【質問】パレオダイエットでは豆を控えますが、豆系のお茶は飲んでいいんですか?
こんなご質問をいただきました。
パレオダイエットでは、豆類は控えますが、黒豆茶や小豆茶などのお茶なども控えたほうがよろしいのでしょうか?
ということで、豆系のお茶についてどう考えるのかってことですね。
で、この問題については、まず私の立場をハッキリさせといたほうが良くて、個人的に豆類についてどう思っているかと言いますと、
- 豆類、別に食べてもいいんじゃないですかー?
って感じなんですよ。確かに、豆類を避けるパレオダイエッターは少なくないものの、私の場合は、ソイラテとか好きだし、枝豆とか大好物だしで、普通に食ってるもんで。
では、なぜ「パレオダイエット=豆はダメ」って話があるのかと言いますと、パレオダイエットの中興の祖であるコロラド州立大学のローレン・コーデイン博士が、自著(R)のなかで、「原始人は豆とか食べてなかったし、抗栄養素も多いから食べちゃダメ!」と指摘したのに端を発しております。旧石器時代は豆を食べる習慣はなかったはずだから、人体は適応してないはずでしょ!って主張を展開したわけですね。ちなみに、「抗栄養素?なにそれ?」という方は、「野菜に入ってる悪い成分?「抗栄養素」入門」をご参照ください。
その後、この考え方はパレオダイエッターの定説になりまして、いまもガチ勢のなかでは豆を控える人も少なくなかったりします。専門の先生にこう言われたら、信じたくなりますもんねぇ。
が、しかし、コーデイン先生の本はもう10年も前のものでして、その後に人類学や栄養学の世界で出てきた知見は取り入れられてないんですよ。たとえば、デューク大学の人類学者チームは、狩猟採集民の食生活をあらためて調べた2018年のレビューでは、こんなことを言っておられます。
狩猟採集民の食生活の多様性は非常に大きく、普遍的な食生活はほとんどない。(中略)狩猟採集民の食生活については、「多様性」こそが唯一のルールだ。世界中のあらゆる地域で、人間の食事は、地理と地域の生態系に左右されている。
これまでに行われた調査データを見直すと、みんな地域によっていろんなものを食べているとしか言いようがなく、「これぞ狩猟採集民の食生活!」と呼べるようなものは選びようがないんだ、と。まぁ狩猟採集民は身の回りにあるものしか食べられないから、その食生活が単一でないのは当然でしょう。
事実、ベネズエラのヒウイ族を調べた研究(R)など見ていると、普通に野生のマメ科の食物などを食べているとのこと。どうやら、コーデイン先生が主張したほど、豆類ってのは人類史において例外でもなかったみたいなんすよ。
さらに、最近では、原始人の骨の同位体や炭化植物遺体を調べる研究(R,R)なども増えまして、やはり初期の現生人類たちも豆類やらデンプン質の根茎屋良、ガチのパレオダイエットではNGとされる食品を普通に食べていたそうな。もちろん、これらの中には、食べると不味かったり、下ごしらえをしないと有毒だったりするものも多いんですが(R)、旧石器時代の祖先たちも、普通に食品を解毒処理していたらしい。うーん、人類すごい。
つまり、話をまとめると、
- 原始人も普通に豆類を食べていた。
- 狩猟採集民も豆を食べている。
- 抗栄養素の問題も普通にクリアしていた。
みたいになります。ついでに言えば、ブルーゾーンで暮らす人々も、豆を日常的に食べつつ100歳の高齢ライフを楽しんでいるケースが多いですからねぇ。「絶対に食べるべき!」ってほどではないかもしれませんが、こう考えると、普通に豆類もパレオな食材と言えるんじゃないかと。まぁパレオダイエットってのは、「原始人や狩猟採集民の良いところを取り入れようぜ!」って考え方なので、その後のデータで新たな事実が分かれば、それに応じて変えていくべきでしょう。
ちなみに、豆と健康の関係については、過去にもいろいろと書いてまして、
- 豆類に入ってる抗栄養素については、「豆にふくまれる毒素「レクチン」には、どこまで気をつけるべきか」にまとめていますんで、こちらを参考に。
- 豆の健康効果については、「豆は痩せるのか?問題に決着が着いたかもしんない件」で、そこそこ精度が高いデータを紹介してますんで、こちらをどうぞ。
などが参考になるんじゃないでしょうか。というわけで、長々と書いてきましたが、「黒豆茶や小豆茶などのお茶はどうですか?」というご質問に就いては、気にせず飲んでください!ってお答えになります。どうぞよしなに−。