で幸福度は回復する。これは、その経験による痛みがなくなったということではなく、再び幸せを感じられるようになったということだと思われる。

 

 

  • 良い出来事はいくつも起きても、それが積み重なって幸福の総量が増えるわけではない。結婚、退職、出産、経済的な利益などは、すべて一時的にしか人生全体の満足度を向上させない。

 

 

  • とはいえ、悪い出来事が幸福に及ぼす有害な影響は、良い出来事が及ぼすポジティブな影響を上回り、マイナスの影響はより長く続く。これは、ほとんどの人が通常は幸せで満足な生活を送っているため、良いことよりも悪いことを感じやすいことが原因になっていると思われる。

 

 

  • 人生への影響が特に大きいバッドイベントには、大事な人の死、経済的損失、怪我、病気、別居などがある。

 

 

  • 子供を授かった場合、出産直後は、両親の満足度は高いが幸福度は低い(これは、シンプルに赤ちゃんの世話が大変だからだと思われる)。

 

 

  • 「新しい仕事につく」「昇進する」「解雇される」「家を引っ越す」などのイベントに対して、多くの人は、「これは私の人生に大きな影響を及ぼすはずだ!」と思いがちである。しかし、平均してみると、これらの出来事は幸福感にそれほど影響を与えず、その影響もわりと小さめで、一般には一瞬で終わる。

    ただし、これは人間にとって仕事が重要でないという話ではなく、人によって「退職」や「昇進」の意味合いが異なるからかもしれない。例えば、人によっては「会社をクビになる」体験は悲惨なことかもしれないが、別の人にとっては「多額の退職金を受け取った!」おかげでポジティブな経験になるかもしれない。

 

 

  • つまり、ポジティブな経験だけで幸福を追い求めてしまうと、人生は徒労に終わる可能性がある。もしポジティブな経験が人生に影響があったとしても、結局は私たちの幸福は、自分のベースラインに戻ってしまう。

 

 

  • そう考えれば、人生には悪い出来事の方が影響が大きいため、ディフェンスに意識を向けたほうがいいかもしれない。そのために最も重要な要素は、強い人間関係の維持」「健康状態の維持」「金銭を無駄に失わないように管理する」などである。

 

 

ってことで、ざっくり見てみましたが、すべてをひっくりめて考えると、

 

  • 悪く考えれば、あらゆるポジティブな出来事がもたらす幸せはとてもはかない。
  • 良く考えれば、私たちはどんなネガティブな出来事がもたらす不幸からも、割とすみやかに復帰できる。

 

といったことになりましょうか。個人的には、人生の不幸に対する希望をもたらすデータのようにも感じましたが。

 

 

もちろん、なかには「おい!俺はネガティブな出来事を何年も引きずってるぞ!」って方もおりましょうが、その場合は、自己批判の傾向が強かったり、反すう思考の強さが問題になっているのかもですな。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。