最強エクササイズ?『HIIT』に関するよくある3つの誤解
当ブログにいただく質問の中で、特に量が多いのがHIITだったりします。このブログでは、過去に何度もHIITって運動法を取り上げて来ましたが、シンプルなだけに誤解も多い運動法なんですよ。
ってことで今回は、これまでいただいたご質問の中から、「これはHIITについてよくある誤解だなー」と思われる質問をチェックしておきましょう。
よくある質問1. HIITはどんな運動と組み合わせてもいいですか?
HIITといえば有酸素運動で行うことが多いんだけど、スクワットや腕立て伏せなどでやってもいいのか?みたいな疑問です。
で、この問題に着いては、「HIITに筋トレを組み合わせたら、もっと効果が上がるんじゃないの?」って説はあるし、筋トレの初心者ならHIITで筋肉が増えることもあるんですが、基本的には有酸素運動で行うものだとお考えください。
というのも、いままで行われたHIITの研究ってのは、9割以上が有酸素運動だけに焦点を当てたものなんですよ。つまり、インターバルトレーニングの効果ってのは、有酸素運動をメインに検証されているわけでして、それ以外の実験ってのはほぼ行われていないんですよ。
なので、研究の世界でHIITが使われるときは、だいたい以下のような定義で使われることが多めであります(R)。
- 1~5分間の範囲で、最大心拍数の少なくとも80%以上の有酸素運動を行う。
- 高負荷な有酸素運動の間に、休息またはそれほど強くない運動をはさみ、これを交互に繰り返す。
おそらく、ここでもっとも大事なのは「最大心拍数の少なくとも80%」ってとこでしょうね。HIITには心拍数で厳密に定義されてるんで、筋トレだと、この基準を満たしづらいんですよねー。ご注意ください。
よくある質問2. HIITはダイエットに最適ですか?
一部には「HIITで体脂肪が燃えまくる!」「HIITで激ヤセ!」みたいな主張もあるんですが、結論から言えば、
- HIITのダイエット効果は期待するな!
って感じになります。
確かに、HIITで効率よくカロリーを消費できるのは間違いなく、たとえば「20分のHIIT」と「50分のゆっくりした有酸素運動」を比べると、カロリーの消費量は同じぐらいになることがわかってたりします。というとHIITでダイエットできそうな気もしますが、実際にはそんなことはありませんで、
- 2019年に行われた系統的レビュー(R)では、HIITのダイエット効果を中レベルの有酸素運動と比べたところ、「どんな運動法でも、脂肪の減り方は同じだぜ!」って結論を出している。
って結論が出てたりするんですな。いかにHIITのカロリー消費効率が良いとしても、短時間しかできない運動なので、多くのカロリーは消費できないんですよね。
というか、そもそも運動で体重を落とすのは超難しいので、HIITにこだわらずカロリー制限に気を配ったほうが実りが大きいんじゃないかと思う次第です。
よくある質問3. HIITは体力アップの最強トレーニングなんですか?
HIITの最も検証が進んでいるメリットといえば「体力アップ」。より正確には「心臓の健康の改善」のメリットは、かなりのところまで実証されていると言って良いでしょう。簡単に言えば、
- 低負荷の有酸素運動と比べて、HIITは少ない時間で心肺機能を高めることができる!
- VO2MAX(最大酸素消費量)が向上する!
ってのは“ほぼ確”だとお考えください。中でも、VO2 maxってのは、アンチエイジングを予測するベストな因子の1つだったりします。有酸素運動が得意な人ほど、心臓が血液を送り出す能力が高く、それゆえに体力が尽きるまでの時間が長くなり、これが心臓病の予防につながっていくんですな。
ただ、だからといって「HIITは体力アップの最強トレーニングなのか?」と言われれば微妙でして、
- 2016年の研究(R)では、「10分間のインターバルトレーニング」と「50分間の普通の有酸素運動」を12週間にわたって比べたら、酸素摂取量の改善は同じだった。
- 99名の参加者を対象にした試験(R)では、「2週間で7回のHIIT(10×1分)」と「週150分の普通の有酸素運動」を比べたところ、どちらの運動も体力の上がり方は同じだった。
みたいになります。もちろん、短時間で効果が出るのはHIITのすばらしさではありますが、結局のところ、軽い運動を長めにやった場合でも似たような効果は得られそうでして、このあたりはシンプルに好みの問題と言えましょう。つまり、「辛い運動でもいい!俺には時間がないのだ!」って人はHIITをやればいいし、「時間がかかってもいいから、もうちょい辛さは抑えたい!」って人は普通の有酸素運動をすればいいんじゃないでしょうか。
ちなみに、ラトガース大学などの研究(R)だと、アメリカで10年におよぶ怪我の記録データを分析した上で、
- HIITを行う人は、特に膝や肩の怪我のリスクが高い!
- 年間で平均50,944件の負傷が着実に増加している
と報告しております。研究チームいわく、
HIITは万能なエクササイズ法として宣伝されている。しかし、多くの人、特にアマチュアは、これらのエクササイズを行うための柔軟性、可動性、体幹の強さ、筋肉を持っていない。
とのことでして、安易なHIITの使用に警鐘を鳴らしておりました。まぁ、そこまで難しい運動を使わなければ、極端にケガのリスクが上がるとも思いませんけど、HIITの後半はどうしてもフォームが乱れがちになっちゃいますからねぇ。そこらへんの問題を考えると、HIITが手放しで最強とは言えないところではあります。