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弱々なメンタルをガッツリ改善する「ストップ&シンク」トレーニングとは?


 

「ストップ&シンク」トレーニングが感情の調整に効くぞ!みたいなデータ(R)が出ておりました。「ストップ&シンク」は認知行動療法で使われてきた手法で、たいていは無駄なネガティブ思考を止めて、置き換えるやり方を使います。

 

 

その方法はいろいろあるんですけど、定番のやり方はこんな感じです。

 

  1. 思考を止める:「自分はダメだ!」「こんなことできない!」みたいなネガティブ思考や感情がわきあがったら、すぐに「ストップ!」と自分に言い聞かせるか、心の中でストップサイン(交通標識の一時停止サインみたいなやつ)をイメージする。ほかにも、その思考を一時的に脳内の箱に閉じ込めたようにイメージしてみるのもよい。

  2. 思考に気づく:脳内にわきあがった思考を抑えようとはせず、ひたすらその存在を認める。

  3. 思考を置き換える:そのネガティブな思考が、現実を反映しているかどうかを考える。「この考え方以外にどんな選択肢があるのか?」「この考え方は現実的か?」「この考え方が正しくないことを証明するような事実はないか?」みたいな感じ。たとえば、「こんな仕事は難しすぎるからできない!」みたいな思考がわきあがったら、「以前に似たような作業をやり遂げたことはないか?」「自分が本当にこの仕事をできない確率は何パーセントか?」「他人に聞いてみたらどうなるか?」とか考えて、もっと現実的な思考に切り替えてみるわけです。

 

こんな感じで、自分の思考をいったん棚上げして、もうちょい現実的な考え方をしてみるわけです。これによって自分のネガティブな思考に気づき、役に立たない思考パターンを変えて、より役に立つ思考に心を向け直すんですね。

 

 

でもって、新しく出た研究も「ストップ&シンク」に関するもので、軽度〜中ぐらいの大うつ病の診断を受けた男女60名を対象にしております。実験では、まずは参加者を半分にわけたうえで、

 

  1. 目標管理トレーニング:自分の目標をしっかり計画して、どうやって目標に進むのかを考えるエクササイズ。このトレーニングには、「ストップ&シンク」トレーニングも含まれており、セルフモニタリングの能力を養うのが目的になる。

  2. コンピュータートレーニング:オリジナルの認知訓練アプリを使い、注意力、記憶力、処理速度などの基本的な脳の機能をアップさせる。

 

って2種類のトレーニングのどちらかに割り振って、6ヶ月後の様子をチェックしたんだそうな。すると、みんなにどんな変化が出たかと言いますと、

 

  • 目標管理トレーニングでも、コンピューターによる認知トレーニングでも、時間とともに鬱の症状が減った。「ネガティブな感情を受け入れたくない!」って気持ちも、どちらのグループとも時間の経過とともに改善した。

 

  • しかし、「ストップ&シンク」によるトレーニングを行ったグループのみが、自分の感情をはっきり認識できる能力が改善していた。

 

  • 感情をはっきり認識する能力の改善は、終了後6ヶ月経っても確認された。

 

ということで、「ストップ&シンク」を習慣にすると、自分がどのような感情を抱いているのかをよく理解できるようになり、そのおかげでメンタルのコントロールがうまくなるんじゃないかってことですな。研究チームいわく、

 

メタ認知的な「ストップ&シンク」の戦略を使うことにより、いま起きているトラブルのモニタリングを行うことは、目標管理トレーニングのもっとも重要な側面である。これらの要素は、目標管理トレーニングの後に観察された、感情コントロール能力の長期的な改善をもたらすために不可欠であったと思われる。

 

とのこと。もちろん、これはかなり小規模な研究だし、介入を受けない対照群もないしで、これをもって「ストップ&シンク」のすばらしさを持ち上げるわけにはいかんのですが、自分のネガティブな思考と感情をモニタリングできる能力が大事なのは確実なので、そこは意識しておいてもいいでしょうね。

 

 

ちなみに、「ストップ&シンク」については、「うまく使わないと副作用が出ちゃうかもしれないよ!」って報告もあるので、そこらへんも押さえておくとよいでしょう。2010年にイェール大学が行った研究レビュー(R)によると、より現実的な思考をうまく考えずに、ただ思考を抑え続けてしまうと、より抑うつや不安が増えてしまうとのことであります。

 

 

また、一部の専門家は、強迫性障害(OCD)には思考の停止で副作用が出る可能性も指摘してますんで、そこもご注意ください。一時的にでも思考を強引に止めてしまうことで、逆に強迫観念が増大しちゃうかもしれないらしい。これも困ったポイントですね。

 

 

また、思考を停止させただけで、そのあとで思考の置き換えを行わないと、逆にネガティブな思考が増えちゃう可能性もありますので、そこもご注意ください。あくまでも、いったんネガティブな思考を棚上げしたうえで、その思考の内容を置き換えていくのが「ストップ&シンク」のポイントですんでー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。