AI分析の結果「1日3分のダッシュだけで癌で死ぬリスクがガンと下がるぞ!」
このブログでは、10年ぐらいずっと「運動だ!運動をするのだ!」と念仏のようにくり返してまして、
みたいな話を書いてまいりました。もちろん「どれぐらいの運動量がベストか?」ってのは人によって変わってくるものの、だいたいは1回30分〜50分ぐらいの軽いエクササイズをしておくと、おそらく無闇に体を老化させずにすむのではないかと。
ただ、新しいデータ(R)は、運動が嫌いな人には良いニュースでして、
- 1日に3分間のダッシュをすれば、他の運動をしていなくても、あらゆる癌で死亡する確率が約30%下がる
みたいな結論になってていい感じでした。1日たった3分の早歩きでいいってのは、いかなる運動ぎらいでも言い訳できないレベルっすね。
まぁ「運動ががんリスクを下げる」ってのは昔からよく言われていて、2016年の大規模なレビュー(R)でに、定期的な運動をする人は、乳がん、胃がん、膀胱がん、結腸がん、血液がんなど、一般的な13のがんを発症する可能性が大幅に低下すると報告してたりします。ただし、これらの研究のほとんどは、「1日30分以上の運動をほぼ毎日行う人たち」しか対象にしていないので、「そんなに運動するのはめんどいな……」と思う人もめっちゃ多かったんですな。
が、実際には、「もう少し少なめな運動でも意味があるのでは?」って考え方も昔からありまして、そこらへんを調べる先生も増えてきたんですよね。 ってことで、この研究でどんなことをしたかと言うと、
- 運動をしたことがないと答えた22,000人以上の男女の活動量を調べる
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人工知能を使ってデータを分析し、人々の動きのパターンを1秒ごとに分解。日常のなかで急激に活動量が上がったタイミングを抽出する。
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その後、7年の医療記録を調べ、13の癌の診断に注目して癌の死亡リスクを計算。
みたいになります。AIを使うことで、人間の活動を秒単位で分析できるようになったんですねぇ……。
で、その結果なにがわかったかと言いますと、
- 1日に少なくとも3分間ほど激しく体を動かした人は、それ以外の時間はなんも運動をしなかったとしても、癌で早死にする確率が約30%低かった。
って感じだったらしい。「激しく体を動かす」ってのは、たとえば階段を駆け上がったり、電車に乗るために走ったりと、日常のなかで強度が高い運動をすることを意味してます。
このような運動のことを、研究チームはVILPAと読んでいて、これは「Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity」の頭文字をとったもの。ざっくり訳せば、「ときどき行われる日常の激しい活動」ぐらいの意味で、わざわざジムで運動するのではなく、日常的な行動の負荷を大きくするだけでも、十分に癌を抑える働きがあるんじゃないかってことですね。
さらに、この研究では、他にもいろんな知見が得られてまして、
- どんなタイプのVILPAでも癌のリスクは減る(坂道ダッシュだろうが、階段駆け上がりだろうが、どんなものでもいい)
- なんなら、1日1分以下のVILPAでも癌のリスクは減る。
- ただし、癌を減らすためのスイートスポットは、あくまで「1日3〜4分の激しい運動」である。それ以上のVILPAを行うと、さらに癌の死亡リスクは低下し続けたが、「1日3〜4分」を超えたところから、リスクの低下スピードは遅くなる。
みたいになります。激しい運動をすればするほど癌リスクは下がるものの、「1日3〜4分」あたりが最も効率のよいラインじゃないかと言えるわけです。
もっとも、だからといって、その他の運動をしなくてもいいってわけじゃないので、そこはご注意ください。研究チームいわく、
この結果は、その他の運動をやめて、1日に短距離走を1、2回するべきだという意味ではない。また、データの分析は相関関係を示しただけで、VILPAが直接癌の症例を減少させるかどうか、あるいはどのように癌を予防するかについては示されていない。
活動の結果としての体力、免疫システム、身体の炎症の変化が、おそらく一役買っているのだろうが、くわしいところはまだ不明だ。
とのこと。この研究は癌の死亡率だけに焦点を当てたものなので、それ以外の健康効果についてはわからないのでご注意ください。おそらく何もしないよりは1日3分だけダッシュしたほうがよいとは思うものの、癌以外のメリットについては不明なんで。
とはいえ、このデータを見ると、「わざと仕事に出る時間を送らせて、駅まで猛ダッシュする時間を3分だけ作る」みたいなやり方でも、癌死亡リスクはガッツリ下がるかもしんないですね。