「勉強は遊びながらしたほうが効果が高い!」はどこまで本当なの?を調べたメタ分析の話
ちょっと前に、モンテッソーリ教育の効果を調べたデータをチェックしたわけです。モンテッソーリ派、100年ちょいもの歴史を持つ教育法で、以前の文章を引用すると、
超ざっくり言うと、モンテッソーリは、体験型の遊びを通して子どもたち学習させる手法で、ほとんどのクラスは、個人または小グループで実施。
子どもたちは、与えられたおもちゃで自由に遊ぶことができるし、特にご褒美や罰のようなものはないし、教師も援助はするもののほぼ直接的な指導はしないしで、自立的な活動を推奨するのがポイントですね。
って感じです。このほかにも、モンテッソーリ教育のポイントを並べておくと、
- 年齢が入り交じった混合クラスで教育を行うことも多い。どの年齢でも、机を並べたり、座席を決めたりすることはなく、生徒は自由に教室を動き回り、何に取り組むかを選択できる。
- 成績の評価はしないし、宿題を出さないこともほとんど。年少の子どもたちは特別に開発された教材を自由に選び、年長の子どもたちは大規模な研究プロジェクトに参加し、クラスで発表したりする。
といったケースもあります。まぁこの説明はかなり雑いので、さらに細かいことを知りたい方は、日本モンテッソーリ教育総合研究所や「モンテッソーリ 子どもの家」などをご覧ください。
まぁ日本だと幼稚園児を対象にしたモンテッソーリスクールがほとんどなんですけど、世界ではかなりメジャーな教育法で、大学やコミュニティカレッジもふくむ何千もの専門機関があったりします。普通の学校が採用している伝統的な教育に代わる教育法としては、おそらくトップクラスで有名なはず。
ただし、有名だから効果があるとは限らないわけで、果たして、伝統的な教育よりも優位性があるのか?って点については、まだはっきり言えないところも多かったわけです。なんだかんだで伝統的な方法にも魅力はありますからね。
ということで、前回チェックしたデータは割とゆるめでしたが、新たに発表された研究(R)は、「モンテッソーリ教育の効果をメタ分析でガッツリ調べてやったぜ!」って内容になっていて、興味がある方には、かなり参考になる内容じゃないでしょうか。
これがどのような研究だったか、ざっくりまとめておくと、
- 過去に行われたモンテッソーリ教育に関する2,000件を超える研究の中から、最も厳密な32件を評価。採用されたのは、アメリカ(18件)、トルコ(4件)、スイス(3件)、イギリス、フランス、マレーシア、オマーン、イラン、フィリピン、タイの8カ国。
- 研究の対象となった生徒の年齢層は、未就学児から小学生、中学生、高校生まで幅広く、貧しい家庭から裕福な家庭の人までを含んでいた。
- 評価にあたっては、モンテッソーリ教育と伝統的な学校の生徒を比べて、学業、社会性、メンタルなどの側面で、どっちのほうがより良い結果をもたらすかを測定した。
みたいになります。かなり真正面からモンテッソーリ教育のメリットを比較してくれていて、よろしいですねー。
では、結果を見てみましょうー。
- 大きな結論としては、モンテッソーリ教育には、伝統的な教育と比べてポジティブな利点があるっぽい。
- モンテッソーリ教育を受けた生徒は、伝統的な教育を受けた生徒よりも、6年生までに平均して1学年分の学力が伸びた。
- 最もモンテッソーリ教育の効果が大きかったのは、国語、算数、一般的な学力で、理科や社会では顕著な効果は見られなかった。
- モンテッソーリ教育を受けている生徒は、伝統的な教育を受けている生徒に比べて、自制心やワーキングメモリーなどの 実行機能が強く、全体的に前向きな学校生活を送っていた。
- 創造性については、モンテッソーリの生徒と伝統学習の生徒の間に有意な差は見られなかった。
- モンテッソーリ教育の効果は、中高生に比べて、就学前や小学生のほうが影響は大きかった。
ということでして、このデータだけを見る限り、モンテッソーリ教育には中〜大程度の効果があるようでして、個人的にも「おおー、予想したよりもメリットが大きい!」って印象でしたね。
まー、当然ながら、この研究にも限界はあって、なかでも大きいのは「モンテッソーリ教育の実施方法がバラバラすぎでは?」ってところでしょうね。今回レビューされた研究のいくつかは、それぞれの学校が、どんな感じでモンテッソーリ・メソッドを使っているのかを明らかにしていないし、モンテッソーリの原則から明らかに逸脱しているものもいくつかあるんですよねー。これを考えると、結果にバイアスがかかっている可能性も十分にありましょう。
とはいえ、近年は、「『遊び』の要素があったほうが子どもの教育には良いのでは?」って知見も増えてきてまして、私としてもモンテッソーリ教育は悪くないんじゃないかなぁ……ぐらいに思ってますが。